『 じぶんの学びの見つけ方』刊行記念、高山宏×石岡良治トークショーまとめ
2016/05/23
(高山宏)「ところで君もう少し身だしなみに気をつけなよ」
(石岡良治)「すいませんw」
(高山宏)「宮沢章夫のテレビもそうだけど、サブカルを語る人がその格好かとなる」
鈴木その子と会ったとき、あの人はスタイルのある人しか喋らなかった。僕以外はほとんど見ずに無視しててそれ以降僕はスーツを着なくなった。日本では学者とappearanceは一種のタブーとなっている。僕は都立大学にいた頃最初の半年は女装で授業していた(笑)(それで、また教授会の議題に上がるよねえ)
本も最初の三ページ(注:三行だったかも曖昧です)でどんなスタイルかわかる。
高山宏「あ、今から3分だけ今日唯一有意義な話。洋書の読み方に関して」
由良君美流書籍の読みかた
- まずは本のフラップで最低限の情報を見る(ここには内容と著者が書かれていて嘘がない)
- それを見て気になったら序文を読む。
- 両方とも気に入ったらあたりをつけて本を読む
・これは正しい。全人生かかっても一万冊はちゃんと読めないということ。由良が分厚い本を読んでいるのを見たことがない。不思議だよねえ、あれだけ読書家と言われた人が佐藤優という人も同じなんだろうね、つまり読むことを全力投球でやってたら死ぬ。
ある時、僕の話を真に受けて真似した学生がいた。結果5日目でふらふらになった。全力投球して真似したら死んじゃうよ。
・最近僕は15年周期というのを信じる。
1~15、16~30で将来の彼や彼女出会える人に出会う。知識の貯めを作る。
30~45で仕事を形にして
46~60はクズ。60以降も書いてると言われるが、あれらは全部編集者のコンピレーションと翻訳。
(石岡良治)「僕42なんで焦ってるんですけどw、さっきの本の読み方に関して僕のやり方を紹介します」
石岡良治流書籍の読みかた
- 文献表を読む
- そのなかで三回から四回出てきた書籍をチェックする
- 頻度が高いということは重要な書籍だとわかる、重要なのはこれをきっちりデータに起こすとかではなく、なんとなくやる重要性
(高山宏)
・ 2000年~に出版された本は使わず買わない。実体のある議論をしていたのが1975年までなんじゃないかなという実感、それまでは書き手もドイツ語の文献を使っていたから。1975年以降は内容ではなく形式を重用するようになった。
つまりいかにゲームを要領よくやるかという方向になってくる。
君(石岡良治)の本をとりあげたのは画期的だから。ということはこれ以降確実に量産される。昔は量産のきかない仕事が多かった。そういうものが翻訳されてない。原本を知らずに論じていることの憤り。
(石岡良治)「例えば『パラドクシア・エピデミカ』なんかもそうだったわけですが来月出版されるシューエルの『オルフェウスの声』もいまの問題として重要な本が出ますよね」
白水社
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(高山宏)「来月じゃない、今月だよ」(注:10月22日)
・科学者が昔は詩で論文を書いていたというのがどういうことか。
ダーウィンの叔父さんも詩を科学で述べ、ロマン派の詩人例えばワーズワースは詩で哲学をやっている。これはどういうことなのか?英文学130年というものをみていて、まだ「詩学」は届いてない。西脇順三郎などがいるじゃないかと言うが、どうもヨーロッパの詩学が日本に届いてない。
・たとえば英語にするとpoetryだがドイツ語では「Dichtung」(ディヒトゥン)とも言う。これは哲学を詩で出来る人、ゲーテやリルケに称される。
・詩法をもとに韻文を分析して英語で音読できる人がいないという事実。
だから今回のオルフェウスの声に関して日本で詩をやっている人が何と言うか楽しみである。震災以降は福島の詩ばっかり、人と人のシンパシーとかそういうことばっかであり韻律とはなんだとか考える本。
・たとえば現代詩をやっている人で「記憶術」を知っている人が皆無であることの問題。
・本がない時代の論争、学者と渡りあうということは暗記だった『二コマコス倫理学』の全巻暗記とか。chapterという単語は面白い、本自体が空間でありそこに目印をつけること。現代では記憶する必要はない、しかし無駄でも記憶しなくちゃならない。
・街とか道とかも記録である。自分が本当にダメだと思うクラスでは。ワンコインで知らない駅で降りて地図を書いてきてという授業をする。
・そういう知識の重要性、そういえば丸善の由来って感動的で創設者の名前という説と 地球が丸いことを知るのが教養だという意味もある。そういえばイギリスには「flat earth society」という地球は平面だと主張する組織があり、ホームズの『緋色の研究』でもホームズに関して十九世紀の人物なのに地球が太陽の周りをまわっているのを知らないという逸話が出てくる。
・そういうのがあってのマクルーハン「メディア論」、以前理系の人たちにmedeiumということは出雲の阿国もメディアなんですね?と聞いたことがある、その時「バカじゃないのコイツ・・・」という顔をされた自分の顔は「人を10人殺しそうな眼をしてたよ(笑)」
mediumが媒介である以上、巫女とかそういうことも射程に入ってくる。こういう話は30年ぐらい前だったら理系の人は聞いてくれた。しかし今は理よりも工が優勢。話を聞いてくれないのは仕方ない。
(石岡良治)「つまり『オルフェウスの声』はそういう話につながるわけですね
(高山宏)「君まとめるのうまいねえ(笑)」
・『ピープスの日記と新科学』を書いたジャーナリスト・マージョリー・ニコルソンにしても(アメリカで一番最初に博士号を貰った女性)教え子が全員戦死したという事実によってサイエンスとテクノロジーを分けた。そういう明確な情念があった。シューエルも同時代の人なのでそういう情動はあると思う。
・今回の震災に関しても詩人の世界からそういう議論が出てくると思ったが出てこなかった。
・しかし、この夏は全然外に出てなかったからやっと調子が出てきた。今日は3コマ授業の後にここに来てて朝と昼をまったく食べてない。コーラしか飲んでない。コーラは素晴らしい、荒俣宏ととコーラを礼賛する話をしたい。以前、お米にコーラを混ぜる料理法を彼から教えてもらった。
愛した人、尊敬した人、愛しもしないし尊敬もしない人がいた中で愛して尊敬したのは本当に荒俣宏だけだな。初めて対談した時に「悪魔はゴリラに近い」とか言ったら、急にゴリラパフォーマンスをしだしたときに「こいつにはかなわない!」と思ったね。「君、今度是非彼と対談しなよ」
(石岡良治)「自分も博物学の世紀などで影響を受けているので是非とも。『帝都物語』も読んでましたし」
(終)
(注:講義の中で出た原田信一と神尾昭雄を間違えてた可能性があるため掲載しませんでした。)
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