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新文芸坐・春日太一の時代劇講座(10月20日ver)

      2015/11/26

春日太一と新文芸坐のオススメ時代劇講座」と称し10月18日(土)から貴重な時代劇の上映と春日太一による全6回のトークショーを開催している新文芸坐

早速、20日の月曜日に「関の彌太っぺ」「沓掛時次郎 遊侠一匹」の上映と時代劇講座を聞きに雨の中、池袋へ。

トークショーのなかでも言っていましたがサラリーマンや学生も来れる時間帯です。話を聞いてから映画を二本見れるお得さと、なおかつ「ビギナーのための時代劇講座」というタイトル通り、一から積み重ねて時代劇の面白さと作品の背景などを解説してくれるのでとても面白いです。そして・・・熱いです(笑)、春日太一の時代劇への情熱が伝わってきて凄いことになってます。

今月は予定が立て込んでおり、トークショー自体は第二回しか行けそうにありませんが、内容が面白かったので月曜日のトークショーを箇条書きでまとめておきます。興味を持ったら是非とも行ってみてください。年配の強面の方が涙でむせび泣いている空間が凄いエモーショナルな気分にさせてくれます!(あ、会場内にビデオカメラがありましたのでたぶん書籍化するか何らかの記録にいずれなる気が)→(2015年追記:なりましたWOWOW動画で「春日太一」と検索すると出てきます)

*例によって文脈が途切れているところは少し補っています、ご了承ください。

あ、それと劇場内には春日太一の書いた「温故知新」のサイン色紙が置いてありました。良い言葉


・時代劇に新しく入ってくる人・新しいファンのための初歩からの積み重ねなので「お前みたいな若いやつ」「わかってねえな」「違うだろ」という上級者のかたはごめんなさい(笑)

・今回のこの一連の時代劇講座は18日の土曜日第一回こそ休日の昼にやったが、今日含めた残りの五回はすべて平日の夜。新文芸坐との打ち合わせでは「平日の午前からお昼が一番人が来ている」とのことで、その時間にトークイベントをやってみてはどうかという提案だった。

・新文芸坐の年齢層が高めなのでその時間帯に人が来るのはわかっていたが一人でも多く時代劇や名画座に馴染みのない人に来てもらうためサラリーマンや学生が来れるこの時間にした。こういう見方をすればより面白く作品が見れるということを喋っていきたい。

今回上映するのは二本「関の弥太っぺ」「沓掛時次郎 遊侠一匹

関の弥太っぺ」「沓掛時次郎 遊侠一匹」の共通点

どちらも

・1960年中旬の作品
・中村金之助主演
・長谷川伸の原作
・マタタビもの

春日太一「ここまでの情報ですでに難しいと感じている人もいるかもしれません(笑)

・「なぜ時代劇は滅びるのか」という本にもページを多く割いて書いたが、時代劇の魅力は枷が作りやすいことにある。昔は人間関係や身分がガッチリしていたから、いったん主従や身分から外れるといきなり日常生活から弾き出されてしまう。つまり葛藤を作りやすい

・移動が困難なこと、道が整備されてないことから「助けに行こう」「会いに行こう」と思っても難しく、必然問題は今いるこの場所で解決するしかない。もしくは助けに間に合わないというサスペンスが生まれる。自然環境の厳しさや雨風をしのぐのにも大変であるためしづらく、日常が不穏であり、耐えずそうした危機にさらされる。

「股旅物」というジャンルについて

・そうした枷のなかで「股旅物」というのは渡世人(ヤクザ)が旅をして回るというジャンル。「人別帳」から外れた人たちだからこそ普通の生活ができない。差別もきつく、カタギの人には迷惑をかけない等の負い目がある。だからこそどうカタギの人と付き合っていくかという葛藤が生まれ、特にカタギの女性との付き合いかたといったテーマが現れる。

・股旅のシステムは見ているうちにわかってくると思うが重要なのは一宿一飯の恩義、一度わらじを脱いで家に上がったら、もしその家で何らかの事態が起こった場合には命を張るということ。それゆえに切りたくない人を切ってしまったり、仲間を切ってしまうという事態が起こる。

・渡世人であるがゆえのルールは一般の人から見ると非常に厳しいが渡世人と言う存在だからこそ掟へのこだわりがある。今回の二本もそうした葛藤があるメロドラマの構造。現代劇でやっていることを時代劇でもやってるという認識で時代劇ビギナーの人は見るといい。

・特に『関の弥太っぺ』は、過去の因縁により自分の事を明かすことができない。わかってしまって幻滅されるから幸せに背を向けざるを得ない。そして死地に向かっていく孤独。

・「沓掛時次郎 遊侠一匹」にしても、一宿一飯の恩義のため何の因縁もないヤクザを切ってしまう。しかしそのヤクザには妻と子供がいて、彼らの面倒を時次郎は見ることになる。その過程で妻と時次郎はだんだんと仲良くなっていく。しかし切った人の奥さんという葛藤が成就されてはいけないという縛りになる。

・「二本ともそうしたメロドラマの構造なので、男女関係の機微やせつなさを見てほしい。そういう意味でこの二本をセレクトしました

時代劇は若い人たちが作ってきた!

・土曜日の映画(「無宿人御子神の丈吉 牙は引き裂いた」「座頭市千両首」)の時も喋ったが、その二本の監督・池広一夫は三十代の時に時代劇を撮っていて、昨日の二本(「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」「河内山宗俊」)の監督・山中貞雄も二十歳代で撮っている。

・池広一夫にインタビューしたとき
時代劇は若いうちに撮らなきゃだめだ」と言っていた→ある種のパワーがあるとき。
時代劇は年配の人が作ってきたイメージがあるが若い人たちが作ってきたジャンルでもある。

・『関の弥太っぺ』は1964年(1963?)の映画。東映は1950年代が時代劇の最盛期。そこから興業がどんどん落ちてきて1960年代という時代は助監督たちが現状に危機感をもっており、どうにかしなければという意識が強くあった。そうしたメンバーに次回新文芸座でやる中島貞夫もその一人だが、鈴木則文、牧口雄二などがいた。山下耕作はメンバーのリーダー格であり、彼は中村錦之介とも仲が良かった。なので彼を間に仲介してもらい中村錦之介とともに時代劇を作りたいという野心があった。(この辺ノートが曖昧です。申し訳ない

・『関の弥太っぺ』にしても脚本は最初とは全然別物になり映像のセンスも凄い。そして、今見ると時代劇の斜陽に向かう流れに抗っているような一種のレクイエムのよう。若いパワーと東映京都のスターである中村錦之介の仕事、彼は若手の野心を組み上げる力もあった。

・また『沓掛時次郎 遊侠一匹』にしても監督が加藤泰とベテランだが、1966年の映画。このころ既に東映京都は高倉健などの任侠物にシフトしており完全に状況が変わっていた。そうした流れにどうもしっくりこない中村錦之介が頑張っていた。

・どちらの二本も退潮に向かっていく時代に流れに抗う魂がある。
それがドラマの厚みと重なって画面から伝わってくるんじゃないでしょうか」、そういう時代劇の潮流の変わり目としても背後関係を込みで見ると楽しいと思う。

中村錦之介という役者

・それと中村錦之介、中村錦之介という若い人と年配の方で温度差が激しい名前。後に「萬屋」姓となって『柳生一族の陰謀』などで重厚な演技を見せるが、若手から大人のスターという厚みを獲得していくこの頃は中村錦之介時代の頂点。渡世人であるがゆえの寂しさを感じさせつつ、さわやかな優しさも向こう側に見える。「こういう芝居のうまさをいいなと思えてくると相当、時代劇が好きになってくると思います」今回の二本は楽しんでもらうというよりも味わってほしい。

・『関の弥太っぺ』に関しては随所に花がちりばめられているのも重要かと思います。それが時代劇、渡世人のはかなさを表しているようで胸が切なくなります。

・今、ふらふらなのは来月に河出書房新社から発売する『五社英雄』のムック本のインタビューのまとめに入っているから。脚本家から照明まで総勢40名にインタビューした本。それに合わせる形で新文芸坐で11月29日から12月8日まで「五社英雄」特集をすることに。23本中20本が上映される、今じゃ見られない作品もある貴重な機会。サブテキストとして読んで映画を見たり、映画を見て本を読んだりするといいと思う。

 

・今回の上映に関しては言うことはこれぐらいで、あとは泣いてくれたら言うことがない。

 

そしてこれを機会に時代劇って面白いなと思って、探していってくれたらそれ以上の嬉しいことはないです

 

春日太一・著『なぜ時代劇は滅びるのか』『時代劇ベスト100』刊行記念(at新文芸坐)上映スケジュール

春日太一と新文芸坐の オススメ時代劇映画祭


10/18(土)「無宿人御子神の丈吉 牙は引き裂いた」(1972/東宝)11:25/15:35/19:00

「座頭市千両首」(1964/KADOKAWA)9:50/14:00/17:25/20:50終映22:10

※13:10〜 春日太一さん(時代劇・映画史研究家)のトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


19(日)「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」(1935/日活)11:50/15:20/18:50

「河内山宗俊」(1936/日活)10:15/13:45/17:15/20:45終映22:05


20(月)「関の彌太ッペ」(1963/東映)11:45/15:10/19:20

「沓掛時次郎 遊侠一匹」(1966/東映)10:00/13:25/16:50/21:00 終映22:30

※18:30〜 春日太一さんのトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


21(火)「座頭市物語」(1962/KADOKAWA)11:30/15:10/18:50

「座頭市兇状旅」(1963/KADOKAWA)9:50/13:30/17:10/20:50終映22:15


22(水)「笛吹川」(1960/松竹)12:30/17:10

「宮本武蔵 一乗寺の決斗」(1964/東映)10:05/14:50/20:20終映22:30

※19:30〜 春日太一さんのトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


23(木)「子連れ狼 三途の川の乳母車」(1972/東宝)11:50/15:10/19:20

「祇園の暗殺者」(1962/東映)10:10/13:35/16:55/21:05終映22:30

※18:30〜 春日太一さんのトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


24(金)「十一人の侍」(1967/東映)9:45/14:05/18:25

「十三人の刺客」(1963/東映)11:45/16:05/20:25終映22:30


26(日)「山椒大夫」(1954/KADOKAWA)10:00/14:10/18:20

「人情紙風船」(1937/東宝)12:30/16:40/20:50終映22:15


27(月)「徳川いれずみ師 責め地獄(1969/東映/R18+)9:45/12:55/16:00/19:05

「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」(1977/東映/R18+)11:35/14:40/17:45/20:55終映22:05


28(火)「切腹」(1962/松竹)9:45/14:00/18:20

「幕末残酷物語」(1964/東映/R18+)12:10/16:30/20:50終映22:30


29(水)「柳生一族の陰謀」(1978/東映)12:10/17:05

「必殺4 恨みはらします」(1987/松竹)9:45/14:40/20:20終映22:30

※19:30〜 春日太一さんのトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


30(木)「里見八犬伝」(1983/KADOKAWA)12:55/17:50

「魔界転生」(1981/東映)10:40/15:35/20:30終映22:30


31(金)「忍者狩り」(1964/東映)12:00/15:20/19:25

「十兵衛暗殺剣」(1964/東映)10:20/13:40/17:00/21:05終映22:30

※18:35〜 春日太一さんのトークショー「春日太一のビギナーのための時代劇講座」


 

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