新春映画祭「未体験ゾーンの映画たち」より気になる作品を10本紹介
さて今年もこの季節がやってきました。
さまざまな理由によって映画館で上映することができない作品をまとめて一挙に公開しちゃう映画祭
「未体験ゾーンの映画たち」(atヒューマントラストシネマ渋谷)
5回目となる2016年は1月2日からスタートし、世界各国から集結したジャンル混ぜこぜの掘り出し映画が「50本」、約二ヶ月にわたって凄まじい高密度のスケジュールで上映されます。
毎年映画祭をウォッチしている身として思うのは「闇鍋」感を楽しむつもりが2014年の『MUD』、2015年の『ブルーリベンジ』『ハン・ゴンジュ17歳の涙』など思わぬ宝物に巡り合える割合がだんだんと増えてきたことです。
それでもミスター未公開シャークトパスシリーズ最新作『シャークトパス VS 狼鯨』などハッタリを楽しむ余地もまだまだ残されており、「面白さ」「新しさ」「飲み込みづらさ」を兼ね備えた傑作がそれらハッタリ作品とともにズラーッと並べられている様はまさに壮観。
そんなどこまでもパワーに満ちあふれた「未体験ゾーンの映画たち」の上映作品の中から自分が行きそうな作品を10本選んでみました(*あらすじに関しては語れないので公式チラシより黒字で引用)
Contents
- 1 ①『コインロッカーの女』(原題:Coin Locker Girl)
- 2 ②『ディスクローザー』(原題:FELONY)
- 3 ③『グッドナイト・マミー』(原題:ICH SEH ICH SHE)
- 4 ④『グランド・ジョー』(原題:JOE)
- 5 ⑤『ロスト・パトロール』(原題:ROAD47)
- 6 ⑥『特捜部Q-キジ殺しー』(原題:THE ABSENT ONE)
- 7 ⑦『ザ・ラスト・ウォーリアー』(原題:The Dead Lands)
- 8 ⑧『パラドクス』(原題:THE INCIDENT)
- 9 ⑨『神なるオオカミ』(原題:Wolf Totem)
- 10 ⑩『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』(原題:Wyrmwood)
- 11 終わりに
①『コインロッカーの女』(原題:Coin Locker Girl)
カンヌ国際映画祭国際批評家週間招待作品。青龍映画賞主演女優賞・新人監督賞ノミネート。
コインロッカーに捨てられた赤ん坊。闇金業を営む組織に拾われた彼女は、異常なまでの生存本能で過酷な運命を生き抜いていく。仁川の暗黒街を舞台にした衝撃のサスペンス!
捨て子を拾ってきて犯罪家族を形成、そして母親的存在が君臨するという物語はタランティーノが以前称賛した『アニマル・キングダム』に近いものを感じました。東京フィルメックスでの上映の際にまわりから聞こえてきた評判は非常に高く、ネット上にあったハン・ジュニ監督へのQ&Aも面白いです。毎年「未体験ゾーンの映画たち」で上映される韓国映画のレベルは抜きん出ていることが多い。
②『ディスクローザー』(原題:FELONY)
オーストラリア映画批評家協会賞助演男優賞ノミネート。オーストラリア映画批評家サークル賞主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞ノミネート。
子供に重傷を負わせた凄惨な事件。3人の男たちの葛藤、狂気、暴力が交錯し、予測不能な結末へと転がり落ちて行く。豪華キャストで放つ、衝撃のクライム・スリラー!
昨年惜しくも未公開となってしまったDVDスルー映画『ウォーリアー』において素晴らしい演技を見せてくれたジョエル・エドガートンが脚本と出演を兼ねるということで気になっている一本。アメリカでの評価も高い、原題のFelonyは「重罪」という意味らしい。
③『グッドナイト・マミー』(原題:ICH SEH ICH SHE)
アメイジングD.C. (2016-04-02)
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シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ。米国アカデミー賞2016外国語映画賞オーストリア代表。
美容整形の手術で別人のように冷たい人格になったママは、本当にママなのか?!目を背けたくなる展開の恐ろしさに、席を立つ観客が続出!
問答無用で記憶にこべりつく印象的(悪夢的)な構図の数々、背筋が芯から寒くなる予告編にハッタリだけではない「何か」を受け取りました。これは期待(予告編は一番下に引用、気になった方はご覧ください)
④『グランド・ジョー』(原題:JOE)
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ベネチア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞
過去を持つ男、ジョーは、父親の暴力に耐え家族の面倒をみる少年・ゲイリーと出会う。ジョーはゲイリーを救うため、ある行動にでるが…。ニコラス・ケイジの久しぶりの熱演が光る
崩壊している家庭の中で少年は家族から離れた陰のある人物を頼る、と聞くと2014年に本映画祭でも上映されたマシュー・マコノヒー主演の『MUD』を思い出しますが、なんと!この映画もそのときに子役を演じたタイ・シェリダンが出ています、しかもニコラス・ケイジが頼れる陰のある男を熱演するということで必見の一本。絶賛評多数。
⑤『ロスト・パトロール』(原題:ROAD47)
リオデジャネイロ国際映画祭最主演男優賞・編集賞受賞、グラマド映画祭作品賞・音楽賞受賞。
第二次世界大戦中、地雷除去のためにイタリアへ派遣されたブラジルの兵士たち。衝撃の実話を基に、生き残った5人の兵士たちの過酷な運命を描く、極限の戦争アクション!
ポルトガル・イタリア・ブラジルの合作でポルトガル語による原題は「A ESTRADA 47」 遠いブラジルからイタリアに派遣された兵士たちという表の歴史にはあまり出てこない物語の描き方にスパイク・リー監督の『セントアンナの奇跡』を思い出しました。
映画館でマイナーな国の映画が見られる機会はますます減少しているので映画館で見たい一本。
⑥『特捜部Q-キジ殺しー』(原題:THE ABSENT ONE)
2015年デンマーク・ロベルト賞最優秀助演男優賞受賞(ファレス・ファレス)
未解決事件を追う“Q”が、20年前の惨殺事件の真相に迫る!世界的大ヒットミステリーを『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』のスタッフがふたたび映画化。
前作『特捜部Q -檻の中の女-』は去年この映画祭でも上映され、その内容に非常にガッカリした記憶があるのですが今回の続編は予告編を見てなんか面白そうだと調べてみた結果、本国で絶賛の声が多数上がっていると聞き鑑賞候補リスト入り。
⑦『ザ・ラスト・ウォーリアー』(原題:The Dead Lands)
第87回アカデミー賞外国語映画賞 ニュージーランド代表作品
ニュージーランドの先住民族マオリの部族抗争を描く、ブルータル・バトルアクション!一族を殺害された青年は復讐のために最強かつ残忍な戦士と手を組もうとする
予告編を見ると『アポカリプト』のような疾走シーンもあるし、文脈のわからない戦闘儀式も実に闘争本能をくすぐる感じで「これはヤバい」と直感した一本。ニュージーランド制作&「The Dead Lands」という題名がもう普通の物語であるはずがない。
⑧『パラドクス』(原題:THE INCIDENT)
アメイジングD.C. (2016-02-03)
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シッチェス映画祭他40部門正式出品、15部門受賞
ある日突然、刑事と犯罪者の兄弟、家族4人が出口のない空間に閉じ込められた…。アメリカ映画評論サイトRotten Tomatoで、驚異の満足度91%をマーク!悪夢が繰り返すシチュエーション・ループ・スリラー!
Rotten tomatoで調べてみたら確かに高評価、特に海外版ポスターの上部にたかだかとそびえる「BEAUTIFUL MINDFUCK」という言葉に惹かれた。どんでん返し系の映画らしく心の底から騙されたい。
⑨『神なるオオカミ』(原題:Wolf Totem)
第30回中国金鶏奨 最優秀作品賞。
文化大革命の時代、内モンゴルの遊牧民の村にやってきたチェン。やがて、遊牧民の脅威であると同時に深く崇拝されている狼に魅了され、赤ん坊の狼を育てようとするが…。
『薔薇の名前』『愛人』の監督ジャン=ジャック・アノーの作品が「未体験ゾーン」入りと聞いて目を疑う。 原作は中国で爆発的なヒットを飛ばした作品みたい、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の監督が文化大革命をどう描いているのかが気になる。
⑩『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』(原題:Wyrmwood)
全人類待望!マッドでマックスなゾンビ映画の登場だ。ヒャッハー!謎の隕石のせいで突如人類がゾンビ化。滅びてたまるか!生き残った人間達はお手製の武器でゾンビに立ち向かう!
今回の「未体験ゾーンの映画たち」においてはドラッグの密輸を試んだ平凡な男が主人公の『ブレイキング・ゴッド(原題:THE MULE)』や『デス・ノート(原題:LET US PREY)』といった、どう見てもあの作品からイメージだけで邦題をつけた作品が横行する中で(おそろしいことに二本とも海外評価は非常に高い)なぜこれを選んだのかというと、間違いなくマッド・マックスの精神を受け継いでそうだから。
終わりに
今回選んだ作品以外にも平凡な親父が実は凄腕のスパイで、自身もその血に目覚めていてくスペイン映画『スパイ・タイム(spy time)』や、彼女がグルジアの地雷原で暴行を受けたために彼氏が復讐の鬼と化す『デッド・オア・リベンジ(原題:Landmine Goes Click)』など気になる作品ぞろいで、今年は10本選択するのが本当に難しかったです。
良作揃いの予感がプンプンするので適当に時間が空いたら「闇鍋」を味わいにヒューマントラストシネマ渋谷へ向かうのが良いと思います。
そして朗報!
今回から公開作品(一部)上映終了の翌日から二週間限定で動画配信サイト「青山シアター」にて1300円で配信されるとのこと。遠方の人には実にありがたい試みです(青山シアター公式サイト:http://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2016)
映画祭の会場は「ヒューマントラストシネマ渋谷」
料金:1,300円(※毎週水曜および毎月1日は1,100円、リピーター割引あり。今回から公式カタログも販売とのこと!)
去年の映画祭で気になった作品は以下に書きました。
・良作・奇作・怪作・傑作の映画祭「未体験ゾーンの映画たち 2015」がやっぱり凄い
2015年に開催された前回の予告編大会の様子(書き起こしですがYouTubeに動画がアップされてました)
・ネイキッドロフトで行われた「未体験ゾーンの映画たち2015予告編大会」まとめ
【50本の映画のなかで一番印象に残った『グッドナイト・マミー』の予告】
【関連記事】
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