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映画の本となると話はどこからでもはじまる講演会「映画批評をめぐる冒険」第三回まとめ(講師:佐野亨、モルモット吉田、岡田秀則)

      2015/11/26

病院の検査やら何やらで遅くなりましたが、5月30日に行われた第三回『映画批評をめぐる冒険』「クロストーク 映画の本となると話はどこからでもはじまる」のまとめを書きました。

・(第一回「映画批評はいまどうなっておるのか」はこちら
・(第二回「映画系女子の生活と意見」はこちら

講師はこちらのお三方。

  • 岡田秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
  • モルモット吉田(ライター)
  • 佐野亨((編集者・ライター)

<内容> (公式サイトより)
東京国立近代美術館フィルムセンターで映画関連資料の保存活動に携わる岡田秀則さん、「映画秘宝」その他で健筆をふるうライターのモルモット吉田さん、映画関連書籍の編集を手がける佐野亨の3人がつどい、映画の本の魅力を存分に語り合う。

会場は同じく石毛家二階ギャラリー(http://ishigeke2f.jimdo.com/event/film-criticism/

*意味が読み取れなかった文章は適宜削除したり文脈を補っています。映画本がたくさん出ているので署名など間違えていたらスイマセン。

(追記:7月22日に間違ってた岡田さんの発言を修正しました)


・映画とのかかわりについて

岡田秀則:
まだ子どもでしたし、いま思えば陰惨な映画も多かった時代ですから、どちらかといえば主にテレビで作品を見ていた。だから初めて劇場で見た映画は『死亡遊戯』(笑)

80年代前半、高校生の時にレンタルビデオ屋が出来て、東京に行ったら映画を見てやるぞという感じだった、なぜか最初に手に取った映画本は佐藤忠男『ヌーヴェルヴァーグ以後』(中公新書)、大島渚を見てないのに読んで、こういう世界もあるのだと理解した。

世代的には蓮實重彦直撃、もちろん読んでいたが、あるところでそれ以外のものもあると知り、四方田犬彦の本や、映画監督の本などを読んでいった。テレビの映画解説者として知っていたのはやはり水野さんと、荻昌弘さんと淀川長治さん。でも不思議と荻さんの本を読んだ印象がなく、淀川さんの本も読んだのはずいぶん後になってからで凄い人と再認識

佐野亨:
『映画千夜一夜』や『映画となると話はどこからでも始まる』で淀川さんの印象ががらりと変わって凄さを認識した人は多い。

モルモット吉田:
85年創刊の雑誌『リュミエール』の創刊号に「映画千夜一夜」の一部抜粋があって、大岡昇平の『成城だより』でもリアルタイムに言及されている。

淀川先生に話を引きつけると、小学6年生の時に初めて買った映画本が『My Best37 私をときめかせた女優たち』、中身に興味があるわけではなく巻末の日曜洋画劇場の放送リストが目当てだった。蓮實重彦はリアルタイム世代ではないけれど、それまでの映画批評に対してのカウンターとして出たので、それ以前の人たちが読まれなくなった雰囲気があった。

佐野亨:
自分は映画学校に通っていたから、伊丹は駄目、木村大作のカメラは駄目という蓮實重彦の影響力の強さは凄かった。ある層にはまだあるけれど(笑)80年代の、90年代とは違うディレッタントなミニシアターブームで本人が望む、望まざるに関係なく多大な影響を与えた。

 

・映画本について

岡田秀則:
もっと広く映画本を読みたいと思った理由として畑中佳樹という清涼感のある文章を書く批評家がいたので。次の世代はこっちかなと。四方田犬彦の本も蓮實重彦がやらない民族やそれぞれ固有のカルチャーから映画を書く面白さで読んだ。

 

佐野亨:
自分も畑中さんは凄い好きで80年代後半から90年代前半に「新しいものが現れた」っていう大きなインパクトがあった。青山真治・黒沢清・安井豊『ロスト・イン・アメリカ』もたしか最初の章で彼について述べられている。

彼はスピルバーグやゼメキスといったアメリカのB級映画を擁護していて「1970年代で映画史は終って、あとは過去の映画の再演」という認識だった。その言葉どおり映画批評から撤退してしまい今の若い人が知らないのは本当に残念。だからこそ、最近になって「キネマ旬報」で再び畑中佳樹の連載が始まったのは大きな事件。

モルモット吉田:
大学は大阪にあったから映画を見られる環境にあった。蓮實重彦『映画の神話学』とかも手に取ったけどは読むのをやめた。何故かというと、これはまずいなと、モロに影響受けちゃってピーターローレの球体が・・・とか言い出しそうでこのまま嫌な奴になりそうだから、ある程度本数見てから読もうと。

岡田秀則:
「すごい禁欲的ですね」

モルモット吉田:
ですね。たしか、そのとき東大の総長でたまたま映画の新刊本が出てない時期だったので可能だった。

佐野亨:
『映画狂人』シリーズとかが出版されたときに再び人気が出て読まれる感じでしたね。タイトルのセンスも素晴らしい。

 

・「ホイチョイプロダクション」、そして魅力ある映画本について

モルモット吉田:
第一回で雑誌「テレパル」について佐野さんが語っていたけど。自分にとってはそこでのホイチョイプロダクションズの連載「酒とビデオの日々」で「わが心のボルチモア」が素晴らしいと双葉十三郎が語っているということで彼の名前を知った。ホイチョイのおかげで双葉十三郎を知るみたいな出自だから映画『テラスハウス・クロージング』も見に行ける(笑)

岡田秀則:
ホイチョイと言えば『彼女が水着に着替えたら』『私をスキーに連れてって』『波の数だけ抱きしめて』の三部作、あれを本気で褒めるかどうかで当時物議をかもした。さすがにうーんというのはあって、でも、『メッセンジャー』は傑作。

モルモット吉田:
和田誠の『ブラウン管の映画館』とか山田宏一『今日のシネマは』もテレビと映画について語っていて、テレビを通して双葉十三郎を知り、その著作『ぼくの採点表』の解説が面白くて小林信彦へと入った。好みの作家として和田誠・田山力哉・小林信彦・森卓也がいて、同世代で同じように読んでいた人はほとんどいなかった(笑)

岡田秀則:
田山力哉の『日本映画男優全史』は中立かと思いきや、物凄い偏見もあって全然カタログじゃないですよね。

佐野亨:
チェックが出来ない時代は書き手の文章の魅力というのはパーソナルなところにあって、ビデオやDVDの到来がそれをそぎ落とした面もある。

 

・映画本における芸文の魅力

(注:この辺時間が経ってしまい、ノートが汚くちょいと判別不能で発言者が誰だったのか少し曖昧です。ご了承ください)

岡田秀則:
フィルム・スタディーズはビデオの普及で発達してきた点も大きく、精巧な論文も出てきた。ただそれによって文芸的な書き方が抑圧されて失われたものもある。

佐野亨:
武田泰淳・大岡昇平・花田清輝などは本当に芸文で、ある種そこでは間違っていることも許容されてた。

岡田秀則:
花田清輝の文章なんて凄い力技ですからね。間違いが許されなくなったので1コマずつ見ていくといったときに、それが豊かな見方なのかは考えるべきことだと思う。平倉さんの『ゴダール的方法』というめちゃくちゃ楽しい本があるんですけど、あれがメソッド化する怖さはある。ただ、ジャック・タチの『プレイタイム』なんかは、その方法でしか出来ないことがあると思います。(注:この辺、岡田さんの発言か佐野さんの発言かあやふやです)

佐野亨:
蓮實→双葉とはいきづらい流れがあるなかで、自分は淀川長治が原点で川本三郎も好きなんですね。『朝日のようにさわやかに』なんか、とても映画秘宝的。初期と最近では全然文体が違う。初期は写真の使いかたとか編集も自由で(笑)今では作れない。

たとえば現在では使える写真が少ないから『ゼロ年代アメリカ映画100』を作るときも元ネタである『70年代アメリカン・シネマ103』と被っちゃう辛さがあって、どこかで見た写真とか書かれてしまう(笑)

 

(ここで、『ワンダーランド 二号』に掲載されている小林信彦の文章「マルクス兄弟の方へ マンハッタンに赤潮がきた夜」の素晴らしさをモルモット吉田さんが紹介し。岡田秀則さんが田中小実昌の「コミマサ・シネノート」が面白いと言っている最中に地震発生)

 

↓(地震発生。第二部へ)

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