はじまりのパワーに圧倒!劇場版『クレヨンしんちゃんアクション仮面VSハイグレ魔王』
仕事終わりに劇場版クレヨンしんちゃんをアマゾンプライムで見る日々が続いている。
なかなか映画館に行く時間がなく、クレヨンしんちゃん映画25周年記念『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』もまだ見ていない。
ということで、過去作品を少しずつ鑑賞してサイトに感想を書こうと決意。
記念すべき第一回目は、1993年公開『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』
自分の人生で二番目に鑑賞回数の多い作品。
三桁は行かないけれど、50回以上は学校をサボって見ていたはず(ちなみに一番見ているのは、おそらく三回目に取り上げる『雲黒斎の野望』)
だから、そこまで語ることあるかしらと斜に構えた態度で見始め、見続け、そのまま終わりまで一気見。
面白かった。
「あれ、こんなに面白かったっけ……!?」とクレヨンしんちゃん好きな映画ランキングの上位に激震が走るほど。
で、その面白さを考えると、どうやらポイントは3つに分けられるのでは?と思った。
本作の魅力①不思議な雰囲気
アクション仮面が、もうひとつの世界から来た本物のヒーローであり、地球を侵略しにやってきたハイグレ魔王という宇宙人にパワーを奪われてしまう冒頭から目が釘付け。
そして、しんのすけだけは、その後に放送されたアクション仮面が代役だと気づき、画面には一瞬だけ不気味なハイグレ魔王の姿が映る。翌日、噂話が広がっていく夏休み前の幼稚園。
この雰囲気がたまらない。
しんちゃんが導かれるように路地裏を進む場面、突如現れた駄菓子屋、そこからひとつだけ探り当てたナンバー99のアクション仮面カード、仕事終わりに海のポスターを眺め続けるの野原ひろしの顔。
クレヨンしんちゃん最初の劇場版は、独特の不思議な雰囲気がとにかく素晴らしいのだ。
本作の魅力②一瞬の日常描写の上手さ
その不思議な雰囲気の合間合間に見られる、ちょっとした日常描写の巧みさも本作の魅力。
一瞬の何気ないシーンが、より前後の不思議な雰囲気を際立たせている。
たとえば、アクション仮面が放送されているテレビの砂嵐に一瞬映るハイグレ魔王を見た後、河原の土手で「本当に変なのを見たんだよ」としんちゃんがシロに話しかけるシーン。
ただ、それだけなのに何故か夕方のシーンも合間って胸を締め付けられる。
2002年にブレインナビから出版された『クレヨンしんちゃん映画大全』によると、どうやらこの場面、および本作の日常描写は原恵一が担当しているらしい。
ほかにも、桜ミミ子とアクション仮面役の郷剛太郎が、駄菓子屋でかき氷を食べるシーンも「夏」を感じさせてぐっと胸に来る。
本策の魅力③有無を言わさぬドタバタ描写
一瞬のきらめきを切り取った日常描写と、不思議で不気味な非日常の場面を繰り返して、野原一家がたどり着いたのは田舎道に突如現れたアクション仮面のアトラクション。この迷い込んでしまった感は何度見ても素晴らしい。
そして、こちらとよく似た本物のアクション仮面がヒーローとして存在している向こう側の世界へ。
ここから、びっくりするほど作品のトーンが変わり、最後のハイグレ魔王との戦いまで一気に突き進んでいくドタバタも有無を言わさぬ凄いパワーである。そもそも「ハイグレ魔王」の手下が「Tバック男爵」と「ハラマキレディ」というネーミングセンスが天才すぎるのだ。
そして、最後にハイグレ魔王とアクション仮面が行う頂上までの登りっこ対決は、前述の公式ガイドによると担当は、湯浅政明とのこと。
後の劇場版第四作目『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』、『マインドゲーム』や『夜は短し歩けよ乙女』で見られる、高いものに上っていくことへの彼のこだわりは、この段階で既にあったのだとわかる。
監督の本郷みつるは、本作のトーンが統一されていないのが色々と不満だったようだ。
しかし、彼自身の持つ不思議で怖い雰囲気の醸し方、原恵一の抜群の日常描写、湯浅政明のドタバタ感覚、それらが奇跡のように絡み合って凄いパワーを放っている。
スポンサー商品は、茶碗と箸と湯呑みだけ。劇場版最初の試写は偉い人がみんな「ポカーン状態」。そんなキャラクターが、テレビ朝日を代表する大ヒット作品となることを確かに予感させる、はじまりのパワーに満ちた一作目だと再確認した。
ああ、楽しかった。
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