子供だけに見せておくにはもったいない!傑作アニメ「ハルのふえ」
2015/11/26
アンパンマン映画を劇場で見る面白さは子供たちが
「アンパンマンだーーーーー」
「こいつバイキンマンだよ!」
「トイレーーーーー」と騒ぎを聞きながら楽しめる点にあると思います。
でも劇場で見た「やなせたかしシアター」はとても静かで、
途中から「アンパンマンまだー」と子供たちが騒ぎ始めてしまった(笑)
「アンパンマンが生まれた日」という短編はあるものの10分ぐらいでそれは終わって、「ハルのふえ」という50分の作品が始まるもんで、子供たち全員ポカーンでした。
で、子供たちに悪いけれど、このアニメは大人のほうが楽しめてしまうのです(笑)
・あらすじ
ある日、タヌキの「ハル」は森に捨てられた人間の赤ちゃんを見つけました。
ハルは森の動物たちとともに泣いてる赤ちゃんをあやそうとしますが、なかなか泣き止みません。そこでハルは人間のお母さんに変身し、ようやく赤ちゃんは笑顔になりました。赤ちゃんは「パル」と名付けられ、その日から1人と1匹のちょっとおかしな生活が始まったのです。
人間の姿のままでの慣れない子育てにハルは苦労しながらも、パルはすくすくと成長を続けました。森を駆け抜け、動物たちと遊び、なかでもハルから教わったパルの草笛は自然や動物を喜ばせる素晴らしい音色を奏でます。夢のような日々はあっという間に過ぎていきました。

ある日、偶然森を通りかかった音楽家のチョコパンは流れてきた草笛の音色に感動し、パルを町に連れて行って音楽の勉強をさせたいとハルにお願いをします。ハルは悩みますが、パルの将来のためを思い、森の動物たちも見送る中「いつも遠くからあなたを見守っている」と言ってパルに別れを告げます。
人に溢れた電車、高層ビルに渋滞する車、何もかも勝手が違う都会でパルはチョコパンのもとで一から音楽の勉強を頑張ります。日々は過ぎ、ついにパルは音楽コンクールへ出場することになりました。しかし・・・。
・原作との違い
森の動物たちと別れる場面に始まり、パルの声優が野沢雅子だからかその演技も相まって随所にうるうるくるシーンがあります。
この作品が子供たちぽかーんなのは、単純な田舎=善、都会=悪という二項対立のテーマではないからです。チョコパンの孫娘の「夢の数だけ明かりがともるのよ。私はこの町が大好き」という言葉からもわかるとおり、都会の風景描写も森の生活と同じくらい魅力的で優しい。
原作の絵本にはほとんど出てこないこのテーマが一番わかるのは、世界的な音楽コンクールでライバルのミロ・ザマーの奏でる洗練された都会の音を聞き、パルが逃げ出す場面です。
「あんな風には吹けない」とパルを取り囲む街は暗く、そして寒く描かれます。家に帰ろうとするパル、しかしどこかから聞こえてくる声がそれを引き留めます。「人々の雑踏や教会の鐘、大勢の人が一生懸命生きる音にこの町は溢れている」という声のアドバイスを聞いてパルは立ち上がり、コンクールにおいて見事優勝することが出来ました。「田舎」と「都会」の両方を抱えパルは勝ち抜いたのです。
パルにアドバイスした声の主は母であるハル。姿を現さなかった理由は直前にタヌキの姿を人前で晒してしまったためでした。そしてタヌキだとわかったらパルに迷惑をかけると思い、コンクールが終わるとパルに会わないまま姿を消してしまいます。
はたしてパルは姿を消したハルに会えるのか、それは観てのお楽しみ。感情豊かな声優の演技、風景の細かな描写や主人公の才能を表現した音楽が見事に調和し、物語のオチも含めて最高のアニメです。
・番外編「アンパンマンの生まれた日」
このDVDに収録されている10分ほどの「アンパンマンの生まれた日」もおススメ。
ストーリー仕立てというよりも、「アンパンマンマーチ」が流れる中、少しずつアンパンマンが成長していって、チーズとか仲間が増えていってという「アンパンマン」世界を凝縮したミュージックビデオのようでかなり好きです。
が、やはり個人的にはバイキンマンが素敵(笑)、アンパンマンがジャムおじさんたちとともに少しずつ成長していくのとは対照的に、同時期に殺伐とした場所で生まれたバイキンマンは何でも一人でやるDIY精神を発揮して生き抜く。
「時は早く過ぎる 光る星は消える だから君は行くんだ微笑んで」の歌詞にあわせてバイキンマンの軍団が出てくる場面は何度見ても一人でよくここまで頑張ったね!と謎の感動をしてしまいます。
*劇場でもう一本上映された、小杉十郎太のめちゃ良い声が聞ける「ロボくんとことりさん」は短編集OVA『やなせたかしメルヘン劇場 DVD-BOX 1』のほうに収録されているとのことです。
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