尊敬する映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」感想
2015/11/26
DOMMUNEでホドロフスキーの特集をやっていた。
そのなかでグレートサスケが最新映画「ホドロフスキーのDUNE」について「アンヴィル」と「シュガーマン奇跡に愛された男」の系譜として紹介されており、流れで久しぶりに「シュガーマン 奇跡に愛された男」を見てやっぱり号泣。
というわけで以前、別のブログで好評だった文章を。
映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」
何かになりたいと思い、何者かを目指して、結局どこにも到達できなかったとする。
映画だったら、そこで何かの逆転が起きてハッピーエンド。もしくは、そのままドロップアウト。
現実ではどうだろう、たいていの場合どちらでもない、何者かになれなかったとしてもそのまま人生は続く。わたしはそれを駄目だといかないまでも何か物足りないことだと考えていた。この映画を見るまでは。
このドキュメンタリー映画は1970年代初頭のアメリカのある一人のミュージシャンを主人公としている。様々な人に支援され彼は一枚のCDアルバムを発売した。だが、全く売れなかった・・・。しかし何の因果か、そのアルバムはアメリカから遠く離れた南アフリカで反アパルトヘイトのシンボルソングとして爆発的なヒットをすることになる。
そして年月は過ぎ、ある二人の男が自分たちの人生を左右したこの男シュガーマン「ロドリゲス」を探そう。と決意する
しかし、消息を尋ねて間もなく二人の耳に飛び込んできたのは奇妙な噂だった
彼は「コンサート中に銃で自殺した」という。はたして真相はどこに?まったく手掛かりが見つからないまま何年も経過したとき、ある一本の電話が二人のもとにかかってくる・・・。
物語の後半は静かに進むが、しかしその予想もつかない展開に上映が終わってもしばらく涙が止まらなかった。現実にこんな男がいたのかという、その凄さ、一人の人間に対する敬意から。
何かになりたいと思い、何者かを目指して、結局どこにも到達できなかったとする。しかし、それでも人生は続く。それはマイナスではない、大事なのはスタイルでありそのスタイルの維持なのだ。希望に満ちた物語として、壁にぶつかってる人がいたらこの映画を薦めたい。
そしてこう言いたい「俺が心から尊敬している人物の映画なんだ」と
【関連記事】
関連記事
-
-
賛否両論のリメイク作『ファンタスティック・フォー』(2015)試写感想
ジョシュ・トランク監督の手によってリメイクされたマーベル映画『ファンタスティック …
-
-
映画「クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル」 感想
明日から、いよいよ「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」が映画館 …
-
-
桐島の監督は今回もやってくれた、映画『紙の月』評(監督:吉田大八)
(後半にネタバレ) ・教会で讃美歌「荒野の果てに」が響く中一人の女の子が教室でお …
-
-
新宿で良作映画中毒「カリコレ2015」が今年も始まる
今年も新宿シネマカリテで「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2015 …
-
-
『007スカイフォール』における英雄の詩について
Thongh much is taken, much abides ; and …
-
-
【映画感想】すべての終わりの目撃者となれ!『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章』
(ネタバレしかない) GWはずっと白石晃士監督作の映画を連続鑑賞。そして最終日に …
-
-
映画『ローマの教室で~我らの佳き日々~』試写感想
教育を描いた外国映画が好きなのは「知性」をちゃんと描いているからだ …
-
-
感想『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』、ズバリ抜群の安定感でしょう!
アニメのほうをしばらく見てないので現在の「ちびまる子ちゃん」の雰囲気がわからなか …
-
-
マルコ・ベロッキオ『肉体の悪魔』映画評
「テーブルクロスはもとの所に戻しなさい 悲しげな死者たちが、やって来るから」 「 …
-
-
ひたすらしょーもない映画『シェアハウス・ウィズ・バンパイア』を見たボンクラの感想
*ネタバレはありますが、面白い部分は出来るだけ触れてないようにしてます。 &n …
- PREV
- 雑誌「映画酒場」には魂が込められている
- NEXT
- ハルキストたちの本気『さんぽで感じる村上春樹』書評