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黄金寺院24時間クッキング、映画『聖者たちの食卓』感想

      2015/11/30

【原題】Himself He Cooks、【監督】バレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチュス、【製作年】2011年【製作国】ベルギー、【配給】アップリンク、【上映時間】65分

【原題】Himself He Cooks、【監督】バレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチュス、【製作年】2011年【製作国】ベルギー、【配給】アップリンク、【上映時間】65分

 

世界の嫌な部分ばかり目についてしまって「あー、つらいなあ」と負のスパイラルにハマっている状態で『聖者たちの食卓』のような尊い作品に触れた時は何かよくわからぬものへありがとうと思う。この世界を肯定する感情を引っ張り上げてくれて。と

 

この作品はシク教徒の総本山ハリマンディル・サーヒブ(通称「黄金寺院」)が舞台のドキュメンタリー映画である。宗教も人種も階級も職業も関係なく、毎日10万食が全ての人に対して無料で提供されていること。この無償の奉仕に携わる人々の営みをカメラは淡々と映しだしていく。

 

そしてこれらの事実は予告編などでわかる情報で、映画が始まってすぐ気づくのはこのような説明は本編にはないということだ。

台詞もないまま少しの音楽と雑然とした生活音、カメラを見る人々のみでこのドキュメンタリーは成立している。カメラの前で淡々と凄いことが進行するからそれだけで十分なのだ

 

見る前に何となく思っていたのは自衛隊がカレーを作る動画のようにその豪快な調理過程を楽しむ映画なのかなということだったが、まさか皿洗いや掃除の場面に涙ぐむとは思わなかった。

 

聖者

次々と皿が投げ込まれるのを大皿でキャッチする人

 

ジャガイモが収穫される場面から始まるこの映画は、その細かな作業の積み重ねが「尊さ」に繋がっている。笑いながらにんにくを剥く人、いかめしい表情でチャパティを焼く人、玉ねぎを泣きながら切る人、だらけているように見えるが手はしっかりと作業を続けながらたまにカメラを見るおじさん、彼らの表情はすべてが光り輝いている。そして各担当の手によって調理された食材が大きな鍋に運び込まれ、出来上がった料理が一枚の皿に集まっていく。それを訪れたもの皆に食べさせて、膨大な後片付けを笑いながらこなしていく人々。

 

この一連の流れが厳かで、なおかつ軽やかなものとなっているのはこの映画に絶えず溢れる様々な生活音によるものだ。日々の営みが持つ豊穣さ、そして10万人の片付けが奏でる音の洪水に心地よくなったところでこの映画唯一の客観的情報である「500年続くこの黄金寺院の食堂は無償の奉仕で営まれている」という一文がフッと入って映画は終わる。

その時、ああ、この映画を通過した音はおそらくここでずっと昔から奏でられていたのだということに気づく。

 

呆けた顔で画面を追うのに精いっぱい、そんな旅の感覚を味わった。心が摩耗し日常につかれたとき間違いなく自分はこの作品を何度も見返すだろうなと確信した、そういうこの世界の豊饒さにただ見ているだけで幸せになれる良質のドキュメンタリー映画だ。

 


公式サイトより黄金寺院のルール紹介。

1、寺院に入る前は、手を洗い、靴を預け、足を清める
2、宗教、階級はもちろん、女性、男性、子どもがすべて一緒に座る
3、ターバンまたは、タオルを着用(レンタル有)
4、残さず全部食べること、お代わりは自由
5、使った食器は指定の場所へ戻す
6、酒、たばこ、革製品の持ち込みは禁止
7、一度の食事を5,000人でとるので、譲りあいを忘れない


 

 

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 - 映画評

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