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映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』評~才能をめぐるシニカルな笑い話~

      2015/11/26

*以前書いたものに大幅加筆。

イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ』をようやく見る。

TSUTAYAに対する批判は多くあれど、「発掘良品」という試みやこのような良質なドキュメンタリー作品が郊外でも見られる土壌を作ってくれているのは純粋に凄いことだと思う。映画館が次々と撤退し、町の本屋にはしょぼくれた書籍しか並んでいない状況でもしかしたら思考の「可能性」は郊外のTSUTAYAに眠っているのかもしれない。

映画館で何度も見せられた予告から、てっきりこの映画はバンクシーが現実社会を絵で告発する、グラフィティ・アートがもつ空間の侵犯を取り上げる事で現代の閉塞性について考察する・・・そういった類のものかと思っていた。

が、全然違った。

そもそもバンクシーって誰?

バンクシーとはいかなる人物か?

そのことに関しては生年月日も本名もわからぬ覆面アーティストであるゆえに、作品が経歴よりも雄弁に語っている。

images nofuture-www_banksy_co__uk_2 eikoku banksy-street-art-2大英博物館への無断陳列、動物園への侵入、場所のもつ磁場をアートによって転換させてしまう彼を反資本主義・反体制的と呼ぶ人もいる。それは事実なのだが、そこにあるシニカルな笑いや見た人を仰天させる手法は彼独自のスタイルでありそれだけに収まるものではない

告発しつつ軽みもある。危険をおかすパフォーマンスをしているがそれで名声を獲得しても自信の作品は決して企業とコラボレーションしないなど、そうした姿が信頼を得ている。

バンクシーが作った映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』

そのバンクシーが作った映画なのだ。一筋縄でいくはずがないということを忘れていた。
まず映画が始まって一番驚いたことはバンクシーが語り部でないということだ

語り部は一日中カメラを手放すことができない謎のオジサン。

初っ端から何処に着地するのかわからない始まりに面喰らい。「バンクシーが全然出てこない。見る映画を間違えたか」と本気で考えたところでようやくグラフィティ・アートの制作現場が取り上げられていく展開となる。

街中をカメラで撮っていくうち、オジサンはグラフィティアートを作る集団と仲良くなる。グラフィティの人たちもなんだこのオッサン?という感じで撮影を許可させる。オジサンはグラフィティの魅力にはまり、それゆえ彼のもとには膨大な映像が蓄えられていくこととなった。

そこに目を付けたのがバンクシーだ。

そもそもが空間を侵犯するグラフィティ・アートは一過性の性質のため、それを作品として保存することができなかった

だからこそ話題となった作品を記録しておきたいという欲望が作り手のなかに生まれ始めた。

バンクシーは今こそ君が貯めた記録を映画として世に出すべきだとオジサンに言う。

オジサンは凄くやる気になって練りに練った映像をバンクシーに提出。

それを見て

頭を抱えるバンクシー、そして観客も

それを見て

バンクシーは頭を抱える。(観客も)

まるで悪夢のようだ、と。(観客も)

恵まれた題材から、糞みたいな自意識にまみれたオジサンの編集した映像がひたすら流れる。見終わった後に口から漏れるのは
どうしてこうなった」という呻きである。

オジサンに感想を求められ、苦し紛れにバンクシーはグラフィティをやってみてはどうかと提案する。

オジサンは感激し自らをMBW(ミスターブレインウォッシュ)と命名、物語はここからありえない方向に舵を切っていく・・・。

「才能」とは

小説家・映画監督・詩人、なんでもいいが「作り手」は、自らの才能を疑いながら、もしくは信じつづけ独自のスタイルを作り上げて、それを磨き、世に提出し世界に自分の居場所を作る。

初めから舞台が用意されてるわけでも、椅子があるわけでもない。戦い方は人それぞれだが、その人なりのやりかたで「出口」を作り上げる。

だが、もしそのギフトが才能ではなく自意識過剰な狂気に彩られたもので、磨き上げるスタイルも何も存在せず、それを導く虚飾の道が運によって「出口」になってしまったらどうだろう。

この映画のテーマはそうした意味での価値をめぐる問いを「驚かせることによって」見る側に突きつけることでもある。無意味さから作り上げられていったものに「価値」が生じてしまうとしたら性質の悪いジョークだと思わずにはいられない。だが、もしかしたらそのジョークこそがある種のアートなのか。と

バンクシー自身は何も言わない、価値を提示しない。冒頭で「感動大作じゃないけど、ためになる映画だよ」と言うだけだ。おそらく否定的に見ているような気はするが、それもどこまで本気なのかがわからない。

そもそもこれはドキュメンタリーなのか、本当のことなのかと疑問が浮かんだところことで気づく。ああ、この感覚、まさしくこの映画もバンクシーの作品であるのだと。

 

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