淀川長治、荻昌弘、水野晴郎・・・テレビに映画解説者がいた時代、そのまとめ
2015/11/26
「映画批評をめぐる冒険」という講演会に行って、自分より少し年上の書き手が文化的なリソースの乏しい状況(映画館が潰れていったり、レンタルビデオがない等)において淀川長治や荻昌弘のテレビ映画解説から大きな影響を受けたということを知った。(「映画批評をめぐる冒険」の記事はこちらにあり)
自分たちの世代はその地上波テレビでの映画解説という側面には期待できず、映画館もシネコン。レンタルビデオやネットはあるが、その選ぶ作品や見方などはかなり意識的にならないと自らの興味を拡張しないまま、つまり家族や友人が映画を見ない状況だと下手すれば「重要」な作品をまったく見ることのないまま、成人を迎えることがあり得る。
自分がそうであったし、同じく講演を聞きに行った地方育ちの友人もそうであった。
中華料理屋で飯を喰らいながらの結論としては、遅くても知識が乏しいことを自覚しつつ少しずつ補完するしかないかということだった。相対性の視点は時に厄介だが、自分の視点次第で色々と面白いものが無造作に転がっている状況を喜ばしいものとして捉えようということで解散。
以来、少しずつ「テレビでの映画解説」について調べている。
まだ古雑誌などには手を出していないが、「日曜洋画劇場」の淀川さんについては大量に資料があるけれどそれ以外はとても少ないといったように、どういう文脈は補完出来て、どういうところで資料が不足しているのか、ここら辺は色々と面白そうなテーマだと思う。
とりあえず今回は代表的な番組や映画解説者についての紹介。
Contents
「日曜洋画劇場」
【映画解説者】:淀川長治
【著書】:『映画千夜一夜』『淀川長治のシネマトーク』『男と男のいる部屋』など多数。
【参考】:「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」という名台詞とその柔らかなキャラクター(本当は違うけど)でおそらく日本において一番有名な映画解説者。なのでYouTubeやDVDなどで多くの映像が残されている。IVCの公式サイトでも、「クラシック名画選集」の解説をテキストで読むことが出来る。(http://www.ivc-tokyo.co.jp/yodogawa/01.html)
放映作品は「日曜洋画劇場 40周年記念 淀川長治の名画解説」というDVD(下記の物ではなく)に放送リストが同梱されているほか、「日曜洋画劇場 放送リスト」で検索すると多数ヒット。
「月曜ロードショー」
【代表的な映画解説者】:荻昌弘
【著書】:『映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《作品鑑賞篇》』『荻昌弘のシネマ・レストラン』『荻昌弘のシネマ・ライブリー』など
【参考】:明晰で無駄のない知性を感じさせる解説者で『ロッキー』や『ポセイドン・アドベンチャー』の映画解説は伝説となっている。個人的には『幻魔大戦』の解説が好き。荻昌弘の解説動画はYouTubeなどでいくつか見ることが出来るけれど、その活動期間の長さに比べて数が少なく是非とも何らかの形で映像をまとめてほしいところ(映画の映像や番組内で本とかを紹介することもあったので権利関係が大変なのかもしれない)
ピンチヒッターとして小堺一機が映画解説を務めた時期もあり、彼が 「グーニーズ」 を紹介する動画のみYouTubeに存在する。
「アトリエうたまる」(http://fukikaemaniax.web.fc2.com/special/getsuyou-roadshow.html)というサイトが放映作品をデータベースに(感謝!)
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「水曜ロードショー」→「金曜ロードショー」
【代表的な映画解説者】:水野晴郎
【著書】:『水野晴郎と銀幕の花々』『水野晴郎の映画365』『映画がいっぱい』など
【参考】:「いやぁ、映画って本当に
「水曜ロードショー」時代、選挙のために堀貞一郎、愛川欣也がピンチヒッターを務めた。「ルパン三世 カリオストロの城」の解説でその姿を見ることが出来る。(そこには若き日の宮崎駿もいる)
「金曜ロードショー」の体調不良時は大木凡人や大谷育江がピンチヒッターを務めたとウィキペディアにあるものの、その映像は見当たらなかった。全体的に映画解説におけるピンチヒッターの映像はとても貴重である。
放映リストは現在も「金曜ロードshow!」として続いているため検索で多数発見。
「ゴールデン洋画劇場」
【代表的な解説者】:初代・前田武彦、二代目・高島忠夫
【著書】:言及しているかわからないが前田武彦『マエタケのテレビ半世紀』、高島忠夫『高島忠夫の洋食劇場』
【参考】:調べてもあまり情報が出ない映画番組。解説の方法としてはあらすじや監督紹介のみといったようにオーソドックスである。解説のテンションが高くて聞き取りやすい。放映作品の吹替をタレントが担当することもあり、「ゴールデン洋画劇場」としてはそのヒドさのほうが映画解説よりも有名という悲しい状況である(それゆえに今ではその吹替はめちゃくちゃ貴重と思われる)
放送リストは先ほども紹介した「アトリエうたまる」に全てあり、吹替の情報もほとんど網羅しているデータベースも作成しており、凄まじいサイトだ。
(http://fukikaemaniax.web.fc2.com/special/golden_youga.html)
「木曜洋画劇場」
【代表的な映画解説者】:木村奈保子
【著書】:『男を読む映画』『女を読む映画』『バナナをつけた女たち』
【参考】:みんな大好き木曜洋画劇場。一番見ていたので「あなたのハートには、何が残りましたか?」という名言で有名な木村奈保子さんの妖艶な解説は雰囲気たっぷりで期待を高めてくれたのを思い出す。調べていたら「スターチャンネル」で現在も解説をしていて変わらぬ美貌だった。
木村奈保子さんの前は河野基比古が映画解説を務めておりYouTubeで「アラビアのロレンス」の解説を観ることが出来る。そしてこれがめちゃくちゃ濃い内容で他のも見てみたいと思ったが見つからなかった。情報は少なく、まとまった書籍がないのも相まって現在とても気になっているところ。
それにしても木曜洋画劇場という項目のwikipediaの充実具合、愛されすぎ(笑)
番外編・毎日放送「映画へようこそ!」
【映画解説者】:浜村淳
【著書】:『淳ちゃんの名作映画をありがとう』『さてみなさん聞いてください』など。
【参考】:ローカル局の映画解説についてはキリがないので途中で調べることをやめたが、ニコニコ動画で「映画解説」と検索した時に「浜村淳」の『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の映画解説が出てきて語りの上手さに惚れ惚れ。東京モンなので『映画へようこそ!』という毎日放送で作られた番組の解説者だと恥ずかしながら初めて知った。
現在も続く、MBSラジオ『ありがとう浜村淳です』の映画コーナーは圧倒的な語りの巧みさで「50分」ずっと聞いていられる。(『ビリギャル!』の語りを聞いていたら、そのネタバレ込みで終わりまで全部言ってしまう作法に唖然とした(笑)でも、おもろいので問題なしという唯一無二の御仁)
『映画へようこそ!』は放送リストも映像も情報が少なめ。むう・・・
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終わりに
代表的なのはおそらくこんな感じ。
ローカルはキリがないとあきらめていたものの、サンテレビで放送していた山城新伍が担当していた「火曜洋画劇場」の解説がYouTubeにあり、それも出来るだけ見てみることにしつつ、洋泉社刊行の『吹替洋画劇場』『日常洋画劇場』といった本を読んだり、古雑誌を見ていくことで少しずつ間違いがあったら訂正し、面白い事実があったら付け加える「第二弾」をいずれ。
木曜洋画劇場も河野基比古以前に何人も映画解説者がいて、どういう解説をしたのかとても気になっているところ。その中の一人、深沢哲也氏(1979年4月5日 – 1981年3月26日)の「ドーン・オブ・ザ・デッド」解説は、YouTubeにある映画解説の中でトップクラスに貴重と思われる。
【関連記事】
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