岩井俊二のMOVIEラボ第二回「特撮編」まとめ
2015/12/02
2015年1月15日放送回まとめ。
一回だけまとめるつもりが、二回目のほうが面白かったのでふたたび適当にまとめました。
(♪ゴジラの音楽)~岩井俊二の特撮原体験~
岩井俊二
「小学校時代に怪獣映画は見てて、大人になってからそれ以前の円谷英二の映画とか見ると空間から違う。でかいものがそのままでかく、合成とか比較対象がなくてもでかく見える。そんな中で『サンダVSガイラ』が自分の中では好き。恐ろしくもあったし」
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「大きさが・・・ただそこにいるだけなんですけどね」
庵野秀明
「『サンダVSガイラ』で一番恐ろしいのは走るシーン。それまでの怪獣はゆっくりだった」
岩井俊二
「子どもの頃、何度も夢に見ましたよ。こいつが走ってくる、気持ち的にもう助からないっていう、あと漁師が下を覗き込んだら・・・っていうあそこも恐ろしかった」
樋口真嗣
「漁師のねw、そう考えると本筋じゃないところの枝葉が凄い良いんですよね」
~庵野秀明の特撮原体験~
庵野秀明
「僕はわかりやすく最初のウルトラマン。小学校一年の時にモノクロで見てて、雑誌で銀色に赤というのを知って頭の中でカラーの補完をしていた。第一話を見てしびれました。あんなの見たことなかった。怪獣というのを見てはいたんですが、怪獣と戦う怖い顔した宇宙人というのは凄いインパクト、素晴らしいイメージ。そのイメージにとりこまれて、五十年ずっとウルトラマンの呪縛です」
(ウルトラマンの造形デザインについてのナレーション解説)
成田亨が心がけた3つのイメージ
- 弥勒菩薩のアルカイックスマイル
- 宇宙ロケットの銀色ボディカラー
- 火星をイメージした赤いライン
岸野雄一
「エロティックですよね」
庵野秀明
「女性的でもありますし、性別を越えたイメージ。やられてるときとか興奮する友達いましたけどね。僕はあんまりしなかったけど(笑)」
ナレーション
(ロストワールドの映像、キングコングの映像)
アメリカではストップモーションアニメーション(コマ撮り)の手法。
それからだいたい二十年たち、日本では『ゴジラ』。人間が怪獣スーツを着てミニチュアで暴れるという手法へ。
岸野雄一
「アメリカのストップモーションアニメの最初期と傑作『キングコング』、どうでした見比べてみて?」
岩井俊二
「意外とキングコングのコマ撮りがよかった。力強さがちゃんと出てた」
樋口真嗣
「オブライエンですね。ハリーハウゼンのお師匠さんにあたる人。アニメーションって個人の才能が大きく占めて、その人がいたというのが大きいと思いますよ」
岸野雄一
「アメリカのほうがストップモーションアニメーションで日本は着ぐるみという文化の違いはどういうもんなんですかね」
庵野秀明
「経済的なもんじゃないですかね」(注:コマ撮りは着ぐるみ撮影と比べ、膨大な時間がかかる)
樋口真嗣
「同じ時期に作ってたもの、ベースとなるインフラが全然違ってて日本って戦争中に作られていたもの、戦争の戦禍を国民に伝えるような、でも本当にやってることは撮れないし、撮れていたとしても秘密ということでミニチュア。ある程度の大きさのそれを壊していった」
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樋口真嗣
「壊すというやり方から、それに絡ませる怪獣をどう撮れるのかなってなると結局人が入って動かすっていうのが一番早かった。壊すというのをスペクタクルのピークにしなかったらまた違ったと思う、『キングコング』はほとんど壊さない、ビルを上るだけ。『ゴジラ』は壊す。怪獣が何をするかで技法が決まっていった」
(日米の違い、コマ撮りの手法の洗練化、ハリーハウゼン『シンドバッド七回目の冒険』、一方日本ではミニチュア特撮『ラドン』、カラーフィルムにより粗が目立つため高い制度のミニチュア作りが要求された)
樋口真嗣
「だんだん作っていくと無駄なく作るようになっていく。けれどこの頃って方法論が確立してなくて無駄なことが多い。それが美しいですよね。看板一つ倒れるにも台本に書いてあるから全部やらなきゃという、管理されてない感じ。それを壊すってなったときにも翼竜だから風が強いってだけで、風だけで壊すのは凄い難しい(笑)その後風だけでってのはほとんどなくなって光線で壊すようになる。光線で壊すほうが現場の負担が楽だから。効率が良くなる、でもこの頃はそうじゃなかった」
樋口尚文
「愚直ですね」
(ラドンのラストシーン)
岩井俊二
「クライマックスの阿蘇山に噴火して落ちるところとか本当に美しいシーンで」
樋口真嗣
「下に流れてる溶岩は本物の鉄を溶かしたやつですからね(笑)」
岸野雄一
「コマ撮りがしにくいものとして、一定の形をとどめにくいので火とか水、風であるとかは実際にミニチュアを作ってやらせると言われてますね」
ナレーション
円谷の映画が海外へ『怪獣王ゴジラ』のリメイク。
『フランケンシュタインの怪獣サンダvsガイラは』ハリウッドの映画人にも影響を与えている。ブラピが始めて映画館で見た作品、タランティーノもファンの一人で、『キルビルvol2』のバトルシーンもここから演出した。
樋口真嗣
「腕ですよね。腕をどう構えるのかがその怪獣のアイデンティティ、人が入ってるから、腕の形でバレちゃう。背骨があるなとか、そこでどう腕をあそばせないするかっていう。遊んでいるとほんとうね休み時間に見えると仕事してない感じ」
岩井俊二
「みんな(腕)上がってますもんね」
樋口真嗣
「(着ている人が)自分の中でも違うように見せようとしているんだと思う」
岸野雄一
「人間の体型じゃないですからね」
ナレーション
『ジュラシックパーク』の映像。当時のCG技術と伝統的なコマ撮りという作業の流れ。コンピューターと連動し画像を動かす。少しずつ動かすという伝統的なコマ撮り。
樋口真嗣
「ジュラシック・パーク出てきたときにみんなCG凄いと言っていたんだけど、あれで一番凄いのって実物大のティラノザウルスなんですよ。ジェラシックパークのCGって多分ね全体の四分の一もないぐらい、全部足もとまで見えてるのはCGですけど、頭から胸まで写したバストショットは意外と作り物でやってるんですよ。それまでNASAとかでやっていた人たちを拾ってティラノザウルスとかのロボットを作った。それが凄い。けっこう現場で撮ってる。」
~2012年に開催された特撮博物館について~
(映像『巨神兵東京に現わる』)
・・・CGを一切活用しないという制約をもとに伝統的な特撮技術を使用した映像作品。
岩井俊二
「発想はどの辺から?」
庵野秀明
「ミニチュアを前面に出している展覧会なので僕の方からCGはなしにしてほしいと、CG使うんだったらこっそりしてほしい。展示の方の状態だとほぼCGはない合成は使ってますけど」
岩井俊二
「とうとう着ぐるみの中の人を外出しちゃいましたよね。あれはなかなか画期的な・・・人間のシルエット以外のことが出来るっていう」
庵野秀明
「巨神兵も原作のあの細いシルエットのままのやつをどうしようって時に樋口が文楽みたいな形でやろうというアイデアの勝利」
樋口真嗣
「なんでトトロにしてくれなかったのかと思いましたね」
庵野秀明
「巨大トトロが・・・」
樋口真嗣
「トトロが街を壊すんなら人を入れて出来るんだけど、巨神兵かよぉと(笑)しょうがないなと」
岸野雄一
「CG使ってないんだってびっくりした。本当にすごかった」
樋口真嗣
「昔からの、火薬だったり建物を壊す人とか現役の技術者がまだやってる。そういう技術者がいるからやりましょう、と」
庵野秀明
「そういう技術者がいるならやるということ、それと樋口が引き受けなかったらなしという、ただの過去の再現になっちゃってた。彼が未来を紡いでくれた。ありがとう」
樋口真嗣
「あの、そういうの、あの二次会とかバーとか二人っきりの時に(笑)みんなのいる前でって・・・」
庵野秀明
「いや、テレビ的にはこういうかなって、色々考えてるんですよ、ちゃんと(笑)、はい、考えてます。」
一分スマホロードショー「特撮編」
映画「UMA」(監督:前畠慎梧)
モノクロの映像、逃げ惑う二人の人物、暴れているのは・・・「UMA」=馬だった!
岩井俊二「これは(笑)ダジャレだったという」
樋口尚文「迫力があって良かった」
岸野雄一「後ろに飛行物体が横切るだけで巨大感でるのがいいですね」
樋口真嗣
「俺はタイトル見たときに馬ってなあにってこの辺まで出かかってたんだけど言っちゃあいけないって気になって、本能的におもって黙ってたのが良かった」
映画「uPhone」(監督:池田大輝)
一人の人物がもう一人をスマホで撮る。指で人物や風景を動かすとカメラの中の人物が右往左往するという映像もの、最後にはカメラの中の人物がカメラを取り出し視点が逆になるという構成。
岩井俊二
「deviceもの」
樋口真嗣
「コマ撮り?静止画像(スチール)でやって後でパソコンでやるの?」
庵野秀明
「やられたらやり返すっていうのが流行ってるのかな?」
樋口真嗣
「落ち的に?」
庵野秀明
「被写体が二つしかない。撮っている撮られているというのが当たり前って時代なのかなあ」
岩井俊二
「我々の時代はカメラ持っているのはこの辺にしかいなかったですもんね」
岸野雄一
「音楽とかで立場を表現しているのが潔かった」
映画「HEROES」(監督:栗原麻純)
三人の怪人に襲われる一人の女性。そこに現れる赤青黄、三人のヒーロー。いざ勝負・・・と思ったその時に現れる二人のセーラーヒロイン。さらにあらわれる魔法少女、やくざの格好をした人情ヒーロー・・・次々にあらわれるヒーローに困惑する怪人。揉めるヒーローたち、最後に表れる仮面をかぶった真打ヒーロー。そして言う「誰が悪なんだ・・・?」
栗原麻純
「ヒーローが多すぎる。というのをコメディチックに作ってみた」
岩井俊二
「ヒーローが過剰供給というのはある。あのゆるキャラを途中で止めちゃうのがいいですね(笑)」
樋口真嗣
「露骨に笑いを撮ろうとしようとしている感じがいいですね。意外と男子は真面目にやっちゃう。」
樋口尚文
「8mmのほっこり感がある」
樋口真嗣
「こうでなきゃ!」
~庵野秀明特撮論~
「特撮って元々の頭の中のイメージが映像になった、それだけのもの。他のジャンルは頭で考えなくても撮れちゃったりする。でも、これだけはイメージありきなので、アニメもそれに近いですけど。特撮の良いところとはイメージと現実が地続き、アニメは一旦切れる。手で書いたりCGだったり特撮はそれが唯一可能。もっと活用できるんじゃないかと思います。映像が一番向いているものが特撮なんじゃないかな」
というわけで二回目でした。1分間スマホ映画の『HEROES』が何回も見るぐらいテンポ含めて好きだった。一回目より話の内容が具体的で良かったっす。
で、次回は・・・ん?この聞き覚えのある曲は
た「タイタニック」・・・!!!
ゲストは蒼井優、鈴木杏、監督:行定勲という豪華メンバーで1月22日(木)から!
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