人に映画を薦める作法を『ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!』ライムスター宇多丸ゲスト回から学ぶ
2015/11/27
2013年6月22日放送『ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!』のライムスター宇多丸出演回。
この番組は、一つのテーマについてゲストとブラマヨがトークをして最後にお客さんが「アツアツ」度=盛り上がった度を判定するというもの。つまりテーマ次第では話術ひとつで「文脈」を構築しなければならない難しさがあって、
しかも今回のトークテーマは「映画批評」
あまり面識のない人と文脈をどのように作っていくか。自分の好きなものをどのように伝えるかなんてことを考えたときに、ハードディスクから発掘されたちょっと古い書き起こしですが今見ても面白いので公開します。
(「桐島、部活やめるってよ」「ブルーバレンタイン」のネタバレ含み)
ブラマヨ「なぜ映画批評?」
宇多丸「自分のラジオでちょいちょい話してて、ひっこみがつかなくなりまして」
Contents
トークテーマ:ブラマヨからの質問「オススメを教えてください」
宇多丸「これがねえ良く聞かれる、一番困るんですよ、漠然と聞かれて困る、たとえば「怖い映画でオススメしてください!」とかって条件があっても、よくよく聞いてみれば「ゾンビは苦手!」とか「あたしJホラー苦手とか」とかあげく「グロイの駄目」とか・・「何勧めりゃいいんだこのやろう!」と「でも、よくよく聞いてみればその人なりの、実は色んな求めている物がある。漠然と聞かれるより、こうこう、こういう気分だからそれにある映画はないですか?とかならオススメできますね」
ブラマヨ・吉田「いまどんな状態ですか?とかカウンセリングみたいな。」
宇多丸「そうそう、カウンセリング」
浮気がしたくてムシャクシャしてる時に見る映画
ブラマヨ・小杉「あの、僕は結婚してますので浮気なんて絶対ダメ。ただ仮にですよ、俺が浮気ができなくてムシャクシャしてるとします」
宇多丸「なんでですか(フフフ)」
小杉「仮にです!そういう男が見る映画!」
吉田「ないやろ、そんなの!あります!?」
宇多丸「ムシャクシャを解消するには浮気しかないと思うけれど、あの「浮気は良くない」と思い直すような映画ならね」
小杉&吉田「いいですねえ。」
宇多丸「クリント・イーストウッド、『ダーティハリー』とかですね、彼が初めて監督した『恐怖のメロディ』」
小杉「まったく知らんわー」
宇多丸「これはいいですよ。主人公は田舎町でラジオで人気のディスクジョッキーなんですね。恋人はいるんだけど、恋人はちょっと遠距離、で、ある一夜バーでちょっと謎めいた美女と知り合ってですね、ワンナイトアワーなんかしちゃう訳ですね。そん時は女の人も大人同士だから割り切った関係の恋で一夜だけ楽しみましょ、なんて言ってるわけですよ」
小杉「フォーーー」
宇多丸「ところが!翌日からそいつが付きまといだす。あらゆるところに、たとえば彼が仕事相手のちょっと年配の女性とビジネスの話をしてるときに、そこに「こんなババアがいいの!!?」とか言って殴りこんできたりですね、で!そうこうするうちに恋人が街に帰ってきちゃう」
小杉「やばい・・・やばい・・・やばい・・・」
宇多丸「で、そのおかしな女が、恋人が町に来てるのに家にやってきて、しかもその男は断りきれず、そいつが手首切ったりするもんで、また寝ちゃったり」
小杉「なにしてんねん・・・!」
宇多丸「そして!クライマックスで大変なことになっていくということでね!浮気は良くない!(ビシッ)」
小杉「すいませんでした!!!!」
吉田「フフフ」
小杉「・・・はい、じゃあ、そういう人に紹介しときますわ、そういう友達・・・たむらけんじさんとか・・・」
吉田「やめとけ、おまえ、かわいそなことすんな!」
自分にはもっと別の道があったのではないかと悩んだ時に見る映画
吉田「ぶつぶつに生まれ、人に気持ち悪いと言われ、それでもやってきました。忙しい、やめたい、しんどい時もあって。今この状態なんです」
宇多丸「ふむふむ」
吉田「でもね、おんなじぐらい有名なアーティストや俳優がごんごん豪邸を建ててたり
宇多丸「儲けてる」
吉田「そうそう、ひょっとして俺頑張る道間違えたんかなっていう悩みがあるんですよ。これだけ漫才にやってた熱を発明に向けてたら」
宇多丸「なんで!発明なの・・・フフフ」
吉田「この熱を発明に向けてたら俺つっぱり棒ぐらいは思いついてたんじゃないかなと、そうしたら大金持ちじゃないすか。自分の選んだ道が間違ってないよって思いたいんすよ」
宇多丸「難しいですね。んー・・・お笑いそのものとは離れますけど、日本アカデミー賞を取った「桐島、部活やめるってよ」っていう青春映画なんですけど」
小杉「聞いたことある。最近やってましたよね」
宇多丸「そう、これどういう映画かというとね、学校の中にイケてる奴、イケてない奴という序列があるじゃないですか。運動部のやつがイケてる奴、文化部がイケてない奴みたいなね。で、主人公の神木隆之介くんは映画好きなんですよ。学校の中では比較的馬鹿にされるっていう役でですね。で、凄くイケテル集団の話とイケてない集団の話が合って結局最後どういうことになるのかというと、イケてる・イケてないよりも何かが好きだ!って言える人の方が何かこの世界で生きるのは希望があるんじゃないかっていう着地になるんですね」
吉田「この世界というのは、われわれが生きてる世界?」
宇多丸「ようするにイケてる、イケてないなんてすごく虚しい話というか」
小杉「うん。」
宇多丸「そういうことに登場人物の超イケてる男の子が、なんかこうイケてるのに虚しそうにしてるんですよね。で、最後に、あ、俺何にもないんだ。対して目の前にいる映画好きのこいつはイケてないなんて言われるけど映画に対する情熱があるっていうことに気づいちゃう。で彼は最後に自分が魂を燃やせる何かに出会えるのかどうかというところで終わるんですね。」
小杉&吉田「んーーーなるほど!」
宇多丸「要するにイケてる、イケてないよりお笑いに対して打ち込んできたわけじゃないですか。そういう好きなものがあるってことの方が絶対良いっすよていう」
吉田「金だ、美女だとかよりも、自分の中で燃えるものがあることの方が大事なんじゃないかということを今の映画は、」
宇多丸「そう「桐島」。見終わると、それがなんかグッとね。くるんじゃないかと」
吉田「神木くん。神木隆之介くん、男前やから感情移入できない」
小杉「お前に似てるやつが出てくる映画なんか無いぞー!」
宇多丸「大丈夫です。神木くん、ちゃんとイケてない感じに見えますから」
吉田「ほんまですか!あれがネゴシックスが演じてるんやったら・・・」
小杉「映画化されるか!そんなもん!」
改めて相手を愛するために見る映画
吉田「いいですかね、さっき浮気は駄目みたいな感じやったじゃないですか。改めて「妻を愛そう」「彼女を愛そう」みたいな映画ありますか」
宇多丸「うーーーん、あれですね夫婦生活がいかにもろい物か、大事にしないと大変なものになってしまうかということを骨身にしみていただく方がいいんじゃないかと。えー「ブルーバレンタイン」っていう」
宇多丸「最初、ある男女が出会って付き合ってって、で要は結婚しようってところに行くまでと、彼らが結婚した後に子供を持って、最後の日に別れようってなるまでを同時進行で交互に見せてくんですね。つまり、恋愛の一番良いときと夫婦が駄目になった時を交互に見せていく」
小杉&吉田「くああああーーーー」
宇多丸「すごい、意地悪な構成になってる。で今を時めくライアンゴズリングが結婚したあとはハゲ散らかして腹も出て、ものすごいイケてない感じになってるんですよ」
小杉「それ俺やないかい!」
宇多丸「奥さんも気持ちが完全に離れてるから、旦那に触られるだけで「生理的に嫌」っていう段階にいっちゃって最後は別れましょうと。で、最後のエンドクレジットで二人がものすごく良かった時期が花火とセットで走馬灯のようにバーンバーンと映るんですよ。ものすごく美しい思い出と残酷な現実とが交錯して、もう見てると、なんかもうきついわあ・・・って人生キツイわあってなる、見終わった後小杉さん間違いなく今のうちに大事にしとこうと思うはずですよ。まだ間に合ううちは」
小杉「(硬直)」
小杉「すでに大事やなって思ってる」
吉田&宇多丸「あはははは」
【関連記事】
関連記事
-
岩井俊二のMOVIEラボ第三回「ラブストーリー」まとめ
岩井俊二のMOVIEラボ 第三回「ラブストーリー編」まとめ。ラブストーリーだから …
-
ぶりぶりざえもん復活ッ!再登場までの道筋を『ぶりぶりざえもん ほぼこんぷりーと』でチェック
「わたしは常に強いものの味方なのだ」 「お助け料、一億万円。ローンも可」 「救い …
-
岩井俊二のMOVIEラボ第四回「ホラー編」まとめ
岩井俊二のMOVIEラボ第四回「ホラー編」 【主宰】岩井俊二 【レギュラー講師 …
-
血とおっぱいに祝福を『トラウマ日曜洋画劇場』(皿井垂・彩図社)書評
かつてテレビで毎日のように映画を流していた時代があった。 ・・・と、ちょっと前に …
-
笑霊降臨!!『狩野英孝の行くと死ぬかもしれない肝試し』が面白すぎて
いやー、ようやくレンタルが開始されましたわ。 『狩野英孝の行くと死ぬかもしれない …
-
「世界ダンディ研究所THE MOVIE」&「バラいろTHE MOVIE」(全123回テーマまとめ)
映画について人に何かを勧めたり、系統だてて話すとき『ニッポンダンディ』&『バラい …
-
「美食+お洒落+物語!!」中国語版『孤独のグルメ』第一話感想
放送前から何かと話題だった、中国語版『孤独のグルメ 台湾篇』(原題:『孤独的美食 …
-
岩井俊二のMOVIEラボ第二回「特撮編」まとめ
2015年1月15日放送回まとめ。 一回だけまとめるつもりが、二回目のほうが面 …
-
「セガール劇場」番組欄に溢れるテレビ東京スタッフのセガール愛
以前に比べて外出の機会が少なくなった結果、体力が落ち近頃は風邪を引くことが多くな …
-
はに丸の鬼畜ジャーナリズム「はに丸ジャーナル」(NHK)が熱い
黄金週間なのに黄金がないので、ゴロゴロと居間で寝転んでいたら・・・ はに丸「討論 …