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豪華ゲスト出演のNHK番組「岩井俊二のMOVIEラボ」が映像豊富で面白かった。

      2015/12/02

2015年1月8日(木)からNHKで「岩井俊二のMOVIEラボ」という番組が始まった。

映画監督・岩井俊二を主催に迎え古今東西の映画の魅力を紐解く六回シリーズ、とのこと。

岩井俊二

 

初回のテーマは「SF」ということで、

【出演】

監督・岩井俊二

映画評論家・映画監督…樋口尚文

音楽評論家、作曲家…岸野雄一

監督・プロデューサー…庵野秀明

映画監督・特技監督…樋口真嗣

という豪華メンバー(笑)面白かったのでいくつか印象的な発言をまとめてみた。


「SF映画この一本」というテーマで

岩井俊二)「自分がパッと思い浮かぶのはエイリアンですかね。数多くのクリエーターが作ってるんですが、意外と全部好きで世の中的にはだんだんと悪くなってるといわれるんですが(笑)」

樋口真嗣)「昔はSFの研究会があって、これはSF、これはSFじゃないとか裁くんです。スターウォーズとかヤマトはSFじゃないと。だから、先輩SFって何でしょう?と聞いたら『2001年宇宙の旅』だと。大砲はついてないし撃ち合いもしない。『スターウォーズ』はスペースファンタジーであってサイエンスフィクションではないという当時の認識だった」

樋口真嗣)「話とかよりも画面の完成度がめちゃくちゃ凄かった。誰かが作ったと言うスキがない。キューブリックが死んだ最近になって資料が出てきて、セットの見きれとかに木があったり、カチンコがあっても嘘に見える」

庵野秀明)「カチンコが合成してるんじゃないかとかね」


 

岩井俊二)「当時はイギリスドラマに凄いチームがいて、『謎の円盤UFO』とか『サンダーバード』とか『キャプテンスカーレット』とか」

庵野秀明)「世界観がいいですよね。人形というキャラクターの世界のなかであんだけリアルな感じを出せる。戦闘機のウェザリング(汚し)とかここに何があるかとかのマーキングをしていた。まさか発進をするのが見せ場になると思わなかった。ただ描写だけですからね。『サンダーバード』とか『謎の円盤UFO』には影響を受けてエヴァにもその痕跡が」

樋口真嗣)「デレク・メディングスがメカデザインやってる。彼のスケッチとかみると、その当時のNASAによる開発機とかもろパクリ(笑)」

庵野秀明)「サンダーバード一号が現用機を未来的にデザインしていくというセンスが良かった。あとサンダーバード1号が格納されていく時に必ず「1号」って見えるんだけど、そうするとカメラの構図的にはおかしいんだよね(笑)あれだけ緻密にやっててそういう豪快さもあるのが粋。大人になると突っ込み所ありますが、勢いがあれば理屈は抜きでもいいんですよね」

 


 

岩井俊二)「そもそもSF映画というジャンル以前に小説があって、このあいだタイムマシンものを作ろうと思って『タイムマシン』を読み返したら、あまりにも全部やりつくされてると思って企画が頓挫した」

(ここでナレーションによるSF映画の簡単な年譜、1902「月世界旅行」、1927「メトロポリス」、第二次世界大戦後のSF、ベトナム戦争後の衰退、77年からの復活『未知との遭遇』『スターウォーズ』、82年『ブレードランナー』、85年『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)

庵野秀明)「僕はオタクだったんで。メジャー嫌いというのがあって、まわりがもりあがればあがるほど誰が『スターウォーズ』を見るものかっていうのがあった。高校生だったんで。そのあと東京に来て中野かどっかのリバイバルで傷だらけの奴を見て、ああこんなんだったんだ。という感じ。アニメの方が良かったんですよ。宇宙戦艦ヤマトのほうが面白いじゃんって、これみるんだったらヤマトもっかい見た方がいいじゃんと、ヤマトのほうがマニアック。結果的にアニメの方に入ったのもそういう感じで。 

(『王立宇宙軍オネアミスの翼』が流される)

(樋口真嗣)「若さゆえにっていうのがあって、漫画とテレビ見てると馬鹿になるぞと言われて育ったバカがそのまま現場へっていう感じだった」

庵野秀明)「そんな感じだったんじゃないですかね。僕らの場合は、心の広い大人がいて、やらせてくれた。
日本の場合はアニメだった。訓練も何もなく書けるんだったら書いてとそういう世界だった。人手不足もありますが、アメリカ映画もそうだったんじゃないかな。今の若い人にそういう場がないのは大変だとは思ってます」

 


ここから「1分スマホ映画ロードショー」という課題をもとにスマートフォンで撮った映像を論評しあうコーナー。

・提出された「ショートトリップ」という作品に関して
(樋口真嗣)「スマホで撮りあうという日常の自然な空気感がある。俺らがやろうとするとわざとらしくなる」 

 

・提出された「possessors.mov」という作品に関して
(あらすじ)アンドロイドもの、脳みそのデータがSDカードでそれが彼氏に全部捨てられちゃうという、でも彼女も彼氏のデータを持っていてという。

庵野秀明)「32でいいんだ。」

(樋口真嗣)「え?」

庵野秀明)「もうちょっと(SDの)ギガ数があった方がw」

(会場爆笑)

庵野秀明)「編集のテンポが一定だからもう少し緩急をつけた方が良いと思う。もうちょっと省略できる」

 

・提出された「空がこんなに青いとは」という作品に関して

(樋口真嗣)「こういう意味かなとか考えてジェラシー。こういうのってこういうときしか作れない」

庵野秀明)「年とってもいけるよ」

(樋口真嗣)「(笑)手練れちゃうじゃない。この若さが憎いw」


 

岩井俊二)「結局SFとは?」

樋口真嗣)「スマホそのものがSFのガジェット。昔のSFが予測できなかったものだったらしいですからね。それを使っての短編のSFをぬけぬけと撮ってしまう。SFですよね」

庵野秀明)「これだけの技術がお金の無い学生にもそろっている。そういう当たり前の技術となった時に何を作るのかってときに必要なのはイメージの力。そういう点で頭がやわらかい若い人のほうが面白いもの作れると思います。頑張ってください」

岩井俊二)「二人と話してて、SFという一番パーソナルなものから遠いと思われてたものが一番自分の近いものと親しいということに気づかされました」

 


(見終わっての感想)

「スコラ」「日本戦後サブカルチャー」と最近NHKの映像講義はなかなか凄いことになっている!と思っていたところでの、2015年一発目が「映画」。ただ紹介される映像が豊富でかなり面白かったからこそ、もう少し出演者の喋るシーンが欲しいとも思った。

庵野秀明の映像へのディテールのこだわりが見れて満足。

あんの

次回15日は「特撮編」!!

 

放送日:毎週木曜 午後11時~11時45分
再放送日:翌週木曜 午前0時~0時40分(水曜深夜)

岩井俊二のMOVIEラボ – NHK

 

 

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