トレーダー分岐点

新刊本や新作映画、アニメの感想などを書き続けるサイト|トレーダー分岐点

*

【書評】映画秘宝とオトナアニメの究極タッグがついに聞き出した!『アニメクリエイタ―の選んだ至高の映画』(洋泉社)

      2015/11/27

s_アニメクリエイターの選んだ至高

『アニメクリエイターの選んだ至高の映画』(洋泉社)、2015年5月刊行。1600円+税。表紙イラストは梅津泰臣。

アニメクリエイターが映画について語る語る

複数のアニメクリエイターが映画についてガッツリ語っている本は今まで数が少なかったから『アニメクリエイタ―の選んだ至高の映画』は自分が「そうそう、こういうの読みたかったんだよ!」と待ち望んでいた企画。

さらにこれは「映画ファンは映画しか観ないし、アニメファンはアニメしか観ない。その閉塞感をなんとか打破したい」という問題意識のもと、『オトナアニメ』と『映画秘宝』(両方とも洋泉社)が初めてタッグを組んた豪華なMOOK本でもある。

ここに出てくるクリエイターも何名か述べていたが、その映画とアニメが分かれてしまっている閉塞感は作り手の側にも進行中とのお言葉。(押井守も最近文庫が出た『監督稼業めった斬り』(旧タイトル『勝つために戦え<監督編>』)で似たようなことを言っていた。(たしか)ヒッチコックの全作品を何が何でも見ろと若い人に薦めてるとか

s_監督稼業めった斬り

最近徳間から出た文庫。押井守の言いたい放題節が魅力

創作の糧となる映画を原体験として語るか、批評的に語るか

このMOOK本は原恵一・今石洋之・倉田英之などアニメーションの作り手が映画のどこを見て自身の創作への糧としているか?の一端がわかってめちゃ面白いので、映画とアニメがググッと接近する作り。

一番興味深かったのは「人生において強烈な印象を受けた映画は何か?」を彼らがどのように語るかということだった。

つまり原体験としてある映画をずらーっと並べるのか、それとも批評的に配置するのか、さらに訳の分からない見方でまとめるのか、こうやって並べることで発揮された語り方の差異は非常に勉強となった。

例えば原体験としての語りでは『エイリアン』、『E.T』、『2001年宇宙の旅』、『ブレードランナー』などお馴染みの作品が列挙される中、少し意外だったのは西尾維新の「物語シリーズ」などを監督した新房昭之が「(ダリオ・アルジェント『サスペリア』を見た時に)僕のやりたいことは全部ここにあるとみたいな感じでしたね」と発言していること。そう言われてアニメの場面場面を思い出してみれば、確かにあの音や色使い…なるほど。

普段から言葉で話す機会が多いのか作品をより批評的に見ているクリエイターとして新作『この世界の片隅で』が控えている片渕須直や脚本家・會川昇などがいたが、中でも村井さだゆき「虚構と現実の狭間を見る5本+α」」と題してテリーギリアム『バロン』、ピーター・ウィアー『ピクニックatハンギングロック』、ジョージ・ロイ・ヒル『スローターハウス5』などの映画を挙げており自身が脚本を務めた今敏監督の『PERFECT BLUE』に繋がる意見として貴重な資料。

各インタビューの前には略歴を紹介したコンパクトな解説もあり、語られた映画が映画史的にどのような流れに位置するのかを補完するコラムもある。(例えば大地丙太郎のあとにさりげなく春日太一の時代劇論考が挟み込まれていたり)アニメクリエイターの名前をあまり知らない人や映画に詳しくない人にこそ読んでほしいという編集部の情熱が伝わってくる良質のMOOK本だった。

 

【本書に登場するアニメクリエイター20人】
新房昭之、原恵一、梅津泰臣、水島精二、湯浅政明、渡辺信一郎、今石洋之、大地丙太郎、岸誠二×上江洲誠、森田繁、中村健治、村井さだゆき、長濱博史、平尾隆之、倉田英之、吉松孝博、片渕須直、會川昇、大畑晃一。

↓もっとアニメイターの話を聞きたくなった人はこちらも是非、分厚いですが小黒祐一郎さんの豊富な知識による質問が的確なのでもりもり読めます。

 

【関連記事】

 - アニメ, 書評

スポンサーリンク
スポンサーリンク

  関連記事

「安全教育アニメ」という存在を知り、面白さとグーグル的価値観の対立について考える

少し前からwebの学校に通い始めました。 本を読んでいても独学だとキツいところが …

旅を本当に楽しむための本『旅を楽しむ!トリビア大百科』

一時期、「1秒間」に世界ではどんな出来事が起きているかという広告が電車内に掲載さ …

闇にさらなる闇を当て、高橋ヨシキ『悪魔が憐れむ歌』(洋泉社)書評

  字面から連想されるイメージとは異なり「悪魔主義者」とは絶対的権威を …

相変わらずいつのまにか販売している漫画「犬マユゲでいこう」新作『かんたんいぬまゆげ』

今回もいつの間にか発売していた。石塚2祐子『犬マユゲでいこう』最新作。 そういえ …

名言も豊富!大笑い読書漫画、『バーナード嬢曰く。』感想

本についての漫画や小説は面白い。物語形式でその本についての思い入れを語ってくれる …

アンパンマン映画の感想アイキャッチ
カレーパンマンのための映画「ブルブルの宝探し大冒険!」が激熱なのでブログ再開

みんなもアンパンマン世界に放り込まれたとき、誰のもとで生活をしたいか仕事中によく …

pha著『ニートの歩き方』(技術評論社)評~走らない生き方~

前回の記事『無業社会』の書評で働いてないことへの抑圧を軽減することも重要である。 …

【書評】キャロル×ヤンソン×ホムホムの『スナーク狩り』(集英社)はプレゼントに最高の一冊

「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロル原作! 「ムーミン」の作家トーベ・ヤ …

「映画の魔」とトラウマアニメ『花子さんがきた!!』

高橋洋の『映画の魔』を読んでいたら、こんな記述があった。 恐怖はショックを介して …

映画『リトルプリンス星の王子さまと私』を見る前に再読しませんか原作

2015年11月21日に公開される映画『リトルプリンス星の王子さまと私』は、とあ …