ヒーローたちの暗部が炸裂する『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』感想
2015/11/26
(中盤からネタバレ)
テーマが多方向に広がって、文脈も各マーベル映画にリンクしており、さらには次作への伏線も様々なところに張り巡らされているから、「えっどういうこと」と疑問が回収されないまま物語は進み、一回目見たときの置いてけぼり感覚は強い。
前作は一人一人戦ってる目的が合致しない「アベンジャーズ」のメンバーが、コールソンという人物の死で団結するという見事な脚本だったが、今作は『キャプテンアメリカ・ウインターソルジャー』で登場したヒドラの実験体・スカーレット・ウィッチによってヒーローの負の部分があぶり出され、外敵よりも内部での葛藤が描かれるのでカタルシスや笑いは少なめである。
それでもこの続編が凄いのは『アベンジャーズ』というシリーズ全体のために、ここで話を折り返しつつ、脚本の質量で破綻ギリギリの物語をアイアンマンというヒーローが持つ思想を軸に場面場面の格好良すぎる止め絵で強引にまとめあげた点にある。
観る前に少なくとも『キャプテンアメリカ・ウインターソルジャー』や『アイアンマン3』だけは観ておおいたほうが良いのは間違いない。
いくつも魅力的なシーンがあるなかで一番好きだったのは、みんながヒドラを壊滅させたあとにパーティーをするところ。ヒーローたちが酔っぱらってしまいソーのハンマー持ち上げ合戦をしたときに、キャプテン・アメリカが試すとちょっとだけ動いてしまって慌てるソーさんが可愛すぎた。
感想(ネタバレあり)
『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』を見ながら『アイアンマン1』のストーリーを思い出していた。
アイアンマンの成立過程は、武器商人として武器を売りまくっていたトニー・スタークが中東でその自身が売った武器で起こる悲劇を目のあたりにし、後悔から最後の武器を作り「アイアンマン」としてテロ撲滅に貢献するといったことにある。つまり、その思想はより強いものが出てきたら、より強いもので戦うというアメリカの思想に近い。
より強大な力が出てきたときにアイアンマンがどうなるか?まさにそれが『アイアンマン3』で描かれていた怯え疲弊するトニー・スタークの姿だ。その精神状態でスカーレット・ウィッチによって仲間たちが殺される幻覚(未来予知?)を見させられたとき、彼の胸に去来したものはまたまだ進歩できるのに力を尽くさなかったということへの後悔だった。
進化を目指し、より強い力を!といったトニー・スタークの思想がウルトロンの作成へとつながるわけだが、それによって生み出されたウルトロンが捉えた「進化」は、人類以上の存在となってサノスや宇宙の脅威に備えるため人類を切り捨てるといった思想だった。そしてウルトロンのこの考えは、アイアンマンに似ていると指摘されたら癇癪を起こすことからもわかる通りアイアンマンの歪な影でもある。
アベンジャーズがいるから世界は危険になる。だからその矛盾を解消しようとアベンジャーズを滅ぼし人類も滅ぼすことで種を進化させ、世界を守る。実に人間臭くて素敵なウルトロンに対して、ジャーヴィスのAIがもととなったビジョンは「混沌と秩序」は相反するものではないと人類を見届けるために最後のウルトロンを消滅させる。一つの種が滅んだとても悲しい場面だ。
「混沌と秩序」の同居、おそらくそれを体現したものこそ「アベンジャーズ」であり、それをまとめあげる力こそキャプテン・アメリカの団結の思想なのだ。力が弱くても、様々な思想によって相反しながらも人類を守ると決めたら戦う、今作においてはホークアイの姿がまさにそれを体現していた。
かつて万全の状態だったヒーローたちの消耗は激しく、去ってしまったメンバーもいる。最後にキャプテン・アメリカが見せるこれでやるのか、という表情はこの映画を見る自分たちの顔でもある。しかし、それでも彼らは戦い続けるだろう。戦いはより苛酷になり、メンバーが変わっても・・・「団結」の力を信じて。
それこそアベンジャーズの宿命なのだ。
劇中でも描かれていたアイアンマンとキャプテン・アメリカの思想の違いが今後『シビルウォー』に繋がっていくはずで、ソーの見た光景は『マイティ・ソー:ラグナロク』に関係してくるのだろう。そして、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に向けて物語の終わりは近づいている。
インフィニティ・ストーンの現在地
*サノスの持つグローブ「インフィニティ・ガントレット」の力を引き出すために必要なインフィニティ・ストーンは6つ。最後に『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』までに出てきた4つを整理しておく。
①エーテル・・・『マイティ・ソー:ダークワールド』に登場。事件が無事解決した後、コズミック・キューブと一緒にアズガルドに置いておくと危ないのでシフとヴォルスタッグが「絶対安全」なコレクターに預ける。しかし『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でこの空間、盛大にぶっ壊れるので現在行方不明と思われる。まずい
②テッセラクト(コズミックキューブ)・・・『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ:ザ・ファースト・アベンジャー』、『アベンジャーズ』に登場。『アベンジャーズ』の戦いの後、アズガルドに預けられたようだがご存知の通り『マイティ・ソー:ダークワールド』の最後で、ロキがオーディンに入れ替わっているので、非常にまずい。
③オーブ・・・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に登場、いろいろすったもんだのあと「ザンダー星」に保管、防備が弱そうなのでまずい。
④マインド・ストーン・・・今回の『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』でロキの杖の先端にある石がこのマインド・ストーンだと判明。アメコミの原作と違い、ビジョンの頭に埋め込まれてしまっているので、インフィニティ・ストーンを揃えるためには頭から取り出さなければいけないのでは?と嫌な予感しかしない、まずい。
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結論:とってもまずい。
各作品が繋がる「マーベル・シネマティック・ユニバース」として2015年8月現在予定されている作品は、
『アントマン』(日本公開日:2015年9月19日)
→『キャプテン・アメリカ : シビル・ウォー』(2016年5月6日 全米公開予定)
→『ドクター・ストレンジ』(2016年11月4日 全米公開予定)
→『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』(2017年5月5日 全米公開予定)
→『マイティ・ソー : ラグナロク』(2017年11月3日全米公開予定)
→『ブラック・パンサー』(2018年7月6日全米公開予定)
→『キャプテン・マーベル』(2018年11月2日全米公開予定)
→『インヒューマンズ』(2019年7月12日全米公開予定)
この上記のどこかの位置に新生スパイダーマンの映画が入り、『キャプテン・アメリカ : シビル・ウォー』でその姿がお目見えするのではないかという噂あり。
またそのために公開日がいろいろとずれていき「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー Part 1」(2018年5月4日)と「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー Part 2」(2019年5月3日)の二部作も公開日がずれるのではないかと予想されている。
ううむ、収拾がつくのかしら。と楽しみながらも不安になる作品数(笑)
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