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難病映画が嫌いな人へ薦める映画『わたしたちの宣戦布告』

      2016/05/27

 「難病」にかかった子供を持つ夫婦の闘病記という、言ってしまえば映画『わたしたちの宣戦布告』は「よくある」物語である。重要なのは「よくあることだ」という客観的態度は、我が身に降りかかれば吹き飛んでしまう脆い概念なのだ。 個人の大きな「物語」として「難病」はあり、だからこそその経験をした作り手は固有性と当事者性をそのまま剥き出しにして提出する。

見る者はそういう不条理と世界への嘆きがあると理解し、それに関して何もできない自分がいると思う。辛いだろうという共感が生まれ、悲しいことがあって可哀そうだと思う。  

この作品はそういう定型的な作品ではない 「病気になっても強く生きる」「命の大切さを教えてくれた」といった難病物に共通する固定概念はここでは存在せず、中心になっているのはタイトルにも表れている通り、そうした世界の不条理の中でどう戦っていくかという話なのである。

「~でなければならない」という役割を押し付けてくる世界に対し、男と女が感情を爆発させ街を疾走し、叫ぶ。それは観る側にとって心地よく痛快で、だからこそ逆説的に「難病」の辛さを切れ端ではあるが理解できる。そして考える、自分だったらどうする?と  

「わたしたちの宣戦布告」あらすじ

どこか地に足がついてない父であるロミオと母であるジュリエットの間にはアダムという子供がいる。

アダムは生まれたときから少し様子が変だ。何度母乳を飲ませても泣き止まないし、食べたものは吐きだしてしまう、いつまでたっても歩くことが出来ないその成長の遅さに両親はノイローゼ気味となる。

原因が分からずに疲労していく精神状態、しかし数か所目の病院でついに彼らは医者からアダムの精密検査の必要性を告げられる。その夜、ロミオとジュリエットが不安な気持ちを隠すようにソファでお互いに抱き合っていた。テレビからはイラク戦争が開始されたことが告げられる。 「ついに宣戦布告ね」とつぶやくジュリエット。

感想および戦うための作戦

紋切型を嫌うひねくれ者の夫妻が悲劇の紋切型である「難病」という構造にぶちあたったとき、どのように戦っていくか。それは刻々と変化する状況の中でどのように最善の策をとっていくかということでもある。登場人物の口から発せられる「宣戦布告」の言葉はイラク戦争の映像を見ている最中に発せられる。世界では大きな戦争が起き、個人にとっては小さな戦争が起きたのだ。

つまりこの映画は「難病物」であると同時に構造は「戦争映画」でもある。 生きることは選択肢の連続である。普段そんなことをあまり意識しないのは、今あるシステムが健常者によって作り上げたものであるからだ。道を逸れた時、そこには膨大な選択肢と壁が発生する。 脳腫瘍だと判明したアダム。まず夫婦二人はどこでアダムを手術するかという選択を迫られる、名医がいる遠くの病院か、家族の支援が得られる通える病院か。そしてお金の問題、仕事・・・。そうした自ら選択していく困難さに加え、この映画は自分ではどうしようもできないシステムの不条理も描かれている。

手術を執刀する医者が病院のどこにいるのか誰に聞いてもたらいまわしにされること、その人が本当に信用に足る人なのかわからないこと、部屋が空いていると言われたのに実際には空いてない等、本人たちにとって大切なことを誰も知らないという辛さだ。

しかし物語が進むにつれてそうしたシステムの不条理を二人は受け入れていく。自分たちを追い詰めないために次から次へと起こる出来事に対して脊髄反射的に反応するのではなく、文脈をとらえるため「観察」という「戦略」を覚えていくのだ。そして不安な気持ちを率直に語り合うことで、起きる出来事に対しての最善の策を徹底的に考えていく

だからこそ「体制を整えよう」と、二人は常に言う。 個人の身に起きた不条理をそのまま嘆くのではない主人公たちの行動は実際にそうした不条理に自分が襲われた際にかならず参考になる。映画『わたしたちの宣戦布告』はそういう力強い物語でもある。そういった意味で、この映画を見ている最中に絶えず大野更紗『困っている人』が頭に浮かんだ。物事を直接的に受け取れないひねくれた人にとってこの本も同じ戦うための勇気をくれる強いメッセージを放っている。負けるか!と

 

 

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 - 映画評

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