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『 じぶんの学びの見つけ方』刊行記念、高山宏×石岡良治トークショーまとめ

      2016/05/23

2014年10月3日(金)久しぶりに神保町。目的は東京堂書店で行われる高山宏と石岡良治のトークショー。この書店は魅力的なトークショーが毎月数多く開催されており。

興味はあるものの神保町が家から遠いためなかなか行く機会がなかった。

しかし、今回の対談は確実に「面白い」だろうと踏んで遠征。参加してみて思ったのはトークショーの値段が本当に安いこと。1ドリンクつきで800円なので実質ワンコインで講義を聞ける素晴らしさ。

ということで、ざっくりとした概要と少量のオフレコ部分は省いてイベントの内容をまとめてみることに。少しつながらない部分は勝手に補強しています。(ご了承ください)


最初の話し手は石岡良治氏

フィルムアート社から『 じぶんの学びの見つけ方』刊行記念ということで「学び」についてのお話をしつつ自分の本と高山宏先生と本について90分話すという概要説明。

トークショーの前に8月10日付日経新聞の書評欄で高山先生が自分の本に関して丁寧な書評をしてくれたこと。その紹介


サブカルチャー、俗に「サブカル」と呼ばれている領域の広さ、とめどなさは教育現場でその周辺を教えなくてはならない人間にとっては変わらぬ悩みの種である。
アニメを自分の好む範囲でやっていればそれですむのか。サブカルに少し先行した感じの一九六〇年代のカウンターカルチャーとはどういう関係にあるのか。
両者ともつきつめていくと「ヴィジュアル・カルチャー」という、ひょっとして新領域たりうる巨大分野の中の、新しい何かであるのか。
最近「文化史」「精神史」という名で知られ始めている新領域の中の何かであるのか。

(中略)
タイトルに「超」をうたっているが、何が「超」えられたのか、読者が立場と教養に応じて読後に考えてみるとよい。結構、いろいろなものが「超」えられているはずだ。

(中略)
この五年ほど、たとえば月刊誌「ユリイカ」のサブカル急傾斜は随分話題だったが、それぞれちがった小さなテーマにこだわりや、うんちくをぶっつけることのできる書き手は少なくない。
それが映画、ロック音楽からアニメ、ゲームまで全部総覧しながら、スペースインベーダー直後世代のゲーム少年だった自分の趣味も楽しそうに忍びこませるとなると、これは類書一杯ありそうで実は画期書。
というか、今までの動向のバランス良いまとめであり、さらにその先に開かれた突破書である。どうやらモデルは一九七〇年代初めに「視覚文化」論の啓蒙に糸口をつけたジョン・バージャーの『ものの見方』(邦題『イメージ』)らしいが、たしかにこのモデルさえ「超」えた出来ばえで感心した。
一番良いのは万事に賛否両方の論を用意して丁寧に論じていく、多分著者の身についたバランス感覚で、知らない人間を置き去りに自分の好みばかりに熱中して語る「サブカル」論者に通有の一人よがりとは無縁。さわやかだ。


 

・書評にも書かれているとおりこの本のタイトルについてある「超」に関しては当然高山宏の『近代文化史入門 超英文学講義』が念頭にあった。

・「万事に賛否両方の論を用意して丁寧に論じていく、多分著者の身についたバランス感覚」というキーワードについて

→お聞きの通りしゃべりがすでに脱線して気を抜くとオタク的な「キンキン高い声」になる。(「アベシンゾウだよと高山宏のツッコミ」)

そうやってバーッと話すことを気をつけること。ラビリンス(迷宮)に迷い込む経験は必要だが良い迷い方と悪い迷い方がある。自分は一定のインターバルで元に戻る(ハッと気づく)、その戻すことがコネクト、バーッと喋って繋げるコネクトもあるが、そうやって戻ること、トークをまわしてもどってくることを心がけている。

 

自身の経歴紹介

→ゲーム小僧であったこと、なのでゼビウスなどを論じた中沢新一の本はちょこちょこっと読んでいた。1990年代に東京都立大学にいたが、もともと早稲田の文学部にいた。神田・高円寺・早稲田の古本屋に入り浸っていた、楽しかったけどこのままでは古本マニアになってしまう。と思った(注:この辺ノートが曖昧です

山口昌男『本の神話学』とルネ・ホッケの『迷宮としての世界』に関して前提の知識があった上で学部ではミシェル・フーコー、院では東京大学で表象文化論を学んだ。

山口さんの本に関しては今解釈するならアフリカにフィールドワークに言った人が本の群れを見たときにどのように思うかという本。『迷宮としての世界』は千葉大学に友人がいて、当時そこで講義していた若桑みどり先生に雑談で勧められた。

そういう状況で都立大学にいたころ、『女がうつる―ヒステリー仕掛けの文学論』を書いた富島美子先生に「一回凄い人がいるから話を聞いてみ」ということで高山宏の研究室を尋ねた。(当時研究室にはアルチンボルドのポスターが貼ってあった。)

そこで「良いブックガイドありませんか?」というよくある謎の学生質問をしたが(笑)、高山宏に関しては英語の授業を途中で切った苦い思い出がある(笑)。

そのときの自分がすごい活用していたのが、1990年代に丸善から出ていた「EYES」というカタログ雑誌

アマゾンなどで洋書が買える現在と異なり、当時はここ東京堂書店の洋書棚が特別で、そこで買う際に「EYES」は有用だった。

~「じぶんの学び」に関してのまとめ~

自分は所属は仏文だったが学んでいたのはホッケ的なもの。表象に行ったのは視覚文化に興味があったから、美学的な方向にも興味があったが「繋ぐ」方向により興味があった

この本を書いている最中に『近代文化史入門』は読まないようにしていたが、書いた後に読むと僕の英文の文脈がいかに高山ワールドに規定されていたかビックリしている。

高山宏のお話

Q:「EYES」11冊持っている人いる?

A:会場0人

「だよねえ、俺も持ってないもんw」

このカタログ雑誌は洋書1000冊を毎回取り上げてたカタログ雑誌。12冊は出せず11冊。

当時丸善は洋書を発売したときにアナウンスメントをしていたけど、それが書名だけだった。だからどんな内容かわからなかったから、それに6~7行の概要をつけ絶対重要な本は「必読」とか「買わない奴はバカだ」とかつけてた(石岡「あ、買いましたw」)
本の中で今のようなポップとかそういう画期的なことをやっていた。

そこにあったのが「君らの知っている本はクズだ」という強い意志。たとえば「いったいものを美しく見るとは?ある人にとっては美であるものが、ある人にとって醜であるというときの美とは何か?」ということを通して「アートブックの概念を広げようとした

毎月3箱も4箱も丸善から送られる洋書のカタログから1000冊を選定する一種のメタカタログ本、凄いよねえ。一冊作るのに4ヶ月。めちゃくちゃsensitiveな思考と体力勝負の職人性が同居していた。それが出来た1990年代の都立大学だった

これによって洋書の売り上げが五倍になって渋谷Bunkamuraで講演会をすることになった。今でも辛いことがあるとあれを思い出して笑うんだけど、マラルメがどうの、書物の宇宙が・・・と喋った後に演壇から降りようとしたらみんな笑うんだねえ、何であろうと思ったら

「チャックが全開だったんだよ(笑)」

(ここで少しだけリブロの「今泉棚」の話。売り上げが10倍になったこと)

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