【お知らせ】早稲田祭1日目にチベット映画『オールド・ドッグ』の上映会&講演会を開催
2015/11/26
「早稲田祭2014」の1日目、11月1日の午後14時からチベット映画『オールド・ドッグ』(監督ペマ・ツェテン〈萬瑪才旦〉)の上映会と「チベットの今」と題し石濱裕美子講師による講演会があります。
一般の方は500円、学生は無料で入場。場所は早稲田キャンパス15号館の101教室です。
14時開場、終わるのは大体17時と、ここに来場すると午後の予定はすべて消えます。
しかし、これは必見の作品です。チベタン・マスチフという世界最大の犬であり古くからチベットの遊牧民の暮らしを盗賊から守ってきた存在がその「巨大さ」ゆえにブランド化し中国の資本家に次々と買われ盗まれていくという題材の巧みさと、何より映画ファンにとっては「2011年東京フィルメックス国際映画祭・最優秀作品賞受賞」「2012年ブルックリン国際映画祭・最優秀物語賞受賞」という輝かしい経歴を持ちながら、現状の映画産業の構造とマイナーな地域的特色ゆえにほとんど上映されることがない映画が500円で見られる貴重な機会となっています。
映画で描かれ暗示されるものは今のチベットが抱える問題、中国の現状、なにより民族問題全般を考える上で非常に重要です。先日立教大学で開催されたエクアドル映画のシンポジウムでこういう発言がありました。
「映画とはフィールドワークの一種であり、そこで描かれる人や風景はその国に馴染むための機会(契機)となる」
その言葉を裏付けるように上映された「バルタサル・ウシュカ~凍りついた時~」という映画には非常に感銘を受けました(南米大陸最高峰の火山(6310メートル!)の中腹から氷を切り出す仕事をするバルタサルという人のドキュメンタリー映画。現在その仕事に携わっているのは彼一人という状況で彼の仕事が時間軸をさかのぼって語られ、それが昔のドキュメンタリー映像と重なるという面白い構成です。)
ハリウッド映画などの大作映画はもちろん楽しいですが快楽重視だけが映画では当然ありません。ちょっときつい映画、幸せにはなれないけど「どう生きていくか」を考える映画、今いる閉塞的状況を別の視点で見ることが出来るそういう機能を持つのも映画だと思います。
けれど困ったことにそうした「異文化」としての映画に接する機会はどんどん難しくなっています。
マイナーな映画は流通過程を含め利益になりません、携わる人は多くの場合がボランティアです。もっと多様な映画が見たいと思っても、字幕を付けること、上映場所を見つけること、そうしたことの一つ一つは恐ろしいほど面倒くさい作業です。
なので出来ればマイナーな映画の上映会があれば、ちょっと面倒くさいと感じても機会を逃さずに足を運んでみてください。題材の重さゆえ見る側はどよーんとした気持ちになって世界の不条理に落ち込むかもしれませんが、実際に足を運んで見てくれた、そしてそれについて語るという行為は何よりもその映画に携わる人への大きな勇気となり、何かの一歩に繋がるからです。
早稲田祭に何回か行った自分だから思いますが、早稲田祭のような巨大なお祭りは、バザーを見たり陶芸品を買ったり、学術系のパネルを見たり、人の少ない文学部のキャンパスで部誌をぱらぱら覗いたり、そこでご飯を食べるなどして午前とお昼の時間を過ごした後は、どれかひとつ大型企画にドンと居座った方が楽しいです。
そして帰りに中央通路の壁に陣取ったナンパ待ちの女の子とそれを物色する男の子を見て帰るのが王道です。
映画上映+講演会「チベットのいま」
日時:2014年11月1日
場所:早稲田大学本部キャンパス15号館101
料金: 学生: 無料 一般: 500円
プログラム 14:00:開場
14:15:開演 司会挨拶
14:30〜16:00『オールド・ドッグ』上映開始
16:00〜17:00:石濱裕美子解説「チベットの今」
主催:オールド・ドッグ上映委員会
共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
言語の動態と多様性に関する国際研究ネットワークの新展開(LingDy2) プロジェクト。
2011年第12回東京フィルメックス最優秀作品賞受賞の監督インタビュー。ペマ・ツェテン監督のQ&Aもありましたが、ラストシーンに触れられているためそちらは載せませんでした。http://filmex.net/dailynews2011/2011/11/post-24.html<
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