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『007 スペクター』感想、凝縮された「ジェームズ・ボンド」成分に舌鼓を打つ

   

los muertos vivos están「死者は生きている」

大勢の人で賑わうメキシコシティの「死者の日」、カメラは祭りの遠景から徐々に仮装している二人の男女へと寄っていく。

妖艶な美女とスマートな男、仮装をしているが男の眼光は鋭い。彼は一人の男性が建物に入るのを確認し女性とともにホテルへと向かう。そして部屋のなかで女性が男のマスクを脱がす、中から現れたのはジェームズ・ボンドであった。

ここから始まるダニエル・クレイグ版007お得意の女性を放置しての追跡劇は、進行する祭りを背景に行われるのも相まって序盤から凄まじい緊迫感である。

『007 スペクター』 ポスター JAMES BOND (SPECTRE ONE SHEET) ジェームズ・ボンド

感想(ネタバレなし)

と、思いきやなのだ。

はっきり言うと『スペクター』は前作『スカイフォール』のような厳格な作風ではなく、若干感じるポンコツさが魅力である。

話としては『スカイフォール』の事件において殉職したジュディ・デンチ演じるMからの最後のメッセージで、一人の男を追っていたボンドが秘密組織「スペクター」の存在を突き止めていくというもの、その組織とボンドには実は深い因縁があり、さらにMI6の組織が解体される危機的状況が同時並行の出来事として描かれる。

「スペクター」という題名からもわかるとおり本作には『ロシアより愛をこめて』の寝台列車、『ゴールドフィンガー』の白服スーツなど過去の007シリーズに対するオマージュがたっぷりとあり、脚本も徹底的にボンドを詰めていく感じではなく、行き当たりばったりでもなんとかってしまうショーン・コネリー版のボンドを思い出す。

そりゃあバレるでしょう単独で「スペクター」の会議に潜入したら(笑)

この映画が厄介なのはそれと同時にダニエル・クレイグ版007の総決算でもあるので、過去のシリアスなボンドを引きずりつつ展開は「なんとかなるだろ」という適当さが奇妙な中途半端さを醸し出していることだ。

s_オーベルハウザー

『スペクター』における会議の様子(YouTubeの公式予告編より引用)

意図してやっているのかわからないサム・メンデス監督の破綻ぶりは、悪の高度な描き方を求めるリアリズム的展開を望む人にとっては無駄に豪華な分肩透かしをくらうかもしれないが、007シリーズのファンなら愛すべき「とほほ」感覚を味わえると思う。

なにより「スペクター」の首領オーベルハウザーが初めて登場するときの影の表現など、スペクターの底知れなさを現代風にアレンジしている映像へのこだわりは素晴らしい。

予習のための映画としてはジョージ・レーゼンビーが唯一ジェームズ・ボンドを演じた『女王陛下の007』とボンドが日本に来て忍者の修業をしながらスペクターを探る『007は二度死ぬ』をおすすめしたい。また冷酷なボンド像を提示したダニエル・クレイグ版第一作目の『カジノロワイヤル』のあらすじだけでも見ておくと、より今回の『スペクター』を楽しめると思う。

 

(ページが多くなったのでネタバレ感想は次回!)

 

 

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