鈴木亮平&井上真央の声に心震える教養映画『ルドルフとイッパイアッテナ』感想
2016/08/09
2か月ぶりの更新でごわす。
2か月も更新してないと「大丈夫か」などの声も聞こえてきたけれど
「大丈夫だよ!!」
転職活動してたので去年よりまっとうに生きてるよ!と思うもののそういう世界に生きていると文章を書く力がどんどん失われてしまう。そう考えるとSEO対策やら色々学んでも、面白いものを適当に書く心持ちでいるのが一番だなあと思ったのが上半期の到達点。
さて『ルドルフとイッパイアッテナ』を鑑賞。
TOHOシネマズで映画を鑑賞するとゴジラに踏みつぶされそうになっていた二匹の猫の物語(cv鈴木亮平&井上真央)、ようやく公開です。(ちなみに今回のアイキャッチはルドルフ一世)
『ルドルフとイッパイアッテナ』とは
1987年に刊行された『ルドルフとイッパイアッテナ』は児童文学のロングセラーとして多くの世代に愛されている。
と言いつつも、実は原作を読んだことがない。千葉で自営業をして休みの日はパチンコばかりしている友人はチラシを見た瞬間に「あ!これ知ってる!」と叫んでたから読んだ人は絶対記憶に残る物語なのだろう。この御仁にも純朴な少年時代があったのだと気づかされて涙した。(ヒメアノール感)
今回はこの第一巻に続刊の『ルドルフともだちひとりだち 』の一部を加えた物語が映画のストーリーとなっている。
『ルドルフとイッパイアッテナ』のあらすじ
黒猫のルドルフは飼い主のリエちゃんが大好き。
どこに行くにもいつも一緒、ただしそれは家の中だけ。ルドルフは家の中と庭以外の世界を知らずに育ったのです。けれどもある時リエちゃんを追って家の外に出たルドルフはひょんなことから長距離トラックに乗ってしまいました。
到着したのは人が大勢いる「東京」でした。
外の世界に慣れていないルドルフはあわや車にひかれそうなところを怖い顔をしたボス猫に助けてもらいます。名前を尋ねるとその猫は「いっぱいあってな」と言ったことから、教養溢れる不思議な猫イッパイアッテナとの不思議な物語が幕を開けるのです。
果たしてルドルフは無事リエちゃんのもとに帰れるのでしょうか?
映画『ルドルフとイッパイアッテナ』感想
アニメランド ルドルフとイッパイアッテナ (新編・ディズニー・アニメランド)

かわいい。
原作の絵も味わい深いけれど映画の絵もいい。そしてルドルフの声は井上真央が、イッパイアッテナの声は鈴木亮平が演じているのだが、両者ともにめちゃくちゃ上手い(特に猫の「にゃーお」の声は絶品)
フリーで生きてきた教養あるボス猫イッパイアッテナ、そんな彼と生活をするうちに多くのことを学んでいく純朴ながら芯をもったルドルフ、本当にベストな配役だったと思う。
ペット映画には大別すると二種類の系譜がある。
ひとつは飼い主がピンチになる系で、もう一つはペットがピンチになる系。本作ともうすぐ公開される『ペット』もハプニングのため遠く離れた場所から家に戻ってくるまでの物語という点で後者の系譜に属する。しかし『ルドルフとイッパイアッテナ』の場合、そこに人間の文字を読める猫がいたらどうなるか?というひねりを加えたことに特色がある。
イッパイアッテナは「教養」という言葉をしきりに口にする。そういうのは「教養」のないものがすることだと。野良猫として生きていくうえで人間の文字を知り、学び、「教養」を身につけることは彼にとって生きることと同じであった。
教養とは自分がどこにいるのかを確認するものだと述べたのは西洋史家の阿部謹也だ。何かが起きたとき、自分がどういう状況にいるのかを把握できれば、自分の立っている場所を理解できる。イッパイアッテナの「教養」はまさしくこういうものだと思う。
そんな彼と暮らすうちに自分の庭だけが世界だと思っていたルドルフも感化される。東京の広さを知り、世界を知り、そして生まれ故郷である岐阜を知る。学ぶことにより、ルドルフは元いた場所と今いる場所の距離を把握し、どのように帰ればいいのかを思考することが出来たのだ。
「絶望は愚か者の答えってんだ」というイッパイアッテナの決め台詞を含めて、このような学ぶことは生きることに役立つというテーマはまるでリドリー・スコット監督の映画『オデッセイ』のようで後半の怒涛の展開は非常に心を動かされた。
映画を見に来た子供たちはとても真剣に画面を注視していたのも印象的だった。
ストレートなメッセージと魅力的な猫たちとの交流の面白さ、このバランスの良さが巧みだったからだろう。親子が見に行く夏休み映画の一本として、まさにベストな作品だ。
本作が気に入った人には是非とも『こねこ』というロシア映画を。こちらは実写の猫が生き生きと画面を動き回り、同じく家に帰るために冒険する感動の物語です。
『ねこシネマ』を読んでロシア映画『こねこ』を見て悶えて日が暮れて
ここから少しネタバレ
原作を読んだ人はルドルフの運命を知りながら見るのでつらいかもしれない。
特にもし自分が子供のころ読んでいたら、もうつらくてつらくてずっと泣いていたに違いない。
けれどひとつの場所でひとつの名前を呼ばれるより、様々な場所で生きる覚悟を決めたときに人は「イッパイアッテナ」となるのだろう。そのときの心の痛みは多くの人が経験するつらいものだが、多くの名前を呼ばれるということは多くの世界を知るということでもある。
すべてを振り切って走り出すルドルフの姿は、世界を知ることのつらさと力強さを改めて教えてくれて涙が止まらなかった。『ルドルフとイッパイアッテナ』は困難な世界で生きていくための力をくれる必見の作品なのである。
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