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映画を丸裸にするラジオ「高橋ヨシキのシネマストリップ」が予想通りに面白い

      2015/11/30

(更新継続中の記事)

毎回(と言ってもまだ二回だけど)面白い20分間を朝から提供してくれる嬉しい番組が2015年4月から始まった。

「高橋ヨシキのシネマストリップ」

高橋ヨシキのシネマストリップ|すっぴん!|NHKラジオ第1

 

 

*NHKラジオ第一放送「すっぴん」の1コーナーで「金曜日」朝9時ごろから放送。

20分の間に映画の表テーマをざらっと紹介した後、裏テーマを語り作品のさらなる魅力を引き出し「丸裸」にするという意味で「ストリップ」…朝から素晴らしいね!

PODCAST配信はしてないみたいだけど心ある人が「ニ○ニ○動画」でUPしてくれてるみたいなので是非聞いてみてください。おもろいよ。

(注:2015年10月追記。本当は番組紹介で終わるつもりだったんですが、NHKの内部にいながら内容の凄まじさに驚いているので、これからちょっとずつどんなこと喋ったのかをまとめていきます)

初回は『未来惑星ザルドス』

1974年、ショーン・コネリー主演の哲学SF。

表テーマは人間の自由について、裏テーマとして格差階級の行き着く果て。 ここに描かれている無気力な人間や老いることは軽蔑すべきものだという不死の人々の思想は、現在の日本でも大いに当てはまるという指摘が面白い。もしかしたらザルドス以上にその思想が各階級に内面化されてて「怖い」のでは、と。

ジョン・ブアマン監督が自費を投じるぐらいの低予算映画だったという制作秘話。それでもこの映画の科学技術の描写に古さを感じず、抽象的で寓話的な作品だからこそ何度も見ることが出来るという指摘になるほどと思う。

作品についてパーソナリティーの高橋源一郎「見返す暇なかったな」と藤井彩子アナウンサーの「予習してきましたよ」にこの番組への好感度MAX。品のある二人の合いの手が絶妙だった。


放送二回目は『マッドマックス』シリーズ 

高橋ヨシキは雑誌『映画秘宝』で最新作の「予告編」を2014年の「ベスト映画1位」にあげた

1作目は、荒廃した未来のなかで家族の復讐とか司法の名残のような人間的世界観が残っていたが二作目・三作目は砂漠と車、空と極端にシンプルになったこと。その理由として石油を巡っての争いなどは現代にも通じる側面はあるが、むしろ神話的な人物が試練を乗り越えていくという神話的な世界観へと作品の構造がシフトしたためであるという指摘。かなり驚いたが、この映画の無骨なまでの素材のシンプルさに胸を打たれる理由がわかった。あと主人公マックスの台詞は全部で16行しかないとのこと、マジか。

(高橋ヨシキが映画秘宝で2014年の映画1位に上げていた『マッドマックス/怒りのデスロード』予告編(笑)。 高橋ヨシキ曰く「すべての場面にエクスタシーを感じます」、わかる)

*音と映像の同期が素晴らしすぎて鳥肌立つわ。

なんですが、映画公開の「吹き替え」を巡って問題勃発中。どうやらEXILEの人が主人公の吹き替えをするとかなんとか、いやあ話題先行の吹き替えはやめてほしいのが正直。なんてったって、そういうの全然「MUD(狂気)」じゃないからさ!


第三回『デヴィッド・リンチ』(2015年4月17日放送)

スターウォーズEP7の予告を見て動揺する高橋ヨシキ。今『ツイン・ピークス』の続編を作るというニュース。

リンチはベタで大衆的。それと同時に、自分のアートを曲げずに表現していて世界で認められているという凄い監督である。

デビュー作1976年「イレイザーヘッド」、高橋源一郎「これは強烈でしたね」

ざっくり一言:子供が出来て困った。

何の準備もしてない男が唐突にお父さんになることを告げられて悪夢的世界に迷い込む。彼女の両親と一緒にご飯を食べに行く気まずさなど要所要所が笑える普通のドラマ「普通のドラマを異常な感じで見せる人」

カルト映画はこの映画を一番わかるのは俺という印象を与える。出世作は「エレファントマン」内面世界をシュールレアリスム。異様な感じになる。最終的に救いが得られるはリンチ作品の大きなテーマでもある。

しかし『スター・ウォーズ』の監督オファーを断った『デューン砂の惑星』で世間一般から、原作ファン駄目と言われていたがこけた。

高橋源一郎「原作好きで見にいって、あれ?と(笑)でもリンチだからいいかってw」

慣れないことはやめようで、次作「ブルーベルベット」

一見平和に見える街の中に暗黒が潜んでいる。ベタな比喩とかイメージわかりやすいアート的だが、、暗黒の昼メロ大衆的であることとアートアートというのは自由それを実際にやるということ堂々とやって、受けいられているということの信じられない自分に自信がある、「みんなもリンチになりたい欲求。でもなかなかできない」大衆文化とアートとの間に境目がないことが強みなのではないか。

高橋ヨシキ「裏側に暗黒が見える寅さんとかやらないですよね(笑)」

次ページ:第四回「『インディ・ジョーンズ』シリーズ」~

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