映画大好き人間が選ぶネットフリックスのおすすめ作品【part1】
2015/11/26
いよいよ9月2日からネットフリックス日本版のサービスが開始されました。
CMで予告されていたように「シドニアの騎士」や「キルラキル」、「孤独のグルメ」(全シーズン)などの人気作があり、現時点ではまだHuluやTSUTAYAディスカスの作品数には及ばないものの、ネットフリックス独自のオリジナルドラマや劇場未公開の良質なドキュメンタリー映画多数のラインナップに大満足。
本国アメリカのサービスに比べても当然まだまだの作品数ですが、サブジャンルの多さを見るに、これから古い映画や韓国ドラマなどもドンドン増えてくると思います。
今回はそのネットフリックスから「これは!」と思う作品を10本選んでみたので、何を見ようか迷った時の参考にしてみてください。
Contents
①「デアデビル」
ネットフリックスのオリジナルドラマは多すぎなので、とりあえず話題のマーベル「デアデビル」を。昼間は弁護士として同僚のフォギーとともに活躍するマット・マードック。彼は幼少期の事故が原因で盲人となったが、代わりにどんな些細な音も聞きのがさない超感覚を獲得していた。その能力を使い、夜には法を侵す存在デアデビルとなって彼は悪と戦うのだった・・・。
『アベンジャーズ』以降のニューヨークが舞台で、登場人物の言葉の節々にそれと匂わせる仕掛けがファンにはたまらないドラマとなっております。そんな復興しつつある街で暗躍する悪党は、宇宙からの侵略者ではなく犯罪者。だからこそ生活に身近な悪の描き方が実に巧みな作品です。マーベルはこの作品を皮切りに複数のドラマを作ったあと「ディフェンダーズ」というシリーズでそれらをクロスオーバーさせる予定とのこと。
②「ビル・カニンガム&ニューヨーク」
ドキュメンタリーの数が多いのもネットフリックスの魅力。
この作品は80歳を超えた今もニューヨークの街をボロ自転車で駆け巡り、これは!と思った人々のファッションを撮影し続けるビル・カニンガムに密着した映画です。
偏屈な、そしてユーモラスな彼が撮った写真は「ニューヨーク・タイムズ紙」のコラムに掲載され、毎回大きな反響を巻き起こします。それゆえセレブたちのパーティにも呼ばれるけれど、彼はそこで食べ物や水に手を付けることはしないのです。端的に言えば「慣れあわない」。良くないものはたとえ友人のファッションだろうと取り上げない彼の批評精神に根付く仕事術と発せられる名言の数々はとにかく見ていて清々しい。
③「ウェット・ホット・アメリカン・サマー」
Wet Hot American Summer [Import]
多くの人が名作と語る日本劇場未公開のカルト映画。内容はサマーキャンプに来た人々のキャンプ最終日に起こる出来事を描いた青春群像劇なんですが、脚本が狂っていてそれがとても楽しい。
恋が始まったり、恋をあきらめたり、恋に破れたりを異様に圧縮された時間軸で描き、同時に地球への落下物を阻止するために奮闘し、ミュージカルをしたりもする。そんなバカな!と思いつつも、ダメな人たちをそのまま受け入れる器のでかい物語に謎の感動を覚え、映画の終了後は登場人物すべてが愛おしくなっているという恐ろしい作品。
若き日のブラッドリー・クーパーやポール・ラッドも出演していて、これをもとに作られたキャンプの初日を描いたネットフリックス製作のオリジナルドラマも同じく配信中です。
④「アタリ:ゲームオーバー」
ATARI GAME OVER アタリ ゲームオーバー [DVD]
DVDの発売よりも早く配信されていた「アタリ:ゲームオーバー」。「史上最悪のクソゲー」と名高い『E.T.』にまつわる数奇な運命を描くドキュメンタリー作品です。
アタリ社倒産の要因とも噂されてきた、このゲームソフトには古くから伝わる一つの都市伝説がありました。それは隠蔽のために大量の「E.T.」が当のアタリ社の手で、アラモゴードの巨大ゴミ捨て場(砂漠)に捨てられたというもの。
それを確かめようと発掘を決意した一人の男の苦闘と、関係者の証言と共に語られる「アタリ」の真実の歴史には後半、涙と笑いと鳥肌が止まりませんでした。
⑤「劇場版美少女戦士セーラームーンR」
ピンポイントでRの劇場版だけありました。netflixわかってます(笑)
監督は、後に『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』を監督した幾原邦彦ということであらゆるところに花が舞ってます。物語のほうも悪魔の花キセニアンによって支配された異星人が地球を滅ぼそうと目論むといったもの。
タキシード仮面こと「まもちゃん」が完全にヒロイン扱いの劇場版は、セーラームーンという物語をまったく知らなくても面白いこと間違いなしなので、見てない方はこの機会に是非。
⑥「メガマインド」
海外では評価が高いのに、一般受けしない図柄のせいか日本では全然話題にならないことで有名なドリームワークス制作のアニメーション。
とある星から地球に送られた異星人の2人、見目麗しい一人は富豪の家に拾われスーパーヒーローとなり、かたや刑務所で育てられやさぐれて悪の親玉「メガマインド」となった。幼少期から延々と繰り返される戦い。しかし
ある日、今まで一度も倒せなかった最強のヒーローをメガマインドは殺してしまったのだ。喜ぶメガマインド、しかし、しばらく経って目的のない日々に空しさを感じ始め、一つの考えを思いつく。自分と戦うヒーローを自分の手で作りだそう!と。
悪でさえヒーローに頼っている構造は面白く、適性のない人間が力を持ってしまった時の怖さを描くドリームワークスの真骨頂といったところ。意外性あふれる展開も非常にエグく本当に面白いです。
⑦「マインド・ゲーム」
アニメ『四畳半神話体系』などで有名な湯浅政明の初監督作品。そして傑作アニメです。とある偶然から元恋人「みょん」と再会した冴えないフリーター「西」、そのまま彼女の姉が働く焼き鳥屋に行き出会いを喜ぶものの、そこでみょんが婚約していることを知ってしまう。しかもひょんなことからヤクザによって西は、お尻の穴から銃弾を撃たれて死ぬという情けない死を迎える。現世に未練のありまくる西は、あの世で大いなる意志に逆らい再び現世に返り咲くのであった。
人間って生まれたときは様々なことが可能だったのに、徐々に自らその道を閉ざしていったのだということをこの作品はまざまざと教えてくれます。そして、それに気づき、死ぬ気で生きてみようと決意してもあっけなく終わることもあるのが人生だということも。見ていてキツイのは確かです。けれど、人間の可能性とはなんなのか、そのテーマが結実していく終盤のとてつもないカタルシスをぜひ味わってください。
⑧「MUD」
「インディーズ映画」というカテゴリがnetflixにはあって日本未公開の作品を積極的に配信する気満々みたいです。その中からこの作品を紹介します。
道を外れた男に少年が心惹かれていくという古典的な設定に泥、川、森といったミシシッピの自然描写が響きあって堂々たる青春映画。様々な「愛」の形を区別できない少年(タイ・シェリダン)が、その言葉の複雑さと脆さを知ってしまい、すべてを「マッド」(マシュー・マコノヒー)に叩きつけていく慟哭の演技は「新たなアメリカ映画の名作が誕生した」という予告編のビッグ・マウスが確かにふさわしいです。
彼らの物語の行く末を見守るのが実は・・・という構成も好み。
⑨「左将軍のチキン」(THE SEARCH FOR GENERAL TSO)
どんな田舎でもアメリカの中華料理店に必ずある「左将軍のチキン」。揚げた鶏肉を甘辛いタレとニンニクで炒めたこのジューシーな料理はアメリカ人にとっての定番メニュー、けれど一つの疑問。
左将軍って誰?
その謎を追跡していく料理ドキュメンタリー。中国ではメニューに存在せず一般にも知られていないこの料理が、なぜアメリカでこんなに広がったのか?そこには1850年代のゴールド・ラッシュにはじまる、中国系アメリカ人の苦難の歴史があった・・・。見ていると、めちゃくちゃお腹がすいてくるのでご用心。
⑩「アリーテ姫」
『マイマイ新子と千年の魔法』が話題を呼び、2016年には、こうの史代原作『この世界の片隅に』の劇場アニメーションも公開されることが決まった片淵須直監督のファンタジーアニメ。
ずっとお城に閉じ込められて、外の世界を知らなかったお姫様が自立する話とまとめることも出来ます。しかし、おそろしいまでの倦怠感が物語世界を覆っているように、この映画の射程はさらに広いです。自分はこう捉えました。「魔女」「魔法使い」などファンタジーの要素をさらに寓意化して衰退しつつある世界、物語ることが困難な時代に、どうやって自分の言葉を取り戻すか、人間にはまだ何かできるのか、その可能性を問いかける話だと。
まだ他にも紹介したい映画はあるのですが、まずは10本。
今後アメリカの本家サイトみたいなことになったら、全作品をチェックする余裕はなくなると思います。再び更新する希望を込めて【PART1】としました(笑)
ネットフリックスは本当に使いやすく、2015年9月現在、サービス開始月は月会費無料とのことなので、興味を持った人は是非お試しを!
(他の動画配信サイトと比べたうえでNetflixを使ってみた感想はこちら)
↓ネットフリックスで今後配信されるであろうアメリカのインディーズ系映画やスクール映画の系譜や文脈を知るには、この本がおすすめ!
DU BOOKS
売り上げランキング: 4852
【関連記事】
関連記事
-
2014年公開映画のベスト10本
・今年も映画を色々見ました。来年はたぶんこんなに新作は観れないだろうなあという予 …
-
淀川長治、荻昌弘、水野晴郎・・・テレビに映画解説者がいた時代、そのまとめ
「映画批評をめぐる冒険」という講演会に行って、自分より少し年上の書き手が文化的な …
-
岩井俊二のMOVIEラボ第六回「ドラマ編Part2」(最終回)
岩井俊二のMOVIEラボ第六回「ドラマ編Part2」(最終回) (2015年2月 …
-
知ってる人は知っている名作「ぼのぼの絵本」
「2015年はぼのぼのが熱い」と言う記事を書いてそれなりにアクセスがあるみたい …
-
2014年9月に見た本と映画
見た映画 ★「リヴァイアサン」(シアターイメージフォーラム) ・「アンドレイ・ル …
-
今年「トレーダー分岐点」で反響の大きかった記事10選とその分析
本サイト「トレーダー分岐点」を始めて1年半ぐらいになりますが、今年の6月ごろから …
-
スヌーピーミュージアムに行った後はカラー漫画のサンデー版でスヌーピーの活躍を楽しもう
スヌーピーミュージアムも大盛況のなかKADOKAWAから新しいピーナッツのセレク …
-
岩井俊二のMOVIEラボ第二回「特撮編」まとめ
2015年1月15日放送回まとめ。 一回だけまとめるつもりが、二回目のほうが面 …
-
2014年のまとめ(読んだ本&旧作映画BEST10)
あけましておめでとうございます。パソコンの前でかちゃかちゃやっていたらいつの間に …
-
「第十九回文学フリマ」へ行って買ってつらつら思ったこと
11月24日(祝)に行われた「第十九回文学フリマ」に行ってきました。前回行ったの …