金をかけられないなら手間をかければいいじゃない『人気店の日本一おいしいレシピ』(主婦と生活社)
2015/12/02
「あー美味いものが食べたい」と思うことが最近増えた。
普通の人よりは舌の良い家系に生まれたもので子どもの頃は、給食に出てくる鮭に関して「解凍に失敗している。パサパサであり食べられたものじゃない」と教師に言い放ち、駄菓子屋さんに友達と行ったら書籍『買ってはいけない』を持ち込んで成分チェックをするという美味しんぼ顔負けのクソガキだった。
オトナになって都市に生き、お金の面から舌の妥協と言うことを知り、その結果外食に安い値段で行くよりも自分で作ったほうが美味しいというレベルにはなったが、たまにフェイスブックで知人が高い店で美味い物を美女と共にいる写真を掲載していると、
「ああ「プロのレベル」を自宅で再現できれば毎日美味いものが食べられるのに!(ギリギリ)」と思いは募る。
雑誌「danchu」を読んで高い食材を買い揃えるのでもなく、どこかのお店に見習いとして入って技術を磨くのではない。もっと手軽に一品料理を一段階上のレベルにまで上げる奥義書や必殺技があればいいのに!とモヤモヤしてるときに、書店で見つけたのがこの本『人気店の日本一おいしいレシピ』だ。
美味しいものを一段階さらに上のレベルに上げる解決法・・・
それは「手間」をかけることである。
人気店の日本一おいしいレシピ: 豪華すぎるシェフが勢ぞろい! (別冊週刊女性) | ||||
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そんなの当たり前じゃねえか!と思うかもしれないが、この本は定番料理のレベルを一つ上げるために「どう手間をかけるか?」ということを、プロの料理人が一般向けにわかりやすく語っている料理書である。「手間をかければ美味しいものが作れる」と言った時のこの「手間」をしっかり解説しているのだ。
さらにここが重要な点、「どうせ作るならいちばんおいしいレシピが知りたい!」と巻頭に掲げられてるとおり、『グリル満点星』の「カレーライス」、『分とく山』の「筑前煮」、『青山ぼこい』の「ポテトサラダ」・・・etc。と掲載されている定番料理はどれも人気店のレシピ!
しかも『週刊女性』で連載していた記事のなかで反響が大きかったものを厳選したということだから、まさにベスト・オブ・ベスト。
で、実際にいくつか作ってみた感想。
「求めてたのはこれ!」
確かに手間はかかるが手順通りにすすめていけば、実に簡単に一段階上のものが自宅で食せる、素人でも。
例えば、『青山ぼこい』のポテトサラダ
二人分の材料は
- メークイン2~3個(ポテトサラダに適している)
- 卵一個
- スライスベーコン1個
- きゅうり2分の1
- 玉ねぎ(小)4分の1
- コンソメひとつまみ
- マヨネーズ30グラム
- 黒胡椒少々
と実にシンプル。次に順序(概略なので詳しくは本を読んでください)
①メークインの皮をむき、1センチほどに半月切り。
↓
②鍋に入れて水をひたひたと入れて、コンソメ投入(コンソメを入れることで仕上がりの風味がアップ!)竹串が通るぐらいに17分ほど茹でる。
↓
③ゆであがったら水を捨てて、強火で鍋をゆすってジャガイモの水気を飛ばす。
↓
④卵は水から15分茹で、殻をむいて一センチ角に切る。
↓
⑤ベーコンは5センチ幅に切ってサラダ油(分量外)を薄く敷き、強火で炒める。その油は残す。
↓
⑥きゅうりは輪切り。玉ねぎは千切り。水につけてからザルに上げしっかりと水気をきる。
↓
⑦メークイン+卵+ベーコン(with油)を混ぜ合わせる
↓
⑧それが冷めてから野菜と黒胡椒、マヨネーズを投入し再び混ぜて完成。(じゃがいもは崩しすぎない)
出来上がった料理は「おお、これ自分が作ったのか」とちょっとビックリする出来だった。
作ってみて面白いなと思ったのは、シンプルな食材で手間をかけるというプロの手順を体感し一段階上の料理を作った結果、名店と呼ばれる店の凄さを追体験できること、ここからさらに技術を磨き食材にこだわればもっと凄い料理になるというのを実感させてくれることだ。
ま、それはそれとして手間をかければいいだけで時間はかかるがお金がかからないのが何より最高の本だ。土日とかちょっと自分で美味いものを作りたい!と言うときに、この本でチャレンジしてみてはいかが。
・少し毛並みは違うがプロの料理人が教えるレシピサイト。原価をちゃんと書き、それを実際にお店でいくらで提供しているのかを掲載していて、ちっとばかし恐ろしいサイト(笑)
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