トレーダー分岐点

新刊本や新作映画、アニメの感想などを書き続けるサイト|トレーダー分岐点

*

【映画感想】すべての終わりの目撃者となれ!『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章』

      2015/11/27

(ネタバレしかない)

s_世界の終わり

GWはずっと白石晃士監督作の映画を連続鑑賞。そして最終日に準備万端で『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章』を見た。

いや、これ泣くわ。

異世界に消えたディレクターの工藤Dとアシスタントの市川を助けるために、どちらかといえば今まで傍観者でしかなかったカメラマン田代がいよいよ一線を越えていく展開にはすげえ熱くなったし、本作が「白石版アベンジャーズ」とも言われているように、別の世界線から江野祥平が助けに来たときにはもう涙が止まらなかった。

この絶対に交わらない世界が交わって「安心しいや、俺は味方や!!別の世界で田代くんに恩があんねん」とくると『オカルト』を見ている人には、もうこの時点で一人部屋の中で「うおおおおおおおっ!」と叫んでしまう事態に。

そして、そこから夜明けまでに使命を果たせなければいけないという田代へのミッションとそれを生放送で実況しているという形式があわさって臨場感が半端ない、1カットのように映像を繋げているから見る側は江野祥平に引き連れられてジェットコースターに乗っているかのような感覚を味わった。

田代がある意味で狂っていく世界の中で一線を越えることの描き方だけれど、世界の倫理と言うよりも田代の覚悟が世界を救うということで、一度世界の倫理という問題で失敗している江野だからこそ示せた道なのかもしれない。上空に巨人があらわれるわ、室内にいても常に救急車の音が聞こえるほど変容してしまった世界で「自らの指を切り落とす」という行為、そのあとにカメラを固定してでも映像を撮り続ける田代の覚悟は『オカルト』の倫理の越え方とは異なる。

だから、田代が殺すことになる女性の「もともとあなたたちが何もしなければ、ここへこうして立つことはありませんでした。どうしてくれるんですか」や江野「後悔してんのか白石くん(監督名)」という台詞には、これは確かに虚構なんだけど現実にいる白石監督のフィクションを作ることへの覚悟が伝わってきて、ズシンと重い言葉である。。

それで後半も凄い、田代は工藤と市川を助けることに成功し物語はRPGでいえばラスボス戦に突入する。ヤバイ勢揃いだ!と見ている側の歓喜、なおかつここまでの展開でレベルカンストしたかのように、みんなの肝の座り方がとんでもない。

工藤D「こんな世界じゃホラードキュメンタリーなんか売れないじゃねえか!」

田代カメラマン「ここまできたらどうってことないです」

市河「ほんと、サイテーですね!」

と彼らは何度でも運命に立ち向かう。過去へのタイムスリップ、歴史改変を阻止する黄泉平坂の顕現、壊れてしまったこの世界を救うには工藤らの因果と絡め江野を砲弾として向こう側の世界へと発射することだった。そして「敬語はやめてえや」と言う江野祥平に、田代は「江野くん、ありがとう」と別れの握手を交わす。『オカルト』のラストを再現するかのように江野祥平は向こう側へと旅立つ。

今度こそ本当に世界を救うために。

作戦が成功し、世界が再構築されるなか最後の会話をする工藤たち。工藤「新しい世界でも、またつくってやるよ」、市川「見つからないように人生送ります」という、いつもの、最初の頃と変わらないやりとりがとにかく、ああこれで終わりなんだなと思って、つらくなる。

最後にカメラだけの映像、それも途切れたところで「コワすぎ」は終わる。

そして「超コワすぎ」の特報である。

泣きながら、「もうさーーーーー!ありがとう!」とぐしゃぐしゃの顔で笑いながら、DVDの再生を停止して自分のゴールデンウィークは終わったのだった。

 

【関連記事】

 - 映画評

スポンサーリンク
スポンサーリンク

  関連記事

映画「クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル」 感想

明日から、いよいよ「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」が映画館 …

「打率9割9分9厘、それはゴリラ」映画『ミスターGO!』感想

予告があまりにも微妙だったので、どうなんだろうと思いつつ感想が誰からもあがってこ …

最強の霊能力者出陣す!傑作ホラー『カルト』(監督:白石晃士)感想

見るのがもったいない映画というのがいくつか自分の頭の中でストックされており、それ …

x-menアポカリプス 絵画
そして彼らは集結する。『X-MEN アポカリプス』の感想と過去作の予習

『X-MEN アポカリプス』はX-MENシリーズの最新作にして『ファースト・ジェ …

映画クレヨンしんちゃんの最新作は歴代屈指のエグさ(少しネタバレ)

劇場でこのポスターを見た時から、「泣かせる気満々じゃないか・・・」と自分の中でハ …

たとえホラー映画が苦手なあなたでも「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズは見なければいけない理由

早速だけれど自分は怖いものが好きで苦手だ。 だからみんなで集まったときにしか見な …

『007 スペクター』感想、凝縮された「ジェームズ・ボンド」成分に舌鼓を打つ

los muertos vivos están「死者は生きている」 大勢の人で賑 …

映画を丸裸にするラジオ「高橋ヨシキのシネマストリップ」が予想通りに面白い

(更新継続中の記事) 毎回(と言ってもまだ二回だけど)面白い20分間を朝から提供 …

『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウ初監督作『彼女はパートタイムトラベラー』感想

SFコメディというジャンルに分類されたためにヒドい邦題だがコリン・トレボロウの長 …

映画館はつらいよ『映画館のつくり方』(映画芸術編集部)

映画好きなら1度は考えるかもしれない。 「映画館を運営するということ」 しかし、 …