見ていてビビるほどの百合百合映画『劇場版アンパンマン ロールとローラ うきぐも城のひみつ』感想
2016/07/29
野外でミミ先生たちが映画上映をしていたら、そのことがなんだか気に食わないバイキンマンが襲来、しかし、あっという間にアンパンマンがやってきて一瞬で遠くにふっ飛ばされるバイキンマン・・・いつもの展開かと思いきや、音楽が途中で途切れ、CGキャラクターになったアンパンマンとバイキンマンの戦いが繰り広げられる!
こういう遊び心に、セル画で製作された最後の劇場版アンパンマンであるという風情を感じつつ、『劇場版アンパンマン ロールとローラうきぐも城の秘密』は、
信じられないほど百合映画だった・・・。
バップ
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(あらすじ)
ある日、時空のゆがみに「うきぐも城」を発見したロールパンナ。そこには一人の女の子がいた、名はローラ。ここで彼女は一人、世界の汚れを洗い流す仕事をしていたのだが、現在そのための機械が故障して修理の真っ最中。
うきぐも城に咲き誇る一面の「まごころ草」によってロールパンナの優しさが発動し、ローラを助けることに。最初は反発していたローラだったが、お互いの寂しさを埋めあうように仲良くなっていく二人。
だが、うきぐも城のそばには禍々しい形の「ばいきん草」も一面に広がっていた・・・。
(感想)
自分がなぜこんなにもロールパンナ好きなのかというと彼女だけがアンパンマン世界の論理を飛び越えちゃってるから、それがたまらない。
そのため、この映画を見ているあいだずっとニヤニヤしっぱなしだった。
作ってる最中に善と悪の二つの心が入っちゃったって設定としてやっぱりヘビーすぎるよ、やなせ先生・・・と思いつつ、時空の歪みにある「うきぐも城」でローラ姫とロールパンナが邂逅する今回の話、「ここにいると、こんな風になってしまうんだ」と、ローラが頭の包帯をとると、そこには大気の汚れで黒ずんだ髪と顔、うきぐも城の汚れた描写とともに今回のテーマはちょっと重いかもしれないと考えていたら・・・。
ローラ「なんであたいの仕事を手伝うんだ」
ロールパンナ「好きなんだ」
ローラ「えっ・・・」
ロールパンナ「花が」
ローラ「おまえきれいな目をしているな・・・」
・
・
・
百合ですね、間違いない。
環境問題がテーマかと思いきや百合とは今回の劇場版には驚かされた。誇張だと思ってる人は一度見てみるとわかるけど、マジです。
「あたいの顔見ると、みんな逃げていくぜ」「ここの仕事は一人で十分さ」と強がっていたローラが徐々にデレて、ロールパンナに髪の毛を洗ってもらったり、一緒に服の着せあいっこをしたり、ずっとここにいろよ!と叫ぶシーンとか15分ぐらいずっと、アンパンマンとは別次元の物語が展開されます。
で、そのいちゃいちゃしている空間に出現するバイキンマン一派とアンパンマン一派。
この辺一気に現実に引き戻される感じがして、例えるなら部屋で秘密の花園をしてたら、急に家族とか友人が尋ねて来ちゃった感じ。
ああ、気まずい(笑)
というわけでここからは親御さんも安心できるいつも通りのアンパンマン。
まごころ草によって口調まで変わり「戦いはいやです。」と逃げ出したロールパンナに「バイキン草」を喰らい尽くしたバイキンメカの暗黒エネルギーが発射され、予想通りブラックロールパンナに。
バイキンマンも「バイキン草」の力で世界中を汚染していきます。これも予想通り。
そしてロールパンナがアンパンマンの加勢に来たカレーパンマンと食パンマンにも暗黒エネルギーを放ちます。
えっ
3VS1
正直前半の物語で満足してしまい後は呆けながら見ていたから、このドラゴンボールGTのベビー編みたいな展開は予想していなかった!
その悪に落ちた食パンマンを止めるのがドキンちゃん、カレーパンマンを止めるのがバタ子さん。そして雷撃に身を焼かれながら、ブラックロールパンナを抱きしめるのはメロンパンナという流れが素晴らしい。
だから「ローラの雨」を降らせることに成功して世界が平和になっても、どこかに空気が悪いところがあるなら私は行かなきゃ、とローラ姫が一人で旅立つどころは妹強しといったところで説得力がある。ただ前半に感情の大部分を移入した身としては、とっても切ないけれどね!
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