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新作STARWARSに備えるためには河原一久のスター・ウォーズ本が良いぞ

   

2015年はスター・ウォーズの新作が公開されるということもあって世界中で盛り上がりを見せています。日本でも書店に行けば関連本や特集雑誌の数々が並んでおり、広告のタイアップも多数。

しかしEP7「フォースの覚醒」は旧三部作のラストを飾ったEP6の直接的な続編という隔たり、一番新しいEP3にしても公開からすでに10年の月日が経過しています。

それによって生じている観客と作品の空隙は大きいように思うのですが、大作「スター・ウォーズ」だからと宣伝や配給が文脈を埋めているようには見えないところが若干気にかかっている今日この頃。

そこを橋渡ししてくれる最近同時期に出版された河原一久による2冊の書籍を紹介します。

一冊目は『スター・ウォーズ論』

スターウォーズは現代の「神話」として語り継がれています。要因は様々にありますが、ひとつには間違いなくジョージ・ルーカスがそうなるように多くの神話から着想を得て世界観を構築していったことがあげられます。その概要に関して「スター・ウォーズ」シリーズの字幕監修にも携わっていた河原一久が語るのが本書『スター・ウォーズ論』です。

最初の作品「新たなる希望」から始まるEP4~6のファンは、プリクエルと呼ばれる前日譚のEP1~EP3をつまらないだけではなく神話の世界を狭めていると嫌う人も多いのに対し、著者は「ファントムメナス」から始まる前日譚を含めて一からスター・ウォーズの魅力についてまとめています。

ジョン・フォード『創作者』、リーフェンシュタール『意志の勝利』、『フラッシュゴードン』といったルーカスが参考にしたと思われる過去の作品をフラットながら熱い語り口で分析し、多様な面から「スター・ウォーズ」の人気を解きほぐしていく過程は目からうろこが落ちます。ちなみに『スター・ウォーズ』論のためストーリーのおさらいはあまりなし。

↑ネット上より『スター・ウォーズ』が影響を受けた映画についての解説動画

 

二冊目は『スター・ウォーズ<フォースの覚醒>予習復習最終読本』

ストーリーのおさらいをするならこっちがおすすめ。最後の章にスター・ウォーズのあらすじを面白くまとめた文章が掲載されています。「過去作で予習はするべきなのか?」「予習するならどこから観るべきか」といった話題や、『GODZILLA ゴジラ』(2014)を監督したギャレス・エドワーズが手掛けるスター・ウォーズのスピンオフ作品『ローグ・ワン』の話など興味深い内容多数です。

ちなみに『ローグ・ワン』は、帝国に反旗を翻したレジスタンスがデス・スターの設計図を盗み出すというEP3とEP4を繋ぐ話、2016年12月16日に全米で公開が予定されています。

本書はネット上に集められた情報をかなりの精度で解説しているので、新作の情報を入れたくない人は真ん中あたりを飛ばして映画を見てから読んだほうがいいかも。実際映画を見た後に読んだ方がいろいろと思うところがあって面白いです。

映画『Star Wars: Rogue One』の画像(MOVIEWEBより引用)

映画『Star Wars: Rogue One』の画像(MOVIEWEBより引用)

(追加)『スターウォーズ快適副読本』

一冊目に紹介した『スター・ウォーズ論』は最初の映画公開時の熱狂を体感するのにこれ以上ない新書であり、二冊目の『スター・ウォーズ<フォースの覚醒>予習復習最終読本』は今後のためのあらすじをおさらいしていく良書です。

が、実はその折衷案として両方のおいしいとこどりをした本もあります。

それが同じ著者による『スター・ウォーズ快適副読本』

なぜEP1~3が制作され、「特別編」という名目で旧三部作の修正作業を繰り返したのかといったルーカスの意図をキーワード「太陽の子」をもとに解説する過程は、これこそスター・ウォーズ全部好きという著者の気概がこれ以上ないほど伝わってきて自分にスター・ウォーズを語る楽しさを教えてくれた本でした。

またEP3「シスの復讐」公開前の刊行にも関わらずEP3の内容をほとんど外しておらず、スター・ウォーズを理解するための知識を余すところなくコンパクトにまとめています。Ep7はないと言い切っている古い本&表紙は地味ですが、今読んでも非常に面白いです(なおかつ安い)

 

終わりに、始まりはいつも新しい

雑誌『キネマ旬報』のスター・ウォーズ特集において『フォースの覚醒』を監督するJ・J・エイブラムスの発言が引用されていました。過去にこだわるのではなく新しい三部作を構築していく。と。

というわけで新作はそれだけを見ても非常に面白く、過去作を見ているとより楽しめる方向で作っているはずです(エイブラムスの監督した『スタートレック・イントゥダークネス』が過去の『スタートレックII カーンの逆襲』を知らなくても楽しめたように)

だから、少しでも今回紹介する本などで興味を持ったらスター・ウォーズという「祭り」を是非とも映画館に体感しにいきましょう。

 

今回紹介した本は河原一久氏の書籍だけでしたが、新作公開による書籍刊行ラッシュの中で『アルティメット・スター・ウォーズ (完全保存版大百科)』が頭一つ飛び抜けてました。まさにアルティメットという分厚さで凄まじいです。数量限定という噂もあるので書店で見かけたら即購入をオススメします!

 

【関連記事】

TSUTAYAレンタルにおいてはスター・ウォーズ関連作がズラーッと貸し出されていたので、冬休みに備えて課金制の動画配信などで鑑賞するのも良いと思います(アマゾンレンタル・U-NEXT・dTVなどでは400円~レンタルしてました)

で、動画配信サービスって結局どれがいいの?完全主観で比較したまとめ

↑動画配信に関しては上記にまとめました。

 

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 - 映画本, 書評

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