初めてスヌーピーの漫画を読むなら『スヌーピーコミックセレクション』(角川文庫)がおすすめ
今年は漫画、本・カフェ・アニメ・グッズなどありとあらゆるところでスヌーピーが流行っています。
12月には締めくくりとして劇場版『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』も公開されるのですが、なんとスヌーピーが劇場で上映されるのは日本ではおよそ38年ぶり。
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ということでスヌーピーの出てくる漫画「ピーナッツ」を読んでみようと思った人も多いはず。そしてちょうど良い時に角川文庫から全五冊の「スヌーピーコミックセレクション」が発売されました。
セレクションなので子供のころからガッツリ読んでいるファンには物足りないかもしれません。けれど原作の連載期間は約50年と実に膨大。この文庫版では各年代で始まったお約束のギャグや登場する人物の紹介などを一から紹介しており手軽にピーナッツの世界へ入ってゆくことが出来ます。
谷川俊太郎訳と英語の対訳なので楽しみながら英語の勉強をしたい人にも最適です。今回は初期・中期・後期と面白さと絵柄が徐々に変化していった漫画「ピーナッツ」の世界をちょっとだけ紹介。
Contents
1950年代~「馴染みのない絵柄、お馴染みのユーモア」
KADOKAWA/メディアファクトリー
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スヌーピーはまだ普通の可愛い生意気な犬、ピアノを弾くシュローダーは赤ちゃんのよう、チャーリーブラウンも頭が大きくなんとなく漫画「ぼのぼの」の初期絵みたいなとぼけた感じを連想。
でもライナスの安心毛布やチャーリー・ブラウンが監督を務める弱小野球チームネタは後に繋がってきます。
1950年代の「ピーナッツ」は女性陣のチャーリー・ブラウンいじり、特にルーシーのがみがみ具合が凄まじく、後の時代とは比べ物にならないほど苛烈で皮肉たっぷり。
お気に入りのことば
Linus:I FEEL KIND OF DEPRESSED TODAY…
(ライナス「今日は気がめいっているんだ……」)
Linus:DO YOU EVER HAVE THE FEELING THAT LIFE HAS PASSED YOU BY?
(ライナス「人生が過ぎ去って行く感じしたことある?」)
Charlie Brown:WORSE THAN THAT…
(チャーリーブラウン「もっと悪いのは……」)
Charlie Brown:SOMETIMES I THINK LIFE AND I ARE GOING IN OPPOSITE DIRECTIONS!
(チャーリーブラウン「人生と自分がすれ違ってると思うこと!」)
1960年代~「そして始まるスヌーピーの縦横無尽の活躍」
KADOKAWA / メディアファクトリー
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みんなの知っているピーナッツの作風に近くなる1960年代、そしてスヌーピーが大きく飛躍する巻でもあります。
特にアニメにたびたび登場する第一次大戦の撃墜王フライングエースの登場は、ここから1970年代の小説家や弁護士スヌーピーなどの変装ネタに繋がっていく画期的な瞬間です。
「かぼちゃ大王」「ルーシーの精神分析スタンド」といった定番ネタは洗練されてきて、個人的には1961年の新年にはじまる「ライナスの安心毛布」ネタは一番好きなバージョンです。
お気に入りのことば
Patty:YOU’LL NEVER BE ABLE TO CHANGE!
(パティ「あなたはゼッタイ変われないわよ」)
Patty:YOU’LL ALWAYS BE A CRABBY LITTLE GIRL! YOU WERE BORN CRABBY, AND YOU’RE GOING TO STAY CRABBY!
(パティ「あんたは相変わらず意地悪小娘よ!生まれつき意地悪で、いつまでも意地悪のままよ!」)
Patty:DON’T THINK YOU’RE GOING TO CHANGE BECAUSE YOU’RE NOT!
(パティ「変われるなんて思わないほうがいいわムリよ!」)
Lucy:SUDDENLY I FEEL A GREAT SENSE OF RELIEF!
(ルーシー「急に救われたような気持ち!」)
1970年代~「スヌーピーに負けない!個性的なキャラクターたちの登場」
KADOKAWA / メディアファクトリー
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1960年代の終わりあたりからますます調子に乗りはじめたスヌーピー、その強さに負けないよう作者であるシュルツ氏は、1960年代後半あたりに登場しスヌーピーに懐いていた鳥を「ウッドストック」と名付け、新キャラクターとしてマーシーを登場させます。彼女とペパーミント・パティは実に鮮やかなタッグを見せてくれて「ピーナッツ」はよりパワーアップ。
キャラクターの線も太く濃く、絵柄が一番どっしりしてるこの時代に多くの話がアニメ化したように、1970年代はどこを読んでも面白いエピソードばかりです。
お気に入りのことば
Snoopy:In my life I have known a lot of
(スヌーピー「生涯において私は多くの」)
Lucy:BY GOLLY YOU’D BETTER WATCH WHAT YOU WRITE IN THAT AUTOBIOGRAPHY!
(ルーシー「いいこと 自叙伝に書くことは気をつけたほうがいいわよ!」)
Lucy:IF YOU SAY ANYTHING BAD ABOUT ME, I’LL KICK YOUR DOG DISH!
(ルーシー「私のことちょっとでも悪く言ったらあなたのお皿をけっとばすわよ!」)
Snoopy:weird characters.
(スヌーピー「奇妙な人物に出会った。」)
1980年代~「ついにコマ割りも自由に、絵はより味わい深く」
KADOKAWA (2015-10-24)
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1980年代は個々のエピソードよりも台詞により深みが出ています。
もちろんそれ以前にも人生哲学めいた言葉をキャラクターたちは口にしていたのですが、人生の後半に口にするかのような発言をより連発します。定説として作者のシュルツが心臓の手術をしたことがコミックの雰囲気を変えたとも。
個人的な印象としてそのためか少し話のパンチが弱いと思うときもあり、1980年代後半からは二枚絵や三枚絵になって動的な漫画というよりもイラストに近くなります。
お気に入りのことば
Sally::I’M GOING TO BE IN A DEBATE…
(サリー「私、討論会に出るのよ……」)
Sally:THESE ARE SOME PREPARING SO I’LL BE READY
(サリー「大丈夫なように、メモとってるの」)
Sally:”SO? WHO CARES? WHY NOT? FORGET IT!! OH,YEAH? DROP DEAD!”
(サリー「”だからどうなの? 関係ないでしょ? どうしていけないの? やめとけば!! へえ、そう? 死んじまえ!”」)
Charlie Brown:I THINK YOU’RE READY…
(チャーリーブラウン「大丈夫なようだね……」)
1990年代~「震える線にいつもと違う展開、そして最終回」
KADOKAWA (2015-11-25)
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ここまで追ってきた読者なら一読して感覚が違うなと思うであろう1990年代、一因としてチャーリーブラウンがスヌーピーを求める展開が多いこと、つまり彼とスヌーピーとの距離感が変っていることがあげられます。
その姿は安らかに犬と過ごす老後といった雰囲気。様々な新キャラクターが登場し、ピーナッツ漫画のお約束も次々に破られ、チャーリー・ブラウンが普通にモテる展開もあるのに何故か読んでいると寂しくなります。この巻で最終回を迎えるといった知識も影響しているのかもしれませんが、あの口やかましいルーシーですら穏やかな台詞を口にするのも寂しさに拍車をかけます。
筆力がなくなっていることによりキャラクターの輪郭線は震え、それゆえにかえって一枚のイラストとして唯一無二の境地に達しています。特に最終回の一枚絵は涙が出るほど感動しました。
お気に入りのことば
Charlie Brown:I THINK IT’S A REAL SHAME THAT ANIMALS CAN’T TALK
(チャーリーブラウン「動物は喋れないなんてほんとに残念だと思うよ。」)
Charlie Brown:IMAGINE ALL OF THE WONDERFUL THINGS YOU COULD TELL ME IF YOU COULD TALK…
(チャーリーブラウン「喋れたら、キミがどんなにたくさんの素敵なことをボクに語ってくれるか、想像してみろよ……」
Snoopy:HUH?
(スヌーピー「へ?」)
↓最近発売されたこの本は流行のグッズで釣って中身はスカスカのムック本ではなく、12月公開の映画に向けて一から「ピーナッツ」の解説をしていく気合の入ったもの。谷川俊太郎の詩や「「なぜ企業はスヌーピーを広告に使うか」など他では見られない文章&貴重なヴィンテージグッズの写真も多数掲載されており値段も安いのでオススメ!
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