いま「犬マユゲでいこう」を読むと。
2018/03/04
書店をブラブラしていたら、見たことのあるタイトルが。
石塚2祐子『犬マユゲでいこう~イヌマユ オブ アヴェルス~』
「まだ続いてるのかー!」と感動し購入することに。
結果:見事にハマった。
Vジャンプの読者以外はいったい何に感動しているのかわからないと思うので説明すると、
この漫画は 1994年8月号(そろそろ20年)の「月刊Vジャンプ」から連載が始まった作品。
内容は作者が最近プレイしているゲームの解説や攻略法を魅力的なイラストとともに紹介していくというスタイル……。
と、ここまでが公式的な説明で
実際は、ゲーム特集と言いながら著者の溢れ出る妄想力が元のゲーム内容をはるか彼方へと追いやり、独自のプレイスタイルが結果的に誰も思いつかない視点を教えてくれることにその面白さがある。
最新の作品を取り上げて欲しい編集部の意見をバッサリ切り捨てて、オールドゲームに精を出す作者の姿はVジャンプのなかにおいても異色で、プレステ2ではなくセガサターンを中古購入するような当時のマセガキボーイ(己を含む)に感銘を与えていた。
このマニアックな魅力ゆえ一時期、
『犬マユゲでいこう』の1巻と2巻はレア本になり古書価格3000~5000円で取り引きされていたほど。(2018年追記:まだ続いています)
月刊6頁の連載なので単行本がでるのは約三年。
読みたくても読めないジレンマのなか年齢的に「Vジャンプ」を読まなくなり、いつしか「犬マユゲ」の存在も忘れていった・・・ここまでを文脈として2014年(本の刊行は2013年)の今に戻ってくる。
今回の新刊は2010年~2013年の連載のまとめ(ちなみに自分が読んでたときは2002年から2004年だった)
一読してその軸のぶれなさに安心する。もちろん担当は変わり、平社員だったイヨクは編集長に就任し(マジかよ)、取り上げるゲームの機種もPSPや任天堂DSへと変化していたが?根底に流れる「犬マユ魂」は不変だった。
紹介する作品はPSP版「俺の屍を越えてゆけ」やDS「ファイアーエムブレム覚醒」などオールドゲームと微妙に繋がりを持たせつつ、SFCの「バウンティ・ソード」(知らない)を21世紀に突然開封し遊び始め、
ゼルダ25周年特集で最新作ではなく横スクロールの「リンクの冒険」を攻略特集する。
かと思えば「ガールズRPGシンデレラライフ」「NARUTO疾風伝~ナルティメットストーム~」を取り上げるなど、その幅広いゲームに対する欲求に「昔は良かった」などというノスタルジーは皆無。実に軽やかで気持ちが良い。
読後感想:一つのことを続けていくことの凄さに感心するとともに「?久しぶりにゲームやりたくなってきた」と部屋で独り言を言った後、何だか勝手に嬉しくなってしまった。
集英社
売り上げランキング: 239776
【関連記事】
関連記事
-
-
~これからは家で留学の時代!?~重田勝介著『ネットで学ぶ世界の大学MOOC入門』(実業之日本社)評
「あなたはMOOC(ムーク)を知っているだろうか?」 …
-
-
上野千鶴子に映画の見方を学ぶ『映画から見える世界―観なくても楽しめる、ちづこ流シネマガイド』感想
数年前に新宿シネマカリテで、レオス・カラックス監督の映画『ホーリーモーターズ』を …
-
-
【書評】人生の圧倒的な肯定感に満ちた本『徹子と淀川おじさん人生おもしろ談義』
とにかく元気に二人は話す。 「徹子の部屋」に出演した淀川長治と番組パーソナリティ …
-
-
【未掲載書評】斉藤守彦著『映画宣伝ミラクルワールド』(洋泉社)~観客に魔術をかけた者たち~
お前のは書評じゃなくてレジュメだと言われて、確かに詰め込みすぎ感はあるということ …
-
-
名言も豊富!大笑い読書漫画、『バーナード嬢曰く。』感想
本についての漫画や小説は面白い。物語形式でその本についての思い入れを語ってくれる …
-
-
『怪談短歌入門』書評~怖さには構造がある、短歌篇~
Contents0.0.1 1 陰翳礼讃、隠すことの美学2 定型詩には、隠すこ …
-
-
【書評】青ペン効果。信じるか信じないかは・・・『頭がよくなる 青ペン書きなぐり勉強法』(相川 秀希・KADOKAWA/中経出版)
『頭がよくなる 青ペン書きなぐり勉強法』(相川 秀希・KADOKAWA/中経出版 …
-
-
【書評】読んで燃えろ、見て燃えろ『激アツ!男の友情映画100』(洋泉社・映画秘宝EX)
【友人として、相手を思い、また裏切らぬ真心】とは「新明解国語事典第6版」に記載さ …
-
-
pha著『ニートの歩き方』(技術評論社)評~走らない生き方~
前回の記事『無業社会』の書評で働いてないことへの抑圧を軽減することも重要である。 …
-
-
日本酒の本を選ぶなら「はせがわ酒店」監修の『日本酒事典』を読もう!
このあいだの山同敦子『めざせ!日本酒の達人』(ちくま新書)の評で自分が何を言って …