日本酒の本を選ぶなら「はせがわ酒店」監修の『日本酒事典』を読もう!
2016/05/29
このあいだの山同敦子『めざせ!日本酒の達人』(ちくま新書)の評で自分が何を言ってたかというと、
「日本酒と食事の食べ合わせ」が載ってて凄い、巻末に掲載されている 「注目したい気鋭の造り手55人」が気合入りすぎててヤバい。つまり、こういう知識をもとに飲む前に日本酒の味の予測が立てられればお酒覚える率が高まって、より日本酒の道がどんどん開けるというのが要点だったわけです。
そこで「日本酒の基礎を一つずつ著者自らの言葉で語っているので、変にカラー満載の本よりもこれから日本酒を嗜むうえで最強のガイドとなっている」
と言ったんですが、このたび真っ当な通読できる「カラーの日本酒」の本が見つかりまして、それがこれ『日本酒事典』(はせがわ酒店店主社長・長谷川浩一監修)
東京駅地下・グランスタにある「はせがわ酒店」という、週末ともなるとバカスカと日本酒が買われる光景が楽しい今一番有名な酒屋。(亀戸や表参道の店も有名、いくつか店舗あり)
自分の家の近くで美味しい酒屋が見つかればそれに越したことはないですが、ここの酒屋が凄いのは良い酒が必ずあるという絶対の信頼感。サイトには「今日、何が入荷したか?」等も細かく掲載されており、なおかつ適正価格、保存もバッチリ。お店の横には日本酒Barも併設していたりと、用がなくてもふらっと立ち寄ってしまうお店なのです。
『日本酒事典』はそこの「はせがわ酒店」の社長が監修しているため、もうとにかく実用性に溢れてて面白い。
日本酒に関する基礎知識の説明は特別ほかの日本酒本と違いがあるわけではないけれど(ただし紙面デザインが良いのでわかりやすい)好事家の視点だけではなく販売者の視点が入っている点が画期的。なおかつ最新の情報が非常に充実しているから雑誌感覚で楽しめる。
例えば、香港では吟醸酒が好まれるといった「海外で飲まれる日本酒」情報から、日本酒の詳しい保存方法、「古酒」の作り方、余った日本酒の使い方など流石は酒のプロフェッショナルという感じ。
そして使えるのがこの本のメインである「都道府県別日本酒カタログ」
別格に美味い酒は一ページで特集していて「美味しい酒」を見つけたい欲望を叶えてくれる正直な構成と、欄外に設置されたその酒に関するコラムの面白さは他の日本酒本とは一線を画している。
例えば、自分が好きな安くて色んな食事にもあってバカバカ飲める高知県の純米酒「美丈夫」についてはこんな感じ。(ここで紹介しているのは純米大吟醸だけども)
「控えめながらも気品のあるフルーティな香りと、やわらかい口当たり、爽やかな酸味が絶妙だ(中略)杉の日本三大美林として知られる「千本山」などの山々から下流に伝わってきた水は体にしみ通るような軟水。(中略)のどにつかえずなめらかな飲み心地と、控えめな香りの「美丈夫」は食中酒として料理とよく合う。毎日晩酌で飲めるような飽きない酒を目指している」
「確かに」と頷くしかない的確な味の解説と背景知識の補強。こんなのが47都道府県ごとにあるんだからたまらない(旅行先でどんな日本酒があるのかにも使える!)
しかも、実はまだあまり有名でないこっそり注目されている酒蔵もさらっと掲載されててそこら辺も宝探し感があって面白い。
この本の値段は「1620円」
良い日本酒720ML一本を我慢すれば買えるこの本でより美味しい日本酒を求め、高値に踊らされない日本酒ブームを上手い具合に乗っていこうじゃありませんか!
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