トレーダー分岐点

新刊本や新作映画、アニメの感想などを書き続けるサイト|トレーダー分岐点

*

【書評】キャロル×ヤンソン×ホムホムの『スナーク狩り』(集英社)はプレゼントに最高の一冊

      2015/11/27

「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロル原作!

「ムーミン」の作家トーベ・ヤンソンが挿絵!

歌人の穂村弘が翻訳!

というこの本が1200円(税抜)それだけでもういいじゃないか、買おうぜ!というお話だけど、言葉の響きを楽しむ翻訳絵本としても良く出来ているのでそれも含めてオススメである。

伝説の生き物「スナーク」を捕まえるため旅に出た一行であったが、噂が噂を呼びどんどん変質していく「スナーク」に翻弄されるという『スナーク狩り』には一応のあらすじはあるものの、もともとがナンセンス詩なので物語としては非常にわかりづらい。

でもキャロル自身はある種子供向けというようにも考えていたようで、今回の本はそれを意識しているのか言葉遊び絵本のようにリズムが良い翻訳である。それもそのはず、ここに出てくる全ての訳文が5と7の音で構成されているのだ。

翻訳の困難さを「スナーク狩り」の辛さを味わうようだったという穂村弘は、5と7の音を任意の回数繰り返す日本語の長歌形式を借りて原文を訳している。例えば

(原文)

THEY sought it with thimbles, they sought it with care;
 They pursued it with forks and hope;
 They threatened its life with a railway-share;
 They charmed it with smiles and soap.

(訳文)

細心の注意をもって指貫で皆は探した

ぴかぴかのフォークと希望で駆り立てた

鉄道株で脅かした笑みとシャボンで金縛りした、

このように、文章が5音・7音という風に区切れるので、読んでいて非常に心地が良い。

ベルマンが買った海図にゃ海ばかり(5・7・5)
かけらも陸地は載ってない(7<8>・5)
乗組員はご満悦(7・5)
俺たちみんなにわかる海図だ(7<8>・7)

と内容がよく判らなくても、ナンセンスな原文の雰囲気が伝わってきて実際に口ずさみたいフレーズが頻出する。なので子供に朗読してあげるとけっこう喜ばれるのは間違いなし(間違いなかった)

なんの役に立つのよ。絵もない。会話もない本なんて」とはアリスの言葉だけれども、『スナーク狩り』はちゃんと絵もあり会話もある本ということで、何かプレゼントに本を上げたいなーと思っている人には非常にオススメである。

【一番のお気に入りフレーズ】

へっぽこな海図のなかにはへんてこな島や岬が書いてある

でもありがたや我々の尊敬すべき船長の海図は

なんて素晴らしいすみからすみまでまっしろしろだ

 

【関連記事】

 - 書評,

スポンサーリンク

スポンサーリンク

  関連記事

山同敦子『めざせ!日本酒の達人』書評~基礎ほど熱いものはない~

Contents1 飲んだ酒を思い出せない!2 予測を立てるための知識3 「辛口 …

見る人の記憶をこじ開ける写真集『映画館』(中馬聰、リトル・モア)

あまり映画を見ない家族のもとで育ったので、映画を本格的に見始めた時期は人より遅い …

施川ユウキ『鬱ごはん』を読んで、新鋭短歌シリーズ『つむじ風、ここにあります』(木下龍也)に至る

ちゃんと記事を書こう、とバタバタしながらどうにも書き始められないまま2月後半。 …

【書評】おそるべきめいちょ『ニュースをネットで読むと「バカ」になる ソーシャルメディア時代のジャーナリズム論』(上杉 隆著、KKベストセラーズ刊)

様々な歴史的な経緯を経て、ネットには大手メディアが報じない真実があるというのは嘘 …

日本酒の本を選ぶなら「はせがわ酒店」監修の『日本酒事典』を読もう!

このあいだの山同敦子『めざせ!日本酒の達人』(ちくま新書)の評で自分が何を言って …

書籍『猫シネマ』
『ねこシネマ』を読んでロシア映画『こねこ』を見て悶えて日が暮れて

なにやら猫がブームである。 書店に行けば猫関連の本で棚は埋め尽くされている。自分 …

【書評】初々しい言葉の連なり『前田敦子の映画手帳』(前田敦子・朝日新聞出版)

映画を見ないとその日は落ち着かないくらい、いま映画にはまっています。一日に何本も …

映画で読み解く都市伝説
貞子は実在した!?『映画で読み解く都市伝説』(ASIOS・洋泉社刊)

呪い、陰謀、超能力、アポロ計画、UFO、超古代文明……。 これらの題材は映画とい …

映画への畏怖を叩き込まれる名著『淀川長治 —カムバック、映画の語り部』(河出書房新社)感想

最近は映画について書くことに悩んでいて、単体の映画について善し悪しを言うよりも。 …

寝る前にアントニオ・タブッキ『夢の中の夢』(岩波文庫)を読む

読書日記をつけてみることにしました。まずは一冊目として タブッキ『夢の中の夢』に …