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なぜ有名な作家は机の前に座ることを推奨するかの私的解釈

      2015/11/26

短文得意、長文苦手

そもそも集中力がない、眠いし、短歌詠んでるかと思えば映画も見たり、ああ・・・あれ読まなきゃこれも読まなきゃなんて考えて、あっちゃこっちゃいったりきたりという大学卒業しての2年間だった。

正確に言えば3年、卒業論文を書いて以降だったと思うが薄々感づいていたことに自分は論旨を立てて、進めていく長文が苦手という事実がある。

言葉ではうまく説明できる、でも文章ではどうすれば?と考えてきて、ようやくここで本当に当たりまえの結論に達した。

書くことは訓練。

 

喋りも訓練してきたじゃないか、でも文章は?

喋りの方が理解できると言われて、そういうもんかと思っていたが、よくよく考えれば人前で本についての要旨を説明したり、知らない映画について興味を持ってもらうためにはどうすれば?ということを意識してここ数年は喋るようにしていた。

それに対して書くことはどうだろう?

義務教育において日本語を使うことの多さを考えても日本語で書くということは意識せずとも出来てしまう。けれど英語を勉強したといっても実際は英語に意識して接する総量が少ないように、意識して自分の力で文章を書いてみてくださいと言った時スラスラと書ける人がどれぐらい存在するか。

書き写す、および誰かに押し付けられたものではなく、内的な感情を制御して説明したい、または新たな何かを生み出すような、そんな書き方をしてみたいが書けないという人のほうが多いのではないか。

 

書くことは「集中力」ではない

自分もそうだった、そしてそれができないのは集中力が足りないからだと思っていた。

おそらくそれは違う。集中力といった時、喋ることにだってそれは必要とされているからだ。

明確に違うのは喋りは反応がすぐに返ってくる、リターンが「わかりやすい」ということである。反応が芳しくないとき、別のやり方で試したり様々なことが対面だと瞬時に試せる、そしてそれが成功した時の喜びはたまらないものがある(説明した映画を見てくれた、など)

文章はそれがわかりづらい。

 

文章は残る。そして忍耐

しかし、とりあえず刻印されたものは残る。長い長い年月がかかって読む人がいるかもしれない、一度も読まれないかもしれない。文章を書くとはそういう時間に耐えることだ、どこまでもやっていることに価値が求められる時間に価値がない時間を耐えるしかない。

おそらく巷にある文章系の本も似たようなことは言っている。しかし、それは人生相談本を読みふけり正解例だけを体験せずに頭で知っているだけのことだ。

無から何かを生み出し、それが無駄かも知れない空虚に耐えることの苦しさは誰からも教えてもらえない。

 

作家は「座れ」という 、「座れ」とは?

だから作家(例えばカポーティやチャンドラー)が、まず時間を決めて座ること、それこそが書くことの一歩だと身体性に寄せ付けて発言しているのは面白い。身体性、これも手垢にまみれた言葉だ、書くことの訓練という言い方だって手垢にまみれすぎている。だけど自分は「座る」ということをこう解釈する、何があっても座るということに

一つの映画についての感想を何時間もかけて全然出来ないとする、「ネット時代、ライターはスピード勝負と言われた」、映画は見た数勝負のところもあるし名著もたくさんある、まだ知らない分析、まだ知らない人々、こんなつまらない文章を書くのだったら、それらに接した方が良いのではないか。だから人は席を立つ、座るということは思った以上に難しい。

席を立たないことはわかりやすい価値のある行動に移行しないということ、退路を断つことこそ「座る」ということなんだと今は思う。何物でもない文章を有限な時間を使って試行錯誤する。人気の記事、早く書く方法、食べていく方法はおそらくその次だ。

そうした効率をわきに追いやり、合理的な知識を排除する、ほかの事がおろそかになるが、しかし書く。そして終りに至り、書く前に想像もできなかった結論に自分が導かれたことを知ること、それこそが何者でもない時間を耐えた自分へのとりあえずのご褒美なのだ。あとはこの文章を読者が開くのをただじっと待つだけだ。

 

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