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「映画の魔」とトラウマアニメ『花子さんがきた!!』

      2015/11/26

高橋洋の『映画の魔』を読んでいたら、こんな記述があった。

恐怖はショックを介して見るものに取り憑き、否応なく後に引きずる。見る前と見る以前の認識を変更する。「ああ、怖かった」では済まないのである。『サイコ』公開後、アメリカではモーテルの利用客が減少したというのが本当かどうか知らないが、ついそういうことを言いたくなるほど、『サイコ』が与えた衝撃は大きかったということなのだ。そして、見た以上は家に帰ってからも恐怖が続く決定的な存在こそが幽霊であったことは言うまでもない。(p22より)

そのあと議論は幽霊というのは見てしまったら最後「ああ怖かった」とはとても言えない存在だし、「ああ怖かった」と言えるのはビックリだろうということで映像において幽霊を映すとはどういうことか?に話が及ぶのだが、ここで言われる「引きずってしまうほど」の映像は自分にとって何かを考えたとき、むくむくと記憶の闇から浮かんできたものがある。

それは『学校のコワイうわさ 花子さんが来た!!』というアニメ。

1994年あたりにフジテレビの『ポンキッキーズ』の1コーナーで放送されていた時間にして3、4分のアニメなのだが、「ホワホワホワホワ」という不吉な主題歌に不気味な絵、救いようのないラストもあって朝に放送されていたにもかかわらず本当に怖かった。

ここで体験した恐怖は今でも自分の行動に染み付いてしまっている。

s_花子さん

今回、まあ大人になったから大丈夫だろうと久しぶりに全三巻を見直してみた。

結論:全然駄目だった(笑)

「来たら助けてくれるよ」と主題歌で宣誓しておいて、花子さんはたまに来ない。その結果「幽霊でお困りの方は花子さんへ」とか言ってるのに人はバンバン死ぬ。

大人になって思う。

「ああ、来たら助けてくれるかもしれないが

来るとは言ってないね。確かに

そんな「花子さんが来た!!」から花子さんが来ない震えあがるエピソードを5つ、それを見た当時の自分がどうなってしまったのかとともに。

第3話「死にたくなる団地」

死にたくなる団地

とある団地には、午後四時に見てしまうと死んでしまう窓があるという。ようこちゃんは下校途中、何気なくそこを見るよう友人に言ってしまい実際にその友人は「何か」を見てしまう。

次の日の朝、学校で先生は言う「○○くんは死にました」と。

薄暗い陰鬱な空に不吉な音楽、その後クラスメイトがもう一人死んだあとにようこちゃんも幽霊に誘われ団地の屋上へ、そこまでピンチになってようやく花子さんが助けにきてくれた!めでたし、めでたし・・・。

まったく、めでたくない。花子さんへの不信感が芽生える。

(これを見てどうなったか)

団地という存在に恐怖を抱き、団地に住んでいる友達の家に遊びに行けなくなった。

いまも団地を通るときは少し怖い。

 

第8話「さっちゃんのうわさ」

s_さっちゃん

「さっちゃん」という大きな鎌を持った幽霊のうわさ話をすると、その夜、話を聞いた人間の前に現れ、鎌で手足を切り取って殺してしまうと言う。それを止めるには一つ。何でもいいから「バナナ」の絵を書いて寝床に置いておくことであった。

学校でその噂をしていた生徒たちだったが、先生がやってきて話は終わる、その夜この話をしたみんなは早速バナナの絵を書くことに。だが、ただ一人マユミちゃんだけはバナナの絵を書くのを忘れてしまったのだ・・・。

その夜さっちゃんは現れてしまう・・・しゃきん、しゃきんという止まらない金属の音、大きな鎌でさすりさすりと布団から出た足首を撫でるクローズアップ・・・。

しかし突然の叫び声とともに退散するさっちゃん。マユミちゃんの机にはお母さんがおやつに、と置いていたバナナがあったのだ。めでたし、めでたし、

とはならない。あえて言わないが、最悪の結末が物語の終わりには待っている。

(これを見てどうなったか)

これこそ自分の人生で衝撃を受けてしまった最初の映像、寝床に現れるさっちゃんの姿はあまりに怖すぎて記憶が飛んだ記憶がある。この話の影響力は大きく今でも自分はブランケットや布団なしでは寝ることが出来ない。

当時これを見た直後には靴下を履いて寝るようになり、夏でも羽毛布団をかけて足首を完全防備していた。もちろんバナナの絵は書き、寝床に数年以上は飾っておいた。

 

第10話「怪人トンカラトン」

s_怪人トンカラトン1

日本刀を持ち全身に包帯を巻いた姿で、「トン、トン、トンカラ、トン」と歌いながら自転車に乗って現れる怪人トンカラトン。出会って言う言葉は「トンカラトンと言え」。そのとおりにすれば何事もなく去っていくが、言わないと刀で斬り殺される。

この話の主人公は、実際にこの怪人トンカラトンに遭遇して生き延びたにもかかわらず、トンカラトンが実在することを証明しようと出会った場所で「トンカラトーン!」と大きな声で叫んでしまう。結果、「言え」と言っていない時に言えと言ってはいないとトンカラトンに斬殺され、その主人公も包帯に巻かれトンカラトンになってしまうという終わり。

もちろん花子さんは助けにこない。

(これを見てどうなったか)

「花子さん」トラウマ話の一本。「トンカラトン」という名前は自分のなかで先ほどの「さっちゃん」とともに口にしてはならない言葉となった。

年月がしばらく経って、その言葉を忘れたとき、太宰治の短編「トカトントン」という物語を読んで「トンカラトン」という言葉を思い出してしまい授業中軽い恐慌状態に陥ることとなる。

 

第14話「赤い靴の女の子」

s_赤い靴の女の子

ある町では、次々と赤い靴を履いた女の子がいなくなるという事件が続いていた。

その町に住むゆきえちゃんがある日赤い靴を履いて公園を通りかかったところ、園内にあった銅像が実体化し「赤い靴をちょうだい」と彼女にねだってきた。それは出来ないと拒否したゆきえちゃんに対して銅像の女の子は鬼のような形相に変身、ゆきえちゃんを追いかけまわし赤い靴を奪うと彼女を空へと連れ去ってしまう。

公園内には大きな悲鳴が響きわたる。

「きっと彼女はさびしかったんだわ」と花子さんが唐突に出てきて終わり。

(これを見てどうなったか)

絵柄が可愛いときには「花子さん」は来てくれるというジンクスを崩した作品。

ただ自分にとっての後遺症は少なく赤い靴を履いている人を見ると、ちょっとコワくなったぐらい。おそらく男だから関係ねえやみたいな論理で大丈夫だったのだと思われる。

 

第18話「人食いランドセル」

s_人食いランドセル2

姉の使っていたお古のランドセルが嫌いな女の子が主人公、ある日知らないおじさんが新品のランドセルを女の子にあげると言って、女の子は喜んでもらいます。

で、それが実は人食いランドセルで女の子は食べられて終わり。救いはありません。

花子さんが出てきて「知らない人から物をもらってはいけないよ」と教訓を授けます。

(これを見てどうなったか)

自分のランドセルをずたずたに扱っていたが、

これを見て大切に扱うようになった。

つまり、珍しく良い結果に。

 

終わりに

なにがこの作品をこんなに怖くしているのかを改めて考えるなら、やはり不気味すぎる音楽に、ナレーションが伊武雅刀という絶妙の配置、なおかつ初期設定の「学校であった怖いウワサ」なのに学校という舞台が関係なくなったり、明らかに適当に作ったやさぐれ感覚もあいまった結果、画面に「よくわからないもの」を召喚してしまったのではないかと思われる。

もしかしたら自分の恐怖史なだけで、このまとめを読んで興味を持ち実際に見たけどあんまり怖くなかったという人もいるかもしれません。

それでも「さっちゃんのうわさ」だけは、かなりの人が大人になって見ても嫌な感じを受けると思われるので、あえて結末は書きませんでした。

見てね。

 

 

 

 

 

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 - まとめ, アニメ

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