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噂のマインドファック映画『ピエロがお前を嘲笑う』を見てきた感想

      2015/11/26

『アイデンティティー』『シックス・センス』『ファイト・クラブ』など、最後に「あっ!」と世界がひっくり返る感覚を味わえる映画群を「マインドファック・ムービー」という。

今回見てきたドイツ映画『ピエロがお前を嘲笑う』(英題:『WHO AM I – NO SYSTEM IS SAFE』、監督:バラン・ボー・オダー)もその触れ込みで宣伝していた。

それにしてもマインド・ファックって凄いネーミングである。

まるで「調教セック(自主規制)」

ピエロがお前を嘲笑う

  • 「106分間、あなたが目にしたものは果たして真実か?」
  • 「騙された!」
  • 「この映画に仕掛けられたトリックは100%見破れない」

と、ポスターに書かれている煽り文句の数々、そんなにハードル上げて大丈夫かと心配になってしまうが、じゃあ存分に騙されてやろうと劇場へ。

 

(騙された系映画という触れ込みなので先入観を持ちたくない人は読まないで映画館へ)

 

あらすじ

一人の青年が警察に出頭してきたところから映画は始まる。

彼の名はベンヤミン(トム・シリング)、そして自分こそ世間を騒がせたハッキング事件を起こした「CLAY」(=Clowns Laugh at You=「ピエロがお前を嘲笑う」)のメンバーだと言う。

彼が語るのは衝撃の事実だった。プログラミングを独自に学びつつピザ屋のバイトで生活をするベンヤミンは、あるとき幼馴染のマリ(ハンナー・ヘルツシュプルンク)という女性のために試験の解答を盗もうとして失敗する。その罰として与えられた奉仕活動、そこで彼はマックス(エリアス・ムバレク)と運命の出会いを果たす。

夢想家であるマックスに誘われ、彼の仲間とともに金融システムや製薬会社をハッキングしていくベンヤミンは、冴えなかった自分の世界が徐々に広がっていくのを感じていた。そして「安全なプログラムは存在しない」が合言葉の伝説的ハッカー「Mr.X」に認めてもらおうと、ついに連邦捜査局に忍び込む計画を立てる。

しかしそのことが彼を窮地に追い込んでいく・・・。

 

感想(ネタバレなし)

例えば「シックス・センス」「アイデンティティー」といった映画を見ていない人が多い段階で、その「オチ」をぺらぺらと喋ることは駄目だと思う。

けれど、この映画で「騙されたか」「騙されなかったか」を判定することは、とりあえずフェアだと自分の倫理で勝手に納得して言わせてもらうならば

出てくる真相を単純な筋とともになぞっていく展開だから「ふーん」「へー」という感想。というわけで「マインドファック」感はほとんどなかった。

だから凄い期待して劇場へ行くのは辞めておいたほうが良い。

この映画の面白さはそこら辺のどんでん返しではなく、ハッカーは世間一般の価値観に準拠せず、自身の技術向上や仲間内での箔をつけるため困難へ挑むといった彼らの思想を描いた点にあるからだ。

ただし、パーティーやクラブでの感覚を解放するお決まりの表現はまことに寒い。もっとハッカーのふざけた格好良さはあるのに、主人公の成長する過程やヒーローをめぐるユーモア表現はまったく面白くない。『ファイト・クラブ』のように人を犯罪に駆り立ててしまう危険な情念もない物語の真面目さには映画宣伝がハードルを上げすぎたという思いが強く残る。

 

感想(ネタバレ中)

この作品の真相が先行するマインド・ファック・ムービーから大きな影響を受けたことは伝わる(たとえば『ファイト・クラブ』や『アイデンティティー』など)

だが「ここまで説明しないといけないものなのか」と驚くぐらい終わりは冗長。最近のサスペンス映画特有の早いテンポで物語は展開していたにも関わらず、最後に至って長々と真相を語り、観客に「それってどういうこと!?」と考えさせる余地を奪ってしまったのは単純にもったいなく思う。

さらに「どんでん返し」映画の系譜として脈々と引き継がれている、こうだと思っていた人物が実は○○だったという方向性をすることで「真相」を誤認させる方向性もあったはずなのに、いくらなんでも登場人物たちに魅力がなさすぎた。

つまり、この作品が本当にマインド・ファックムービーなのかどうかその枠組み自体が疑わしい。これは宣伝会社が仕掛けた罠かもしれないのだ。

実際に映画を鑑賞した人は英語版のタイトルをネットで検索して米国宣伝のポスターを見てみよう。ガッツリと書いてあるネタバレにきっと笑うと思う。だから騙されるも、騙されないも、この土台自体があまりに不適切な枠組みなので、さっさと土台を蹴りとばし単純に面白いか面白くないかで判断すべき映画だ。土台に乗ってあげる人たちは優しすぎである。

 

*2015年に見た映画の中ではインド映画『女神は二度微笑む』が、思わず劇場で「あっ!」と声が漏れてしまった作品。少し反則技を使ってはいるものの、最後の仕掛けだけに満足していない作り手の心意気が見える力強い映画だった。

 

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 - 映画評

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