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映画+散歩+珈琲=『東京映画館 映画とコーヒーのある一日』(キネマ旬報社)感想

      2015/11/26

映画館のあとは大体が某チェーン店で牛丼を食べ、映画と映画の空いた時間にはドトールで珈琲を飲むような生活習慣なので、キネマ旬報社から発売された『東京映画館 映画とコーヒーのある一日』は、「似たようなことをしてるのにこの差は一体・・・」と書かれているオシャレな情報と普段の自分がしている映画鑑賞とのズレが読んでいて面白かった。

 

この本が良いのは、映画館の周囲にある魅力的な喫茶店が多数掲載されていること。特に怠惰によって映画の前後に行くところが固定化してしまっている自分のような人間には、行きたい店が増えてたいへん困る(金がないから)

作りとしては「日本映画を徹底サポートする テアトル新宿」など各映画館の特色をズバッと、「東京映画館」という書名だけど横浜のシネマ・ジャック&ベティや柏のキネマ旬報シアターも紹介し、最新のTOHOシネマズ新宿やオープンしたばかりのユジク阿佐ヶ谷まで網羅している。

個人的に「わかってるわあ」と思ったのはヒューマントラストシネマ渋谷のカクテルにも言及していること。美味しいのよ、ここの軽食(数回しか食べてないけども!)

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ヒューマントラストシネマ渋谷のフードメニュー(公式サイトより引用)

ということで雑誌の単発企画ならともかく、書籍としてはありそうでなかった本なのだ。

あとは写真。自分の好きな池袋の新文芸坐は上映予定のチラシが長いロビーにずらっと並べられているのが特徴的な映画館だが、ちゃんとそのチラシのズラッと感が伝わってくる。他の映画館も実に魅力的に撮影されていて、各支配人の言葉とともにまだ行ったことのない映画館へ行きたくなること間違いなし。

巻末には紹介したお店の地図もあるので銀座、渋谷や新宿など迷いやすい街のガイド本にもぴったり。これはあれだ・・・映画と飯verもほしい(笑)

記事の間にある、ライムスター宇多丸や女優の武田梨奈など芸能人が語る自身と映画との関係も出没地域がわかって「あるある」で面白い。最後にその質問を紹介がてらせっかくなので自分も答えてみた。

 

・良く足を運ぶ、お気に入りの映画館はどこですか

池袋の「新文芸坐」

・その映画館で見た、思い出の作品を教えてください。

アニメスタイルオールナイトで見た「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」

・その作品にまつわるエピソードを教えてください。

「時をかける少女」目当て、「ユンカース・カム・ヒア」をなかなか見られない作品というミーハー目的で行ったら最後に上映された「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」で頭脳をガツンと(笑)。始まる前からあった会場の異様な熱量に呑まれ、呆けた表情で朝の池袋に放り出され、友人と高田馬場の喫茶店で喋りまくって外に出たらクソ熱いお昼になっていたのを思い出します。

・映画館ではどんなふうに過ごしますか。

チラシの収集+缶コーヒーを一気飲み。

・あなたが理想とする映画と珈琲のある一日を教えてください。

深夜のオールナイトが終わってすぐ帰れる場所に住んで、劇場で出会った人にコーヒーをふるまいたい。

【関連記事】

・映画館はつらいよ『映画館のつくり方』(映画芸術編集部)

・ゆきゆきて80年代、斉藤守彦『80年代映画館物語』(洋泉社)書評

・【書評】初々しい言葉の連なり『前田敦子の映画手帳』(前田敦子・朝日新聞出版)

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