アレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』、ただ言葉を垂れ流し
2015/11/27
だらだらと書く。ああ、つらい、疲労度高し。だいぶ前に新文芸坐のアレクセイ・ゲルマンオールナイトを『フルスタリョフ、車を!』目当てのミーハー精神満載で観に行った時のことを思い出す。
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それにしてもおかしい、真剣に見てたはずなのにこのオールナイトの内容を全く思い出せない。身体に防衛反応がおきると内容を消却するという逸話はやはり本当なのかもしれない。それに比べれば『神々のたそがれ』はわけのわからないことが目の前で展開されたことを覚えている点でマシなのだ。多分
開始二十分ぐらいで何が起こっているのかわからずに寝た。おそらく次に起きたのは三十分後ぐらいだったと思うが相変わらず同じことが繰り返されていた。
白黒の画面でありながら、常に現実の感覚なんじゃないかと錯覚させる不快な湿気が画面から伝わってくる。屁や唾に臓物。清潔さという言葉はここになく、匂い立つような世界である。
ばしゃり
「とある惑星の都アルカナル。中世ルネッサンス期を予感させたこの星に地球から調査団が送り込まれた。しかし何かの反動なのか、灰色隊と呼ばれる人々は物を考える人を虐殺し、ルネッサンスは起こらなかった」
「ルネッサンスは起こらなかった」それだけで十分である、厚いパンフレットやストルガツキーの原作を読めば、よりこの映画の背景がわかり「意味」が理解できると思う。しかしとりあえずは、映画はそういう親切なことをしてくれなかった。弾かれていた。
白黒の世界で自分の知っている物が本来的な機能を果たしておらず、意味を喪失し、読み取れない物たちの充満に悩まされるも、空間の配置もよくわからないまま行き交う人々の多さ、その過剰性がとにかく面白いと最初は楽観的に見ていられる。
しかし、次々に懲りない奴らが同じことを繰り返す。次々と愚かな行為を人々に、そして主人公の男にしてくる、たとえ見る側が途中で寝てどこかの瞬間に起きたとしても、起きる出来事は変わらない、同じことの繰り返し、入れ替わり立ち代わり、権力機構が換わっても詩人は吊るされる。
観察者である男は何もしない。画面に座を占めるも、ひたすら受動的である。見ている側もその受動性に徐々に慣れ親しむ、何が起きてるのか言葉の意味や身ぶりもわからず、ぺっぺっと道端に唾を吐きながら状況の報告をする人々の下品さに慣れながら、うんざりしながら。
彼の一時の癒し、それは灰色隊に弾圧される側との語り、文明のはじまりらしき詩を作ろうと試みた男、比較的頭の良い考えを持っている売春婦との交流。だが、物語の終わりに彼らも全ていなくなり、入れ替わり立ち代わり権力の座を求める「彼ら」へついに男の怒りが降りおろされる。その場面が直接的に描かれることはない。観客に何のカタルシスも生じさせないまま、地球に戻らないことを告げた「神様」が響かせる悲しげな音色で映画は幕を閉じる。
これが遺作か、と呆然となる。
繰り返される愚かな行為に次ぐ愚かな言動に神様の苦悩を追体験できると、まとめることはできる。しかし同時に発する瞬間から空虚な言葉だとも思う、この作品を書く言葉が自分にあるのだろうかと自問する。これだけの言葉であろうはずがないから、ウンベルト・エーコはこの作品について語るときにより深く、より懸命にこの映画を理解したいと求める人の存在を示していたのだろう。第一の位相から第二の位相への読みの移行、それは地獄に再び舞い戻れとエーコは述べているかのように自分には聞こえる。膨大な物量に散らばる言葉を求めて汚濁に塗れよ、と。
けれど、しばらくは休みたい。映像がこべりつきすぎている。
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