映画館に全速前進DA!大傑作『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』
まだやることある?
とは、去年ジャンプフェスタで流れたこの映画の特報を見て思ったことだ。それぐらい原作の遊戯王の終わりは見事な完結だったので原作「その後」と言われてもどうにもピンとこなかった。
けれど、次に公開された予告編を見て「何か」あるぞと思い試写会に熱い思いを書き殴り応募しまくった。
そして
凄いもんを見てしまった。
あらすじ『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』
武藤遊戯が秘宝「千年パズル」を完成させたことにより生まれたもう一人の人格「闇遊戯」。そこから始まる数々の死闘の果てに遊戯と彼の仲間たちは闇遊戯が古代エジプトのファラオ「アテム」であることを知る。そして前世の因縁とそれぞれの道を歩み始めるため遊戯はアテムと決闘をし勝利、王の魂は安らかに冥界へと送られた。
平穏な日常を取り戻したかに見えた童実野町。しかし卒業式を間近に控えた遊戯たちの元に「藍神」と名乗る謎の転校生が現れたのをきっかけとして街では失踪事件が相次いで発生し始める。さらにその現象は童実野町だけではなく世界各地で起きていた。
一方カイバ・コーポレーションの社長・海馬瀬戸は新しいデュエルシステムを構築し、失われた千年パズルを探し求め続けていた。目的はただ一つ。再び宿敵と戦わんがため……。
映画チラシ 「遊戯王 THE DARKSIDE OF DIMENSIONS」
感想(ネタバレなし)
眩い星々のきらめき、数多の惑星、そして地球、
そして宇宙船の内部で、
千年パズルを見つめ続ける海馬
と初っ端から度肝を抜かれる『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』
でもこんなもんは序の口で、登場するたびに社長はこちらの想像を超えた行動を起こしてくれる。
だから本当社長のための「その後」の物語だった。もちろん遊戯たちがそれぞれの道へ進むお話に、藍神という少年の謎も絡んでくる、でもそれらがすべて「もう一度戦いたい」という海馬の欲望にストーリーが収束していく凄まじい剛腕展開、全場面が名場面な作画のありえなさも含めてグイグイと心を持って行かれた。
予告編で社長が三体のブルーアイズを出したときの「あっ」となるニコニコ動画由来のネタ感覚を序盤はフルに使い、ブラックマジシャンガールのあざとい可愛さや童実野高校のスカートの短さなどにニヤニヤしつつ、中盤からは過去の想像力を次々に超えてくる未知の展開に頭をぶっ叩かれ混乱&ヘブン状態。
海馬コーポレーションのロゴが出てくるたびに笑いが起き、その笑いが涙となり、最後は拍手の嵐に包まれた。こんなに一体感のある試写会は初めてだった。
たぶん週替わりのカードのためにある程度の興行は見込めると思う、けれど、、、そうではなく最近の遊戯王を知らなくても一度でも遊戯王という物語に触れた人に何が何でも見てほしい。
ラストに「遊戯王すげえ……」とため息を漏らしてほしい。
それぞれの物語に終止符を打つ「その後」の物語としてアニメ史に残る作品だと確信しているし、デュエリストのテーマが流れるとき間違いなくデュエリストであった記憶を思い出すだろう。
そして心が震えるのを抑えられないはずだ。
人間を人間のまま越えていく姿(ネタバレあり感想)
『オデッセイ』、『インターステラー』や『大決戦!超ウルトラ8兄弟』といった物語が好きなのはそこに共通する要素があるからだ。
それは人間はいつかそこへ到達できるという人間という種への信頼である。
だから『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』も同じ系譜に属することができる。なぜなら社長はついに人間を越えちゃうレベルに人間のまま到達するから。すべては王様と闘いたいがために。
もう完全に愛だよ愛!
愛ゆえに社長の妄執が人間を越えていく姿、驚異的な作画、津田健次郎氏の声、すべてが見るものの心を掴む。
藍神戦において、この次元より高位の次元である彼と彼の仲間が海馬という存在を消そうとしたとき、藍神はこの世界において海馬は「独裁者」という役割を演じているに過ぎないと笑う。
しかし!
それがどうした!と言わんばかりにカイバコーポレーションの最新テクノロジーを結集した画期的なデュエルシステムで自我を増幅させ、意思の力でこの場所に留まり高位次元の干渉をはね返す格好良さ、そしてデュエル終盤でふらふらになりながらもオベリスクを呼び出すことに成功し、方界モンスターの効果を
「モンスターではない神だ!」と打ち消しぶん殴るシーンの興奮たるや、
最高すぎて失神するかと思ったわ。
異次元デュエルにおいてはモンスターの効果はデュエリストの気力に左右されるというよくわからない召喚方法に都合の良い展開、それに脳科学に戦争論や集合的無意識と散りばめられたキーワードの胡散臭さは原作を思い出す。
そういうスケールの大きさと遊戯たちの卒業という小さな世界が映画のなかで調和しているのは、人間が別の存在となって高位の次元に行くのではなく、人間としてまだ未知の未来へと進む点が物語の基盤にあるからだろう。
ラストのラスト、権力も金も世界も手にいれた男が、テクノロジーで自らの目的のために次元を越えることに成功し、ぶすぶすと体から黒い煙を出しながらアテムのもとに進む姿、科学と財力で魔術を超えていくその姿、その偉大さにぶわあっと涙が出た。
最高だよ!社長!
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