【書評】映画秘宝とオトナアニメの究極タッグがついに聞き出した!『アニメクリエイタ―の選んだ至高の映画』(洋泉社)
2015/11/27
アニメクリエイターが映画について語る語る
複数のアニメクリエイターが映画についてガッツリ語っている本は今まで数が少なかったから『アニメクリエイタ―の選んだ至高の映画』は自分が「そうそう、こういうの読みたかったんだよ!」と待ち望んでいた企画。
さらにこれは「映画ファンは映画しか観ないし、アニメファンはアニメしか観ない。その閉塞感をなんとか打破したい」という問題意識のもと、『オトナアニメ』と『映画秘宝』(両方とも洋泉社)が初めてタッグを組んた豪華なMOOK本でもある。
ここに出てくるクリエイターも何名か述べていたが、その映画とアニメが分かれてしまっている閉塞感は作り手の側にも進行中とのお言葉。(押井守も最近文庫が出た『監督稼業めった斬り』(旧タイトル『勝つために戦え<監督編>』)で似たようなことを言っていた。(たしか)ヒッチコックの全作品を何が何でも見ろと若い人に薦めてるとか)
創作の糧となる映画を原体験として語るか、批評的に語るか
このMOOK本は原恵一・今石洋之・倉田英之などアニメーションの作り手が映画のどこを見て自身の創作への糧としているか?の一端がわかってめちゃ面白いので、映画とアニメがググッと接近する作り。
一番興味深かったのは「人生において強烈な印象を受けた映画は何か?」を彼らがどのように語るかということだった。
つまり原体験としてある映画をずらーっと並べるのか、それとも批評的に配置するのか、さらに訳の分からない見方でまとめるのか、こうやって並べることで発揮された語り方の差異は非常に勉強となった。
例えば原体験としての語りでは『エイリアン』、『E.T』、『2001年宇宙の旅』、『ブレードランナー』などお馴染みの作品が列挙される中、少し意外だったのは西尾維新の「物語シリーズ」などを監督した新房昭之が「(ダリオ・アルジェント『サスペリア』を見た時に)僕のやりたいことは全部ここにあるとみたいな感じでしたね」と発言していること。そう言われてアニメの場面場面を思い出してみれば、確かにあの音や色使い…なるほど。
普段から言葉で話す機会が多いのか作品をより批評的に見ているクリエイターとして新作『この世界の片隅で』が控えている片渕須直や脚本家・會川昇などがいたが、中でも村井さだゆきは「虚構と現実の狭間を見る5本+α」」と題してテリーギリアム『バロン』、ピーター・ウィアー『ピクニックatハンギングロック』、ジョージ・ロイ・ヒル『スローターハウス5』などの映画を挙げており自身が脚本を務めた今敏監督の『PERFECT BLUE』に繋がる意見として貴重な資料。
各インタビューの前には略歴を紹介したコンパクトな解説もあり、語られた映画が映画史的にどのような流れに位置するのかを補完するコラムもある。(例えば大地丙太郎のあとにさりげなく春日太一の時代劇論考が挟み込まれていたり)アニメクリエイターの名前をあまり知らない人や映画に詳しくない人にこそ読んでほしいという編集部の情熱が伝わってくる良質のMOOK本だった。
【本書に登場するアニメクリエイター20人】
新房昭之、原恵一、梅津泰臣、水島精二、湯浅政明、渡辺信一郎、今石洋之、大地丙太郎、岸誠二×上江洲誠、森田繁、中村健治、村井さだゆき、長濱博史、平尾隆之、倉田英之、吉松孝博、片渕須直、會川昇、大畑晃一。
↓もっとアニメイターの話を聞きたくなった人はこちらも是非、分厚いですが小黒祐一郎さんの豊富な知識による質問が的確なのでもりもり読めます。
飛鳥新社
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