トレーダー分岐点

新刊本や新作映画、アニメの感想などを書き続けるサイト|トレーダー分岐点

*

悪を信じさせておくれよ、悪よ『スーサイド・スクワッド』の感想

      2016/09/15

ここのところ映画部門においてはずっとマーベルに距離を広げられているDCの極大ヒット作『スーサイド・スクワッド』をジャパンプレミアで鑑賞。

ああ、これはちょっと暗黒面に堕ちそう。

『スーサイド・スクワッド』簡単あらすじ

スーパーマン亡きあとに、もしスーパーマンに匹敵するパワーをもったものが悪となったら……?

そのためにはアメリカ合衆国も何らかの準備をしておかなければならない。そこで、集められたのはどいつもこいつも一癖も二癖もある極悪犯罪者たちだった。

日本公開決定 SUICIDE SQUAD – ONE SHEET/ ポスター/ 【公式 / オフィシャル】
日本公開決定 SUICIDE SQUAD - ONE SHEET/ ポスター/ 【公式 / オフィシャル】

『スーサイド・スクワッド』感想(ネタバレしかない)

本作はアメリカで凄まじい興業収入をあげている。その理由はポップでイカれたアイコンを散りばめたデザインにあるのは間違いない。マーゴット・ロビー演じるハーレクインのキュートな雰囲気、ジャレッド・レト演じるジョーカーの高笑い、何よりも悪党軍団という設定が最高に燃えるので見る前からこっちのテンションは最高潮。

それがどうしてこうなった。

見る前「うひょー!!!」、中盤「えっ?」、後半「あれ、終わった…」の感情変化。

この感情の起伏、後半にかけての微妙な投げやり感、これは記憶にあるぞ?と思いだしたのがあのマーベルの意図せざる謎映画『ファンタスティック・フォー』である。『ファンタスティック・フォー』は応援したかった。なぜなら監督の不憫さが画面から存分に伝わってきて映画本編とは違うところで後半涙が止まらなかったからだ。

こっちはまったく応援したくない。

『スーサイド・スクワッド』はひどい作品であるが、そのことを誰が書いたとしても売れる。あの一瞬で心を掴まれる予告編から劇場公開まで内容ではなく宣伝が勝った。広告がとにかく巧みだった。

アメリカで評判の悪さを聞いたとき自分はそれがポップなアイコンを散りばめ、中身スカスカのミュージックビデオみたいな感じになってしまったから微妙なんだろうと思い込んでいた。そもそもチラシを見てもあらすじがよくわからないあたりも勘違いを助長させていた。

まさか単純に話が下手糞だったという事実には恐れ入った。ポップでキュートな演出は途中で力尽き、一番重要な「悪党軍団の敵は誰か?」も、悪党の手綱をしっかり握っていませんでした!が答えとなる壮大な馬鹿さぶり。特にラストシーンにいたる台詞の数々、ラスボスの謎ダンス、倒し方などもとにかくお寒い。見終わった後の帰り道に悲しくなってしまった。

悪党たちが悪党を倒すイカれて痛快な注目作?

いやいや、いやいやいや、たとえば今年日本で公開された『ヘイトフル・エイト』における「うわっ悪!!」という登場人物たちの「俺たちは悪だけどこいつは許せねえよなあ」という悪の矜持がここにはない。悪じゃなくてただ生きづらい人たちなスーサイド軍団の怒涛の愚痴「悪党もつらいよ」が露呈していく展開には、こっちはそんなのが見たいんだじゃないんだ!!!!と心の中で叫んだ。

なんで悪党がずっと過去にとらわれてるんだよ。お前が選んだ道なんだろ!!もっと胸を張れよ悪党!!とライトノベルの台詞みたいなことを思ってしまう『スーサイド・スクワッド』は記録には残るけど記憶には残らない映画になってしまった。

それがとても残念で悲しい。

 - 映画評

スポンサーリンク

スポンサーリンク

  関連記事

恥ずかしがり屋がマサラシステムでインド映画「スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1」を見てきた

      5月16日金曜夜、渋谷シネマライズで「スチューデント・オブ・ザ・イヤ …

海よりもまだ深く 団地
団地で輝く阿部寛の駄目男ぶり。映画『海よりもまだ深く』(監督:是枝裕和)感想

心が痛い、でも笑える。でも心が痛い。でも笑える、と是枝裕和監督の最新作『海よりも …

『スター・ウォーズEP7フォースの覚醒』新作から見始めても、大丈夫だ問題ない。

(序盤少しだけネタバレ) スターウォーズの新作『フォースの覚醒』に関して過去作を …

no image
『劇場版アンパンマン ゴミラの星』はシリーズトップクラスの感動作

相も変わらずの体調不良が続いて、真剣に画面に集中すると熱が上がってしまうので「も …

~愛するものたちを詩人が殺す~映画『キル・ユア・ダーリン』評

  映画『キル・ユア・ダーリン』 後にビートジェネレーションと呼ばれる …

新宿で良作映画中毒「カリコレ2015」が今年も始まる

今年も新宿シネマカリテで「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2015 …

ただ青き終わりに向かって、映画「ブルーリベンジ」(ネタバレあり)

 「復讐は意味がない」という当たり前のことを見終わって久しぶりに考えた。この映画 …

たとえホラー映画が苦手なあなたでも「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズは見なければいけない理由

早速だけれど自分は怖いものが好きで苦手だ。 だからみんなで集まったときにしか見な …

アレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』、ただ言葉を垂れ流し

だらだらと書く。ああ、つらい、疲労度高し。だいぶ前に新文芸坐のアレクセイ・ゲルマ …

no image
見ていてビビるほどの百合百合映画『劇場版アンパンマン ロールとローラ うきぐも城のひみつ』感想

野外でミミ先生たちが映画上映をしていたら、そのことがなんだか気に食わないバイキン …